からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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バイトのない日⑥

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「にしても座って勉強してるとはなかなかお行儀がいいね、俺なんかソファーあったら横になってるし資料なんか絶対寝転んでみてるよ」
風間さんは僕の隣に座って背中までしっかり深く腰掛けると冷蔵庫から持ってきたらしいペットボトルの麦茶を飲む。僕の手にもそれは渡されていて、つられるように飲む。冷たさが少し暑くなってきた気温に温められた体を冷ます。
「柳くん勉強は終わり?」
「そうですね…たぶん覚えました」
「じゃあ映画でも見る?エトホリ契約してるから、流し見で」
「僕見たことないものしかないですが…」
僕が叔父の家に行ってから映画を見ることはなかったし、叔父の家に行く前の記憶は動物園で思い出したことくらいで、映画館に行ったことがあるのかすら覚えていない。覚えてはいないが、叔父の家にも映画に関するものはない。僕が育った家から持ってきたものは全て叔父の家にあるはずだが、見たことがないということはおそらく映画に触れる機会はあまりなかったのではないかと予想できる。
「大丈夫だよ、適当に見るだけだし。見たいものあったらもちろんそれで」
風間さんはにこやかにエトフリの画面を出して僕にリモコンを渡す。僕は風間さんに教えてもらいながらリモコンを操作すると、たくさんの映画があって僕には決めきれなかった。
「じゃあとりあえずこれにしよ、俺の趣味だけど」
風間さんは2人のスーツ姿の人物が表示されている映画を選択して再生する。
どうやらそのスーツの2人は刑事のようで15年前の未解決事件を追いかける、という話のようだった。
見ているうちに僕はどんどん話の中にのめり込んでいって、最初は風間さんが話しかけてくれる声が聞こえていたが次第に薄れていき、とうとう映画の音しか聞こえなくなった。
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