からっぽを満たせ

忘却、喪失①

付き合ってからの風間さんは今まで以上に強引で今まで以上に甘やかしてきた。
「カナ！これから出来るだけ毎日俺の家にきてよ。毎日会いたいし、俺の家で甘やかしたい！」
そう言う風間さんに僕も風間さんと一緒にいたくて大人しく従った。
「嬉しすぎる！帰ってきたらカナがいつも居てくれるなんて！はぁぁ～」
帰ってくるといつも風間さんはそういうことを言って5分は僕を抱きしめては離さない。僕も風間さんの温もりが嬉しくてそっと抱きしめ返す。そうすると風間さんは決まって抱きしめながら頭を撫でてくれる。それがとても幸せで、胸がじんわりと温かくなる。
「ね、カナ、こっち向いて」
そっと風間さんを見つめると、風間さんの顔が近づいてきてキスをされる。
最初は触れるだけのキスだったが、数回重ねるとそのキスは変化した。
「カナ、口開けて」
僕はそっと唇から力を抜くとその隙間から風間さんの舌が入ってくる。僕の口内を艶かしげに動く風間さんの舌。意識すればするほど腰から力が抜けていく。頭がふわふわとして何も考えられないほど気持ちいい。全身の力が抜けて瞼の力も抜け、目が閉じていく。
しばらくその気持ちよさに身を委ねているとゆっくりとキスが終わる。
「カナかわいい、大好き」
終わると必ず風間さんは僕を抱きしめる。
「僕も……好きです」
僕はそう言って弱い力で風間さんの背中に手を回すのが精一杯だった。