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第259話
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『お前のせいだ』
脳内に響く、怒りが含まれた声。
この声、以前にも聞いたことのある声だ。
その時も、同じように夢の中だった。
自分と瓜二つの顔を持った、あの史上最強の仙人。
黒神の声が、ずっと自分を責めてくる。
募りに募った恨みを、永遠に向けられている。
『何故、まだ生きているんだ』
目を閉じていても、声はずっと聞こえてくる。
まるで逃がさないと、呪いをかけるかのように。
彼の記憶は全く無いのに、この永遠に聞こえてくる声を聞けば、彼とはあまり良くない関係性だったのは自ずと分かった。
誰の耳にも届かない夢の中で、精神的に追い詰めようと、果てのない恨みを向けられ続けた。
そして声は、畳み掛けてくる……。
『お前が死ねば良かった』
『何故、お前が生き残った』
『何も守れなかった、弱者め』
『全部、壊れた。お前のせいで』
『返せ、全部返せ。奪ったもの全部だ』
『罪を償え、自害しろ』
『誰も、お前が生き残ることなど望んでいない』
『早く死んでしまえばいい』
『地獄に落ちろ』
『地獄に落ちろ』『地獄に落ちろ』
『地獄に落ちろ』『地獄に落ちろ』『地獄に落ちろ』
『地獄にっ……落ちろ!!!!!!!!!!!!』
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「っはぁっ……!」
永遠に続く罵倒の声。
その声から逃れるように、魁蓮は目を覚ました。
首には汗が伝い、胸騒ぎがする。
まさか、黒神の夢を連続で見ることになるとは、嫌な感じだ。
「お目覚めですか」
「っ……」
魁蓮が息を整えていると、楊の声が聞こえてきた。
魁蓮がその声に顔を上げると、楊は人間の姿で、洞窟の入口に座っていた。
いつの間にか外は夜になっていた、恐らく魁蓮が目覚めるまで、楊が見張りをしてくれていたのだろう。
楊は魁蓮と目が合うと、どこか切なそうに目を細めた。
「……顔色が悪いです。何か、悪夢でも見ましたか?」
「……阿呆か。暗いせいで、そう見えるだけだろう」
「…………」
魁蓮は汗を拭うと、はぁっと深いため息を吐いた。
あの夢に関しては、楊とて共有されないらしい。
それは幸いだった。
しかし、どうしてこうも連続で見ることになったのだろう。
まさか本当に、黒神に呪いにでもかけられているのではないだろうか。
そう考えてしまうほど、あの夢は繰り返されていた。
その時、ふと魁蓮は思い出す。
「……楊、巴を見なかったか」
魁蓮は眠りにつく前、巴と一緒に居たことを思い出す。
思えば、巴と話していた途中から記憶が無い。
寝落ち……をしてしまうほど寝不足だったわけでも無いはずだが、本当に疲れが溜まっていたのだろうか。
魁蓮が楊に尋ねると、楊は立ち上がりながら答える。
「もうとっくの前に、どこかへ行きましたよ。意識を失った主君を巴殿が連れてきて、僕に預けてきたんです」
「……そうか」
魁蓮が目を伏せると、楊は伸びをした。
「主君も起きたことですし、もうこの姿のままで居続ける必要は無いですね」
基本、楊は鷲の姿でいる。
だが魁蓮無しで戦う場合は、人間の姿の方が戦いやすいため、時折こうして人間の姿に変身することがある。
今の今まで人間の姿だったのも、万が一に備えてだった。
「では主君。僕はっ」
その時……楊とすれ違うように、魁蓮は洞窟から抜け出した。
楊はそんな魁蓮に、「えっ?」と驚く。
「しゅ、主君!何処へ!?」
「夜風に当たってくる。お前はここにいろ」
「ま、また留守番ですか……」
「黙れ」
魁蓮は冷たく制すると、楊に振り返ることなく洞窟を離れた。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
今日の夜風は、いつもより冷たい。
現世は黄泉と違って、季節通りに環境も変わる。
黄泉ではあまり感じない寒さに、魁蓮は眉間に皺を寄せながら、森の中を歩いていた。
花蓮国の森は、至る所に広がっている。
同じ森でも、そこに巣食う妖魔の数が違えば、実る果物もバラバラだ。
流石は自然が美しい、花蓮国と言うべきか。
だから、魁蓮は森の中を歩くのは嫌いでは無い。
もし飽きても、別の森に移動すればいいのだから。
「この森も、もう何も無いか」
今いる森は、思いのほか長居していた。
果物も沢山あったし、何より妖魔がたくさんいた。
情報集めに滞りがあったら、魁蓮は暇つぶしに妖魔を殺していた。
そのため、退屈というものは一切無かった。
だがそろそろ、別の場所に移るのもいいくらいだ。
魁蓮の求めている情報や過去に関するものは、ここには無かったから。
「早々に切り上げ、黄泉に戻る手もっ」
その時……。
「ギャアアアアア!!!!!!!」
少し離れたところから聞こえた悲鳴。
同時に感じる、複数の妖魔の気配。
魁蓮はその空気に、ギロッと視線を巡らせた。
(……気晴らしには、丁度いい)
つい先程、後味の悪い夢を見たばかりだ。
気分は、あまり良くないと言っても過言では無い。
魁蓮は暇つぶしと少しの気分転換のため、今から視界に入った妖魔を全て殺すことにした。
そして偶然にも、妖魔が近くにいる。
飽きるまで殺せば、それなりに気分転換にはなるだろう……と、魁蓮が足を進めると、
「あんなの勝てっこない!!早く逃げろ!!」
「……?」
悲鳴のした方向から、数体の妖魔が泣きながら逃げている。
その姿は、人間の血肉を求める妖魔の姿からは考えられないほど、情けないものだった。
魁蓮だけは、よく目にする光景だが。
(実に無様だ……だが……)
魁蓮はその妖魔たちを眺めていると、ほんの少し妖力を込めた。
直後、逃げる妖魔たちの足元に、黒い影が現れて……大量の剣山が姿を現した。
「「「ギャアアアアア!!!」」」
影から出てきた特殊な剣山は、妖魔たちの体を激しく貫通した。
その剣山に、妖魔たちは青ざめる。
この能力が誰の仕業なのか、分かっているからだ。
すると魁蓮は、剣山に捕まっている妖魔たちに近づく。
「貴様ら、我の問いに1度だけ答えることを許そう。
何故、そのような無様な姿を晒して逃げていた?」
冷たく、重圧を感じる魁蓮の声。
たった今、恐怖を感じていたものから逃げていたというのに、それ以上に恐ろしいものが待ち構えているなんて。
妖魔たちは魁蓮の姿に、こっちに逃げなければよかったと心底後悔していた。
しかし、魁蓮からすれば関係ないこと。
魁蓮が妖魔たちの返答を静かに待っていると、一体の妖魔が震えながら口を開く。
「む、向こうに……化け物がっ……。
仙人でも、妖魔でもないっ……本物の化け物がっ!」
「……あ?」
その直後のこと……。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
先程の悲鳴に続いて、またも別の悲鳴が。
魁蓮はその悲鳴に視線だけ向けると、目を細めた。
「ふん……化け物、か……まあ良い。
貴様らは用済みだ……散れ」
魁蓮がそう呟くと、捕まっていた妖魔たちの体は、内側からバンッと激しく弾け飛んでしまった。
辺りに妖魔たちの肉片が飛び散り、その場には血溜まりが広がる。
魁蓮はその光景になんの感想も抱かないまま、悲鳴がする方向へと足を進めた。
「逃げろっ、逃げろ!!!」
「ダメだ!勝てねぇ!」
足を進める度、情けない妖魔の声が耳を刺す。
だが逆に言えば、妖魔が魁蓮以外に対して、こんなにも怯えるのは初めてのことだ。
故に、魁蓮にとっては興味の1つでもある。
そうして静かに足を進めていると…………
「っ……………………」
見えてきたのは……
大量の妖魔の死体と……その中心に立つ、1人の少年。
血だらけの刀を握りしめ、呻き声を上げている妖魔の顔を踏みつけている。
「だ、誰かっ」
妖魔が掠れた声で助けを求めた直後。
少年は器用に刀を回すと、妖魔の首に刀をグサッと突き刺した。
妖魔はそれ以上話さなくなり、バタッと全身から力が抜けた。
辺りが静寂に包まれた後、少年は妖魔に突き刺した刀を抜き取り、べっとりとついた血を振り払う。
(ほう……化け物、か……)
先程の妖魔たちが言っていた化け物は、恐らくこの少年だろう。
仙人でも妖魔でもない、と言ってはいたが、見た目だけ見れば人間のように見えた。
だが辺りに散らばる妖魔の死体を見る限り、彼が只者では無いことは、容易に考えられる。
現に少年が着ているのは、戦闘服のようなものだ。
魁蓮が黙って少年を見つめていると、少年は少し綺麗になった刀を確認して、くるっと後ろに振り返る。
「っ……!!!!!!!」
少年が振り返った瞬間……少年は、自分を見つめて立ち尽くす魁蓮の姿に、ピタッと動きが止まった。
魁蓮は振り返った少年の姿に、目を細めた。
(……なんだ、あれは……鬼の、面?)
少年は、不思議な黒い鬼の面をつけていた。
鬼の面と言えば、以前まで忌蛇が身につけていたのだが、あれはただのお面だった。
しかし少年のお面は、何やら妙な力が込められているお面だったのだ。
(妖魔には、見えぬが……仙人、か……?)
魁蓮が腕を組んで見つめていた直後……
「っ……………………」
少年は魁蓮に背中を向け、バッと素早くかけ出す。
もしこの場にいる者が、他の者であれば逃げられただろう。
だが生憎、そこにいるのは……鬼の王だ。
「待て」
魁蓮が低く呟くと同時に、少年の前に現れたのは、いつの間にか地面に広がっていた影と、そこから顔を出した複数の動く鎖。
鎖は壁のように連なると、少年の行く手を阻む。
少年もこれは逃げられないと察したのか、グッと力を入れて、その場に踏みとどまった。
「おい餓鬼、何故逃げる」
魁蓮はそう言いながら、少年に近づいた。
背後から聞こえてくる足音、少年はその足音に、横目で振り返った。
その間、少年は刀を離すことなく、じっと魁蓮の様子を伺っている。
「貴様、かなり腕が立つらしいが……何者だ?」
「っ……………………」
魁蓮が尋ねるも、少年は沈黙を貫く。
どれだけ待っても、少年は口を開かなかった。
魁蓮は、少年が恐怖を感じすぎて口が回らないのだと思っていたが……どうやら、そうでは無いらしい。
(……隙を、狙っているな……)
少年が沈黙を貫く理由は分からないが、少年は一切怯えてなどいなかった。
呼吸も安定していて、体や手先も震えていない。
それどころか、鬼の王である魁蓮に未だ背中を向けている。
普通では考えられない反応だ。
だが、魁蓮もそんなに待てる男では無い。
(答えぬか……ならば、探れば良い)
そうして魁蓮が、赤い目を光らせると………………
ブワッ……!
「っ……」
魁蓮が少年を視ようとした途端……少年の体は黒い瘴気に包み込まれ、そして消えた。
直後、魁蓮の背後に気配が……。
「ほう……」
魁蓮が横目で振り返ると、先程の少年がいつの間にか背後にいて、いつ攻撃が来てもいいように刀を構えていた。
その動きは、魁蓮からすれば初めて見るものだった。
(我の考えを呼んだか……これはなかなか……)
只者では無い……どころの話では無い。
今、魁蓮の目の前にいる少年は、仙人が束になっても倒せないほどの強者かもしれない。
ただ探りを入れるだけでは、到底何も分からないだろう。
そう理解した途端、魁蓮は自分の足元に黒い影を広げると、その中からまたも複数の鎖が姿を現した。
「枷、命令だ。その餓鬼を探れ。
ただし、殺すことも傷つけることも、許さん」
魁蓮がそう言った直後……鎖たちは一斉に、少年に向かって伸びていった。
少年はグッと力を入れると、自分に立ち向かってきた鎖を、軽い身のこなしで避ける。
そしてそのまま、少年と鎖の攻防が始まった。
刀と鎖のぶつかる甲高い音が、何度も何度も響く。
魁蓮の技の一つである「枷」は、魁蓮が最も愛用する技なのだが……その技を、少年はいとも簡単に受け止める。
彼の動きから見て、どうやら余裕のようだ。
(これは驚いた……奴は、龍牙以上か……)
少年の動きを見てわかったのは、魁蓮の次に強いとされている龍牙すらも超える強者だということ。
一切無駄のない動きと、刃こぼれしにくい刀の扱い方、少年はかなりの手練だ。
試しに魁蓮は、再び瞳を光らせて少年の正体を確かめようとする。
しかし……
ブワッ!!!
少年は先程と同じように、黒い瘴気に包まれて姿を消すと、また別の場所へと瞬間移動する。
そしてすぐ、鎖との攻防が始まるのだ。
休みなどない鎖の攻撃を受けながらも、少年は鎖の攻撃を簡単に受け止め避けるどころか、少し離れた場所から見ている魁蓮の動きも把握している。
(……なかなかに、興味があるな……)
今の遠慮したような攻め方では、この攻防はきっと永遠に続くだろう。
何より、少年の本気は今のままでは見れない。
ただ攻防を続けていても、少年の本気も正体も分からず終いだ。
ならば……本気を出させればいい。
「ククッ……」
ふと、魁蓮が枷の力をほんの少し弱めると、鎖の動きが鈍くなって少年にほんの少しの余裕を持たせる。
だがその直後、魁蓮は目で追えない速度で少年へと近づいた。
そして、少年の心臓を狙うような動きを、わざと見せる。
はたから見れば、魁蓮は本気で少年を殺そうとしているように見えるはずだ。
魁蓮はそれを利用して、少年の本気を見出そうとした。
そして魁蓮が、少年の体に触れようとした……その時。
少年がつけていた、鬼の面。
その目の奥から……赤い光が見えた。
「っ…………!!!」
魁蓮がその光を見た途端、少年は常人離れな動きで、魁蓮の攻撃を避ける。
その動きは、鍛え上げた仙人や妖魔でさえ出来ない動き。
まさに、超越した力だった。
だが魁蓮が引っかかったのは、そこでは無い。
(今の光は……)
魁蓮が疑問を抱いていたのは、鬼の面の目から見えた赤い光。
その光が見えた途端、ほんの一瞬、人の目が見えたのだ。
つまり光ったのは鬼の面ではなく、その奥にある少年の瞳。
そして魁蓮は見た、その瞳が……
魁蓮と同じように、赤く光る光景を。
(何故だ……何故、我と同じ力を)
魁蓮が今の出来事に驚いていると……
「我は、貴方と戦う気は無い」
魁蓮から離れた少年が、ふと呟いた。
魁蓮がその声に振り返ると、少年は刀を鞘に入れ、じっと魁蓮を見つめている。
その時、少年の目はもう光っていなかった。
「……貴様、何者だ?今の力……どういうことだ」
魁蓮は鎖と影を消しながら、少年に向き直る。
これはもう、直接探りを入れるのが1番良いかもしれない。
そう思い魁蓮が尋ねると、少年は少しの沈黙の後、おもむろに口を開く。
「……遺伝、だ」
「遺伝?誰のだ」
「……我の…………父の、遺伝…………」
「………………………………」
そう話す少年の声は、どこか言いにくそうだった。
だが魁蓮は、何一つ納得していない。
そもそも魁蓮の瞳の力は、魁蓮しか持っていない特殊なもの。
膨大な力を消費するため、他の者では到底扱えない。
なのに、その力と似通った……いや、あれはもはや同じものだった。
そんな力が、この少年にもあるなんて。
「どうりで我の動きも、迷わず読めたのか。
ならば質問を変えよう。何故、正体を隠す」
「っ…………」
「正体を探られては困るのか?貴様のその力も」
魁蓮が質問を変えると……この質問には答えられないのか、少年は沈黙を貫いた。
どうやら、少年は自分の正体を隠しており、あの鬼の面も正体を隠す1つの手段なのだろう。
その時……
「申し訳ない、我にはやらねばならないことがある。
故に、我はここで失礼する。では……」
少年はそう言うと、黒い瘴気に包まれて姿を消した。
1人になった途端、魁蓮は腕を組んで考え込んだ。
普段なら返事も待たずに居なくなった少年を殺すところだが、今日はそういう気分でも無かった。
むしろ……
「……実に、面白い餓鬼がいたものだ……」
魁蓮は先程の少年に、興味を持っていた。
魁蓮にとって、強者は暇つぶしの1つだ。
戦いがいのある者がいればいるほど、魁蓮も喜ぶというもの。
魁蓮は少年の存在に小さく笑うと、気分転換する必要がもう無くなったため、そのまま楊の待つ洞窟へと帰っていった。
その近くでは、先程の少年が魁蓮からは見えない木の上から、魁蓮の背中を見つめていた。
『夜叉様っ、ご無事ですか……!?』
そんな少年に、彼が乗っている木がガサガサと揺れると共に、少年に声をかける。
魁蓮と戦った少年……殲魔夜叉は、グッと拳を握った。
「無事だ……あちらも手を抜いていたのでな。我が、傷つかぬようにと」
『そうでしたか……とにかく、ご無事で何よりです。
それより、何故鬼の王は夜叉様に攻撃を?あんなの、有り得ません。貴方たちは、親子なのにっ……』
木は怒ったように、そう話す。
しかし殲魔夜叉は、小さい声で答えた。
「仕方がない。父は、我の記憶を失っているのだ……まあ、失っているのは父だけでなく、母もだが。
気にするな。ただ今は、赤の他人というだけだぞ」
『ですが、夜叉様っ…………』
殲魔夜叉はそう言うと、その場に腰を下ろす。
そして、夜空に浮かぶ欠けた月を見上げた。
その度に、殲魔夜叉の胸に広がるのは……目を背けたくなるような寂しさだ。
「だが、時折考えたりはする。
普通の親子は、どんなことをするのか。子は、親の腕にいつも抱かれるのか。いつも一緒にいるのか。
我には……何一つ、分からない。親子というものが」
そう呟く彼の声は……悲しく、小さく震えていた。
しかしその声は……魁蓮に届くはずもなかった。
脳内に響く、怒りが含まれた声。
この声、以前にも聞いたことのある声だ。
その時も、同じように夢の中だった。
自分と瓜二つの顔を持った、あの史上最強の仙人。
黒神の声が、ずっと自分を責めてくる。
募りに募った恨みを、永遠に向けられている。
『何故、まだ生きているんだ』
目を閉じていても、声はずっと聞こえてくる。
まるで逃がさないと、呪いをかけるかのように。
彼の記憶は全く無いのに、この永遠に聞こえてくる声を聞けば、彼とはあまり良くない関係性だったのは自ずと分かった。
誰の耳にも届かない夢の中で、精神的に追い詰めようと、果てのない恨みを向けられ続けた。
そして声は、畳み掛けてくる……。
『お前が死ねば良かった』
『何故、お前が生き残った』
『何も守れなかった、弱者め』
『全部、壊れた。お前のせいで』
『返せ、全部返せ。奪ったもの全部だ』
『罪を償え、自害しろ』
『誰も、お前が生き残ることなど望んでいない』
『早く死んでしまえばいい』
『地獄に落ちろ』
『地獄に落ちろ』『地獄に落ちろ』
『地獄に落ちろ』『地獄に落ちろ』『地獄に落ちろ』
『地獄にっ……落ちろ!!!!!!!!!!!!』
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「っはぁっ……!」
永遠に続く罵倒の声。
その声から逃れるように、魁蓮は目を覚ました。
首には汗が伝い、胸騒ぎがする。
まさか、黒神の夢を連続で見ることになるとは、嫌な感じだ。
「お目覚めですか」
「っ……」
魁蓮が息を整えていると、楊の声が聞こえてきた。
魁蓮がその声に顔を上げると、楊は人間の姿で、洞窟の入口に座っていた。
いつの間にか外は夜になっていた、恐らく魁蓮が目覚めるまで、楊が見張りをしてくれていたのだろう。
楊は魁蓮と目が合うと、どこか切なそうに目を細めた。
「……顔色が悪いです。何か、悪夢でも見ましたか?」
「……阿呆か。暗いせいで、そう見えるだけだろう」
「…………」
魁蓮は汗を拭うと、はぁっと深いため息を吐いた。
あの夢に関しては、楊とて共有されないらしい。
それは幸いだった。
しかし、どうしてこうも連続で見ることになったのだろう。
まさか本当に、黒神に呪いにでもかけられているのではないだろうか。
そう考えてしまうほど、あの夢は繰り返されていた。
その時、ふと魁蓮は思い出す。
「……楊、巴を見なかったか」
魁蓮は眠りにつく前、巴と一緒に居たことを思い出す。
思えば、巴と話していた途中から記憶が無い。
寝落ち……をしてしまうほど寝不足だったわけでも無いはずだが、本当に疲れが溜まっていたのだろうか。
魁蓮が楊に尋ねると、楊は立ち上がりながら答える。
「もうとっくの前に、どこかへ行きましたよ。意識を失った主君を巴殿が連れてきて、僕に預けてきたんです」
「……そうか」
魁蓮が目を伏せると、楊は伸びをした。
「主君も起きたことですし、もうこの姿のままで居続ける必要は無いですね」
基本、楊は鷲の姿でいる。
だが魁蓮無しで戦う場合は、人間の姿の方が戦いやすいため、時折こうして人間の姿に変身することがある。
今の今まで人間の姿だったのも、万が一に備えてだった。
「では主君。僕はっ」
その時……楊とすれ違うように、魁蓮は洞窟から抜け出した。
楊はそんな魁蓮に、「えっ?」と驚く。
「しゅ、主君!何処へ!?」
「夜風に当たってくる。お前はここにいろ」
「ま、また留守番ですか……」
「黙れ」
魁蓮は冷たく制すると、楊に振り返ることなく洞窟を離れた。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
今日の夜風は、いつもより冷たい。
現世は黄泉と違って、季節通りに環境も変わる。
黄泉ではあまり感じない寒さに、魁蓮は眉間に皺を寄せながら、森の中を歩いていた。
花蓮国の森は、至る所に広がっている。
同じ森でも、そこに巣食う妖魔の数が違えば、実る果物もバラバラだ。
流石は自然が美しい、花蓮国と言うべきか。
だから、魁蓮は森の中を歩くのは嫌いでは無い。
もし飽きても、別の森に移動すればいいのだから。
「この森も、もう何も無いか」
今いる森は、思いのほか長居していた。
果物も沢山あったし、何より妖魔がたくさんいた。
情報集めに滞りがあったら、魁蓮は暇つぶしに妖魔を殺していた。
そのため、退屈というものは一切無かった。
だがそろそろ、別の場所に移るのもいいくらいだ。
魁蓮の求めている情報や過去に関するものは、ここには無かったから。
「早々に切り上げ、黄泉に戻る手もっ」
その時……。
「ギャアアアアア!!!!!!!」
少し離れたところから聞こえた悲鳴。
同時に感じる、複数の妖魔の気配。
魁蓮はその空気に、ギロッと視線を巡らせた。
(……気晴らしには、丁度いい)
つい先程、後味の悪い夢を見たばかりだ。
気分は、あまり良くないと言っても過言では無い。
魁蓮は暇つぶしと少しの気分転換のため、今から視界に入った妖魔を全て殺すことにした。
そして偶然にも、妖魔が近くにいる。
飽きるまで殺せば、それなりに気分転換にはなるだろう……と、魁蓮が足を進めると、
「あんなの勝てっこない!!早く逃げろ!!」
「……?」
悲鳴のした方向から、数体の妖魔が泣きながら逃げている。
その姿は、人間の血肉を求める妖魔の姿からは考えられないほど、情けないものだった。
魁蓮だけは、よく目にする光景だが。
(実に無様だ……だが……)
魁蓮はその妖魔たちを眺めていると、ほんの少し妖力を込めた。
直後、逃げる妖魔たちの足元に、黒い影が現れて……大量の剣山が姿を現した。
「「「ギャアアアアア!!!」」」
影から出てきた特殊な剣山は、妖魔たちの体を激しく貫通した。
その剣山に、妖魔たちは青ざめる。
この能力が誰の仕業なのか、分かっているからだ。
すると魁蓮は、剣山に捕まっている妖魔たちに近づく。
「貴様ら、我の問いに1度だけ答えることを許そう。
何故、そのような無様な姿を晒して逃げていた?」
冷たく、重圧を感じる魁蓮の声。
たった今、恐怖を感じていたものから逃げていたというのに、それ以上に恐ろしいものが待ち構えているなんて。
妖魔たちは魁蓮の姿に、こっちに逃げなければよかったと心底後悔していた。
しかし、魁蓮からすれば関係ないこと。
魁蓮が妖魔たちの返答を静かに待っていると、一体の妖魔が震えながら口を開く。
「む、向こうに……化け物がっ……。
仙人でも、妖魔でもないっ……本物の化け物がっ!」
「……あ?」
その直後のこと……。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
先程の悲鳴に続いて、またも別の悲鳴が。
魁蓮はその悲鳴に視線だけ向けると、目を細めた。
「ふん……化け物、か……まあ良い。
貴様らは用済みだ……散れ」
魁蓮がそう呟くと、捕まっていた妖魔たちの体は、内側からバンッと激しく弾け飛んでしまった。
辺りに妖魔たちの肉片が飛び散り、その場には血溜まりが広がる。
魁蓮はその光景になんの感想も抱かないまま、悲鳴がする方向へと足を進めた。
「逃げろっ、逃げろ!!!」
「ダメだ!勝てねぇ!」
足を進める度、情けない妖魔の声が耳を刺す。
だが逆に言えば、妖魔が魁蓮以外に対して、こんなにも怯えるのは初めてのことだ。
故に、魁蓮にとっては興味の1つでもある。
そうして静かに足を進めていると…………
「っ……………………」
見えてきたのは……
大量の妖魔の死体と……その中心に立つ、1人の少年。
血だらけの刀を握りしめ、呻き声を上げている妖魔の顔を踏みつけている。
「だ、誰かっ」
妖魔が掠れた声で助けを求めた直後。
少年は器用に刀を回すと、妖魔の首に刀をグサッと突き刺した。
妖魔はそれ以上話さなくなり、バタッと全身から力が抜けた。
辺りが静寂に包まれた後、少年は妖魔に突き刺した刀を抜き取り、べっとりとついた血を振り払う。
(ほう……化け物、か……)
先程の妖魔たちが言っていた化け物は、恐らくこの少年だろう。
仙人でも妖魔でもない、と言ってはいたが、見た目だけ見れば人間のように見えた。
だが辺りに散らばる妖魔の死体を見る限り、彼が只者では無いことは、容易に考えられる。
現に少年が着ているのは、戦闘服のようなものだ。
魁蓮が黙って少年を見つめていると、少年は少し綺麗になった刀を確認して、くるっと後ろに振り返る。
「っ……!!!!!!!」
少年が振り返った瞬間……少年は、自分を見つめて立ち尽くす魁蓮の姿に、ピタッと動きが止まった。
魁蓮は振り返った少年の姿に、目を細めた。
(……なんだ、あれは……鬼の、面?)
少年は、不思議な黒い鬼の面をつけていた。
鬼の面と言えば、以前まで忌蛇が身につけていたのだが、あれはただのお面だった。
しかし少年のお面は、何やら妙な力が込められているお面だったのだ。
(妖魔には、見えぬが……仙人、か……?)
魁蓮が腕を組んで見つめていた直後……
「っ……………………」
少年は魁蓮に背中を向け、バッと素早くかけ出す。
もしこの場にいる者が、他の者であれば逃げられただろう。
だが生憎、そこにいるのは……鬼の王だ。
「待て」
魁蓮が低く呟くと同時に、少年の前に現れたのは、いつの間にか地面に広がっていた影と、そこから顔を出した複数の動く鎖。
鎖は壁のように連なると、少年の行く手を阻む。
少年もこれは逃げられないと察したのか、グッと力を入れて、その場に踏みとどまった。
「おい餓鬼、何故逃げる」
魁蓮はそう言いながら、少年に近づいた。
背後から聞こえてくる足音、少年はその足音に、横目で振り返った。
その間、少年は刀を離すことなく、じっと魁蓮の様子を伺っている。
「貴様、かなり腕が立つらしいが……何者だ?」
「っ……………………」
魁蓮が尋ねるも、少年は沈黙を貫く。
どれだけ待っても、少年は口を開かなかった。
魁蓮は、少年が恐怖を感じすぎて口が回らないのだと思っていたが……どうやら、そうでは無いらしい。
(……隙を、狙っているな……)
少年が沈黙を貫く理由は分からないが、少年は一切怯えてなどいなかった。
呼吸も安定していて、体や手先も震えていない。
それどころか、鬼の王である魁蓮に未だ背中を向けている。
普通では考えられない反応だ。
だが、魁蓮もそんなに待てる男では無い。
(答えぬか……ならば、探れば良い)
そうして魁蓮が、赤い目を光らせると………………
ブワッ……!
「っ……」
魁蓮が少年を視ようとした途端……少年の体は黒い瘴気に包み込まれ、そして消えた。
直後、魁蓮の背後に気配が……。
「ほう……」
魁蓮が横目で振り返ると、先程の少年がいつの間にか背後にいて、いつ攻撃が来てもいいように刀を構えていた。
その動きは、魁蓮からすれば初めて見るものだった。
(我の考えを呼んだか……これはなかなか……)
只者では無い……どころの話では無い。
今、魁蓮の目の前にいる少年は、仙人が束になっても倒せないほどの強者かもしれない。
ただ探りを入れるだけでは、到底何も分からないだろう。
そう理解した途端、魁蓮は自分の足元に黒い影を広げると、その中からまたも複数の鎖が姿を現した。
「枷、命令だ。その餓鬼を探れ。
ただし、殺すことも傷つけることも、許さん」
魁蓮がそう言った直後……鎖たちは一斉に、少年に向かって伸びていった。
少年はグッと力を入れると、自分に立ち向かってきた鎖を、軽い身のこなしで避ける。
そしてそのまま、少年と鎖の攻防が始まった。
刀と鎖のぶつかる甲高い音が、何度も何度も響く。
魁蓮の技の一つである「枷」は、魁蓮が最も愛用する技なのだが……その技を、少年はいとも簡単に受け止める。
彼の動きから見て、どうやら余裕のようだ。
(これは驚いた……奴は、龍牙以上か……)
少年の動きを見てわかったのは、魁蓮の次に強いとされている龍牙すらも超える強者だということ。
一切無駄のない動きと、刃こぼれしにくい刀の扱い方、少年はかなりの手練だ。
試しに魁蓮は、再び瞳を光らせて少年の正体を確かめようとする。
しかし……
ブワッ!!!
少年は先程と同じように、黒い瘴気に包まれて姿を消すと、また別の場所へと瞬間移動する。
そしてすぐ、鎖との攻防が始まるのだ。
休みなどない鎖の攻撃を受けながらも、少年は鎖の攻撃を簡単に受け止め避けるどころか、少し離れた場所から見ている魁蓮の動きも把握している。
(……なかなかに、興味があるな……)
今の遠慮したような攻め方では、この攻防はきっと永遠に続くだろう。
何より、少年の本気は今のままでは見れない。
ただ攻防を続けていても、少年の本気も正体も分からず終いだ。
ならば……本気を出させればいい。
「ククッ……」
ふと、魁蓮が枷の力をほんの少し弱めると、鎖の動きが鈍くなって少年にほんの少しの余裕を持たせる。
だがその直後、魁蓮は目で追えない速度で少年へと近づいた。
そして、少年の心臓を狙うような動きを、わざと見せる。
はたから見れば、魁蓮は本気で少年を殺そうとしているように見えるはずだ。
魁蓮はそれを利用して、少年の本気を見出そうとした。
そして魁蓮が、少年の体に触れようとした……その時。
少年がつけていた、鬼の面。
その目の奥から……赤い光が見えた。
「っ…………!!!」
魁蓮がその光を見た途端、少年は常人離れな動きで、魁蓮の攻撃を避ける。
その動きは、鍛え上げた仙人や妖魔でさえ出来ない動き。
まさに、超越した力だった。
だが魁蓮が引っかかったのは、そこでは無い。
(今の光は……)
魁蓮が疑問を抱いていたのは、鬼の面の目から見えた赤い光。
その光が見えた途端、ほんの一瞬、人の目が見えたのだ。
つまり光ったのは鬼の面ではなく、その奥にある少年の瞳。
そして魁蓮は見た、その瞳が……
魁蓮と同じように、赤く光る光景を。
(何故だ……何故、我と同じ力を)
魁蓮が今の出来事に驚いていると……
「我は、貴方と戦う気は無い」
魁蓮から離れた少年が、ふと呟いた。
魁蓮がその声に振り返ると、少年は刀を鞘に入れ、じっと魁蓮を見つめている。
その時、少年の目はもう光っていなかった。
「……貴様、何者だ?今の力……どういうことだ」
魁蓮は鎖と影を消しながら、少年に向き直る。
これはもう、直接探りを入れるのが1番良いかもしれない。
そう思い魁蓮が尋ねると、少年は少しの沈黙の後、おもむろに口を開く。
「……遺伝、だ」
「遺伝?誰のだ」
「……我の…………父の、遺伝…………」
「………………………………」
そう話す少年の声は、どこか言いにくそうだった。
だが魁蓮は、何一つ納得していない。
そもそも魁蓮の瞳の力は、魁蓮しか持っていない特殊なもの。
膨大な力を消費するため、他の者では到底扱えない。
なのに、その力と似通った……いや、あれはもはや同じものだった。
そんな力が、この少年にもあるなんて。
「どうりで我の動きも、迷わず読めたのか。
ならば質問を変えよう。何故、正体を隠す」
「っ…………」
「正体を探られては困るのか?貴様のその力も」
魁蓮が質問を変えると……この質問には答えられないのか、少年は沈黙を貫いた。
どうやら、少年は自分の正体を隠しており、あの鬼の面も正体を隠す1つの手段なのだろう。
その時……
「申し訳ない、我にはやらねばならないことがある。
故に、我はここで失礼する。では……」
少年はそう言うと、黒い瘴気に包まれて姿を消した。
1人になった途端、魁蓮は腕を組んで考え込んだ。
普段なら返事も待たずに居なくなった少年を殺すところだが、今日はそういう気分でも無かった。
むしろ……
「……実に、面白い餓鬼がいたものだ……」
魁蓮は先程の少年に、興味を持っていた。
魁蓮にとって、強者は暇つぶしの1つだ。
戦いがいのある者がいればいるほど、魁蓮も喜ぶというもの。
魁蓮は少年の存在に小さく笑うと、気分転換する必要がもう無くなったため、そのまま楊の待つ洞窟へと帰っていった。
その近くでは、先程の少年が魁蓮からは見えない木の上から、魁蓮の背中を見つめていた。
『夜叉様っ、ご無事ですか……!?』
そんな少年に、彼が乗っている木がガサガサと揺れると共に、少年に声をかける。
魁蓮と戦った少年……殲魔夜叉は、グッと拳を握った。
「無事だ……あちらも手を抜いていたのでな。我が、傷つかぬようにと」
『そうでしたか……とにかく、ご無事で何よりです。
それより、何故鬼の王は夜叉様に攻撃を?あんなの、有り得ません。貴方たちは、親子なのにっ……』
木は怒ったように、そう話す。
しかし殲魔夜叉は、小さい声で答えた。
「仕方がない。父は、我の記憶を失っているのだ……まあ、失っているのは父だけでなく、母もだが。
気にするな。ただ今は、赤の他人というだけだぞ」
『ですが、夜叉様っ…………』
殲魔夜叉はそう言うと、その場に腰を下ろす。
そして、夜空に浮かぶ欠けた月を見上げた。
その度に、殲魔夜叉の胸に広がるのは……目を背けたくなるような寂しさだ。
「だが、時折考えたりはする。
普通の親子は、どんなことをするのか。子は、親の腕にいつも抱かれるのか。いつも一緒にいるのか。
我には……何一つ、分からない。親子というものが」
そう呟く彼の声は……悲しく、小さく震えていた。
しかしその声は……魁蓮に届くはずもなかった。
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