からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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水族館①

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水族館デートの前日。今日はバイトが終わってから風間さんの家に行く。バイトのない日はほぼ全て風間さんの家にお邪魔するようになった僕だが、バイトのある日に行くのは迎えにきてくれる日以外はなかった。
「待たせるのもアレだしさ、今回は一緒に俺の家から水族館に行こうよ!まぁその待ち合わせってのも楽しいんだけど」
と、風間さんが言ったので終わったらお邪魔することを約束して今日に至る。
僕は今日も風間さんに会えることが楽しみだった。バイトをしながらもついそのことを考えてしまい、少し気分が浮ついていた。
最近の僕はそれがうまく隠せない。
「ちょっと機嫌よさそうよね」
「なんか楽しそうな雰囲気がするな!」
「ほんのわずかだけどね、一緒に働いてるからわかるくらいの」
3人にそう言われて僕が風間さんと約束があることを伝えると3人とも微笑みながら
「よかったね」
と言ってくれた。僕はちょっと恥ずかしくて頬が僅かに温かくなるのを感じた。
そんな話をしているとまた新しいお客様が入ってきて僕はいそいそとお出迎えに上がる。
「いらっしゃいませ」と声をかけてお客様の顔を見ると、そこには満面の笑みの風間さんが立っていた。
「あ、風間さん……」
驚きのあまり呼びかけて固まると、その反応を見ながら風間さんがニコニコと頭を撫でてくる。
「やぁ柳くんお疲れ様!久々に見たけど制服似合ってる」
僕が着ているお店の制服についてコメントを残した風間さんは慣れた足取りでいつもの席に着いた。
「いらっしゃい幸久。噂をすればだね」
宗田さんが奥からひょっこり顔を出す。
「噂?何?島崎さんに悪口でも言われてた?情けない男だとか」
「失礼ね!私はそんなこと陰で言うくらいなら面と向かって言うわ」
笑いながら言う風間さんに島崎さんは怒ったように言う。それが怒ったふりだと言うことは僕にもわかった。
「面と向かって言われるのも怖いなぁ」
風間さんはそう言いながら笑ってジャケットを脱ぎ始める。外は暑くなってきて日中汗をかいただろうに今日も風間さんのスーツもくたびれてはいなかった。
「今日は要が機嫌よかったんで理由を聞いてたんすよ」
「そしたら幸久と約束があるって言ってたからさ」
「あぁ、そういうこと。柳くんかわいい、楽しみにしてくれてるの?」
風間さんにそう問われて僕は顔が熱くなった。
「照れてる~かわいい~」
風間さんは両手で僕の頭をわしゃわしゃ撫でてきて、僕は髪型が崩れてしまう心配を少ししながらも抗えずにひたすら頬の火照りを覚まそうと俯きながらされるがままでいた。
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