からっぽを満たせ

挑戦③

早速風間さんとの食事の買い出しに行くことになった。風間さんはすぐ近くのスーパーはいくつか知っていたので、その中でも一番行きやすいところに行くことにした。
風間さんはお洒落な名前で使い方に悩むような食材を選んだり、花の咲きかけたブロッコリーなどの少し新鮮さに欠けるとされるものに興味を示した。僕はやんわりと遠回しにお断りをしつつ選んでカゴに入れた。
「柳くんはいつでもお嫁に行けるね」
風間さんはずっとにこにこと僕の様子を見ていた。
「柳くんがいれば腐らないだろうし、なんかスイーツとか買ってかない？俺チョコとか好きだけどこれも結構管理不行き届きになりがちだから買ったらさっさと食べるようにしてたんだよね」
風間さんは楽しそうに次々カゴに入れていく。カゴの中は今後の食事に必要そうなものや絶対いらなさそうなものでいっぱいになった。
僕は材料費なども払うつもりだったので、レジに着くと財布を出そうとしたのだがやんわりと風間さんに止められた。
「ここは手間賃として受け取ってよ、デリバリーより全然お金かかってないんだからさ」
風間さんの家にお世話になるようになって生活は向上したのにお金はむしろかからなくなったくらいなので、カゴいっぱいでも払う気でいた。僕としてはせめて自分の分だけでも出さないと手間賃云々ではチャラにできない気がして迷ったが、風間さんはこういう時大体何を言っても僕に払わせてはくれない。
「ありがとうございます」
それだけ言って大人しく財布をしまうと、風間さんは笑顔を向けてくれた。