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からっぽの部屋③
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部屋の中にはデスクライトと毛布だけがきちんと畳まれて置いてある。あとはフローリングの茶色が見えるだけだ。
「なるほどね、布団もソファーも冷蔵庫すらもない…食料が全く見当たらないし…このあと晩御飯、ちゃんと食べる気でいた?」
「っ……」
俯いていた顔をあげ、風間さんを見ると真剣そうで少し怖さを感じる表情をしていた。僕はもちろん食べる気はなかったが、その目を見てそうは言えなかった。
「食べます」
「何を?」
すかさず聞いてくる。
「ご飯です」
「白米のこと?米一粒すら見当たらないけど」
「……食べる時に買いに行きます」
嘘ではない。今日は確かに食べる気はなかったが、食べる時は食べる時に買いに行くのだ。
「ふぅーん…でも今日は食べる気はなかった感じだね」
あんな下手くそな隠し方だ。一瞬間を置いてしまったのもありバレると思っていた。いつもならもっと上手く誤魔化せるのにどうしてか風間さん相手には難しい。
居た堪れなくて俯くと、その頭の上にいつもの風間さんの手がのせられた。
「いいよ、うちにおいでよ。元々誘うつもりだったし。柳くんがずっと連れ回されるのは嫌かと思って迷ってたけど、これを見たらほっとけない。来なさい」
いつもの風間さんと違って、おいで、ではなく来なさいだったことが、僕は少しだけ怖いと思った。それでも風間さんの手はいつも通りで、優しく頭を撫でてくれていた。
「なるほどね、布団もソファーも冷蔵庫すらもない…食料が全く見当たらないし…このあと晩御飯、ちゃんと食べる気でいた?」
「っ……」
俯いていた顔をあげ、風間さんを見ると真剣そうで少し怖さを感じる表情をしていた。僕はもちろん食べる気はなかったが、その目を見てそうは言えなかった。
「食べます」
「何を?」
すかさず聞いてくる。
「ご飯です」
「白米のこと?米一粒すら見当たらないけど」
「……食べる時に買いに行きます」
嘘ではない。今日は確かに食べる気はなかったが、食べる時は食べる時に買いに行くのだ。
「ふぅーん…でも今日は食べる気はなかった感じだね」
あんな下手くそな隠し方だ。一瞬間を置いてしまったのもありバレると思っていた。いつもならもっと上手く誤魔化せるのにどうしてか風間さん相手には難しい。
居た堪れなくて俯くと、その頭の上にいつもの風間さんの手がのせられた。
「いいよ、うちにおいでよ。元々誘うつもりだったし。柳くんがずっと連れ回されるのは嫌かと思って迷ってたけど、これを見たらほっとけない。来なさい」
いつもの風間さんと違って、おいで、ではなく来なさいだったことが、僕は少しだけ怖いと思った。それでも風間さんの手はいつも通りで、優しく頭を撫でてくれていた。
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