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温度⑤
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日曜日、動物園の入り口前に集合と言われて、待ち合わせ時間30分前から風間さんを待った。
さすがに30分前から待っていることはないと思ったが、案の定まだ風間さんはきていなかった。
動物園入り口の植え込み横にあるベンチに腰をかけ、ひたすら風間さんを待つ。待つことは想定していたので、講義の資料を持ってきた。ただホチキスでまとめただけのピラピラとあちこちに暴れる紙の束を眺めながら、チラチラと入り口の様子を窺いながら風間さんを待つ。
入り口に入っていくのは日曜日ということもあってか小さな子供を連れた家族連れか仲睦まじいカップルばかりだった。
とりわけ子供の楽しそうな声が耳に入ってくる。どこか聞き覚えのあるような会話がどうしても聞きたくなくて、サッと資料に目を落とし黙々と読む。
不意に資料に影が落ち、上を向くと風間さんがニッコリ微笑みながら立っていた。いつの間にか風間さんを探しながら待つことを忘れていた。
「すみませ…」
「お待たせ、早いね、まだ10分前だよ」
風間さんがまるで謝るのを遮るように話しかけてくる。
「待つときも資料を忘れないなんて真面目だね、偉い偉い」
慌てて立った僕の頭をポンポンと撫でてくる。僕はそれを気にする余裕もなかった。気づかずに資料を読んでいて、ましてやその資料を片付けるまで待ってもらうことはやってはいけないことだと思った。
鞄を慌てて開いて、資料を無造作に入れようとすると軽く腕を掴まれた。
「大丈夫、ゆっくりしまっていいよ、せっかく一生懸命読んでた資料なんだからさ」
風間さんの優しい声に誘われて言われた通りゆっくりと鞄の中のクリアファイルにちゃんと戻す。僕がしまい終わって鞄を閉じると、やっと風間さんは「行こうか」と歩き始めた。
さすがに30分前から待っていることはないと思ったが、案の定まだ風間さんはきていなかった。
動物園入り口の植え込み横にあるベンチに腰をかけ、ひたすら風間さんを待つ。待つことは想定していたので、講義の資料を持ってきた。ただホチキスでまとめただけのピラピラとあちこちに暴れる紙の束を眺めながら、チラチラと入り口の様子を窺いながら風間さんを待つ。
入り口に入っていくのは日曜日ということもあってか小さな子供を連れた家族連れか仲睦まじいカップルばかりだった。
とりわけ子供の楽しそうな声が耳に入ってくる。どこか聞き覚えのあるような会話がどうしても聞きたくなくて、サッと資料に目を落とし黙々と読む。
不意に資料に影が落ち、上を向くと風間さんがニッコリ微笑みながら立っていた。いつの間にか風間さんを探しながら待つことを忘れていた。
「すみませ…」
「お待たせ、早いね、まだ10分前だよ」
風間さんがまるで謝るのを遮るように話しかけてくる。
「待つときも資料を忘れないなんて真面目だね、偉い偉い」
慌てて立った僕の頭をポンポンと撫でてくる。僕はそれを気にする余裕もなかった。気づかずに資料を読んでいて、ましてやその資料を片付けるまで待ってもらうことはやってはいけないことだと思った。
鞄を慌てて開いて、資料を無造作に入れようとすると軽く腕を掴まれた。
「大丈夫、ゆっくりしまっていいよ、せっかく一生懸命読んでた資料なんだからさ」
風間さんの優しい声に誘われて言われた通りゆっくりと鞄の中のクリアファイルにちゃんと戻す。僕がしまい終わって鞄を閉じると、やっと風間さんは「行こうか」と歩き始めた。
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