からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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思い出してはいけない③

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side幸久

ベッドに入って眠る柳くんを見ながら、ほっと安心しながら自分のベッドの上に座る。部屋は柳くんの睡眠のために照明を落としてしまったから暗いが、目が慣れたのでおよそのものは見える。

作戦はかなり成功している。お茶はまぁ、うっかり買うのを忘れて恥ずかしいところを見せてしまった。浴室のシャンプーなども遠慮することはわかっていたはずなのに事前に使うよう促す言葉を忘れたのは失敗だった。しかし、こうやってうまく泊まらせることができた。目標は達成している。

昨日蓮と話をした後、さまざま手配をして、自分と身長差がありそうな柳くんがピッタリ着れるようなパジャマや服を用意し、柳くんが気を使ってしまわないように自分のベッドの横におけるシングルベッドを一式買っておいた。最初柳くんは床で寝ようとしていたのでこれも正解だった。
警戒して、丸まって身を硬くした体制で眠っている柳くんをみて、少し悲しくなる。まるで敵から身を守るダンゴムシの類のように小さく身を守る姿が痛々しく思えた。すぐに警戒心が解けるとは思ってはいないが、寝ている間まで警戒して眠るなんてやはり少し可哀想に思う。

しかし。
「ちょっと小さめだからな…俺の服じゃやっぱり手足があまりそうだ」
柳くんに渡したパジャマは自分のよりひとまわり小さいものだったが、丸まっている柳くんの様子からしてキツそうなこともなく、手足も余ったり短いことはなさそうだ。
「見立て完璧」
口角を片方だけあげてニヤリと笑う。
きっと眠りが浅かろう柳くんは身じろぎをして、この呟きの数々に余計眠りが阻害されているようだった。睡眠を阻害してしまうのは不本意のため、あと一言呟いて寝ることにする。
「俺が満たしてあげるよ、柳くん」
最後に名残惜しげに呟いたのはそうなることを祈願する思いと、聞こえてしまって、ないと思うが嬉しく思って欲しいなんていう下心なのかもしれない。

話をしてますます気に入ってしまったのだ。
からっぽのままにしてたまるか。
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