からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

文字の大きさ
上 下
27 / 154

温度⑩

しおりを挟む
風間さんとご飯を食べた後は、折り返して出口に向かった。出口に向かう時も、息とは別の道が用意されていて、そこには小動物と触れ合えるコーナーがあった。
僕と風間さんはウサギとのふれあいコーナーに入り、風間さんが膝の上にウサギを乗せて爽やかに微笑んで撫でている姿を周りの女性はちらちらと見ているようだった。僕はウサギに群がられて困惑していると、風間さんはいつもの爽やかな笑顔ではなく、大笑いをして、お腹を抱えるようにしながら、その合間にパシャパシャとスマホで写真を撮り始めた。僕はウサギに遊ばれてるようでしかなかったことだろう。
ウサギはとても温かい体をしていて、乗っかられると温度でわかる。
「わ、落ちちゃう…」
あちこちに登られて困惑して体を丸めた拍子に背中に乗っかられて、真っ直ぐに座れなくなる。落ちてしまいそうだ。
「大丈夫?」
笑いながら背中のウサギを抱えてくれた風間さんのおかげで体を起こす。
「ありがとうございます」
「はは、やっぱり可愛い動物は可愛い子が好きなのかな」
平然とそんなセリフを言う風間さんに少し頬が熱くなった気がした。
「いい写真が撮れたよ、まぁほぼ真顔だけど振る舞いがね、困ってそうで可愛かった」
風間さんは爽やかないつもの笑顔にちょっと人の悪いことを言う。それでも全く嫌な気はしなくて、まじまじとそのまま風間さんを見つめたが、風間さんは変わらずにこやかに写真を撮ったりウサギを触ったり、楽しそうにしていた。
僕も群れてくるウサギの一匹を膝に乗せると今度は背筋をしゃんとして撫でる。それでもウサギはこぞって膝に乗ってこようと脇腹や背中の低いところにたくさん群がっていて、風間さんにまた写真を撮られることになった。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

囚われ王子の幸福な再婚

BL / 連載中 24h.ポイント:1,050pt お気に入り:156

宮廷画家は悪役令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:379

ライオンガール

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:20

フリー台本置き場(声劇、朗読)

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:360

処理中です...