からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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水族館⑩

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「いいよ、行こうか」
その言葉を聞き逃さず風間さんがそう言ってきた。
その瞬間僕は昔の記憶の中から戻ってきた。焦って風間さんを見上げると、風間さんは心底満足そうな笑顔でこちらを見ていた。
「柳くん、やりたいことは言っていいんだよ」
驚いて見ている間に風間さんは僕を安心させるように背中に手を当てて優しい声で語りかけてくる。
「君の過ごす世界のどこでも、やりたいことを言っていい。思ったことを言っていい。何かあったら俺が必ず助けてあげる。ダメな時は失敗して身につければいいんだから」
風間さんの声と表情は本当に優しくて、僕の背中を支える手はじわじわと温かく胸が痛くなった。
「俺が必ず、ずっと守ってあげるから」
風間さんは父と同じことを言った。父も昔守ってくれると言っていたが、守ってくれたおかげでいなくなってしまった。そんなことは2度と嫌だ。
それでも、風間さんのこの言葉を信じていたい僕がいる。
僕は守られたいわけではない。
でも風間さんがそう言ったのは、僕が恐れているからだ。
僕が叔父に囚われ続けているからだ。
だから風間さんを信じて、その檻から抜け出せということだ。
それがわかるようになったことが嬉しい。
父のこと、母のことを思い出しても辛いばかりではなくなった。
僕はきっと変わらなければならない。変わりたいと思っている。
僕は変わることを決意した。
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