からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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からっぽの部屋①

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名残惜しい感じを残したまま、動物園を出る。今日は風間さんが家まで送ってくれた。
あの一瞬渡してきたクッションとお菓子の入った袋は、あの後風間さんが結局持ってくれていた。クッションとお菓子しか入っていないのだから大して重たくないはずなのに、
「重たいから玄関の中まで持っていくよ」
と風間さんがいうので、僕も断る理由がなく、そのまま流されるように頷き一緒に玄関の前まできた。
家の前まで来た人には、お茶くらい入れるべきか、と考えながら鍵をあける。
しかし机も椅子もない家でおもてなしとは、と思うと同時に、それは人の住む部屋として少し異常なのではないかということに思いあたり、見られないようにしようと扉を開けるのをやめようと思ったが、それはすでに遅く、もう扉は開いていた。
「ここにおいていい?」
「はい」
玄関横のスペースに風間さんがクッションの袋置くのを見ながら、お茶を出すか迷っていた。
出せば部屋を見られる。何もなさすぎる部屋だ。普通ではないだろう。叔父のいう外聞が悪いにあたるのではないか、外聞が悪いにあたることがバレるのではないか。それはまずい、そもそもキッチンだけでおかしいのだから早く風間さんが気づく前に帰ってもらわないといけない。慌ててお礼を言って帰らせようとしたがそれも遅かった。
「ねぇ、家具なさすぎない?」
僕は頭から体の芯が冷えていくのを感じた。
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