からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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バイトのない日⑨

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映画はとても面白くてラストまで目が離せなかった。僕はまた途中から何も聞こえなくなっていて、今回は風間さんもそれを見越して最初から声をかけてこなかった。
見終わったところで風間さんがお風呂がもう少しで沸くことを教えてくれて、いつの間にか風間さんが立ってお風呂場に行ってたことすら気が付かなかったことを知った。
「この映画俺も好きなんだけど、まさか柳くんがそこまで気に入るとは……俺嬉しい」
風間さんが笑いながら話すのを僕はまじまじと見つめてしまった。きっと風間さんでなければ不快に思ったり、少なくとも何か聞かれただろう。しかし風間さんは何も言わず、僕が見つめていたことに気づいて目を逸らすまで爽やかな笑顔のままだった。
「お。お風呂鳴ったね、入っておいで」
目を逸らして少しするとお風呂のブザーが鳴った。風間さんは僕に入るように促しながら、僕用に整えたらしいパジャマやバスタオル、下着を渡してくる。どれもいい品ばかりだとすぐにわかった。ちょっと払わせてばかりな気がして申し訳ない気もするのだが、風間さんに「俺と過ごしている間、俺があらかじめ払ってって言うもの以外お金は気にしないこと」と約束させられているので僕は聞けないし、素直に甘える方が助かることは事実なのでそうする。いつかこの恩を返せる日が来ればいい。心からそう思った。
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