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第230話
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「何だ……この、書物の量はっ……」
部屋に入った虎珀は、四方八方に立ち塞がる本棚と大量の書物や巻物に、開いた口が塞がらない。
これは、どれだけ他の大きな書庫を探し当てても、比べ物にならないほどの量だった。
普段書物を読み慣れていない虎珀は、既に書物と巻物の多さに頭がクラクラする。
すると龍禅は、両手を腰に当てて本棚を見上げた。
「歴代志柳の当主の中に、作家を生業としていた人が居てな?その人、すっげぇ黒神様のことを崇めてたんだよ。それで、黒神様のことを後世にも伝えていきたいってことで、ずっと書き留めていたらしい」
「……えっ?つまり……
ここにあるのは、その当主が今まで書いてきたものってことか……?」
「そう!世間に書物として売ることはせず、世界でたった一つの歴史物としてここに残した。
志柳は、争いとかそういうのに巻き込まれにくいだろう?管理するには最適な場所だからな」
龍禅はニコッと笑った。
たった一人の人物を書き留めてきた書物の割には、相当な数だ。
だが同時に、その当主の黒神に対する気持ちというものは表れている。
その当主は、きっとこれを命懸けで行ってきたのだろう。
虎珀がキョロキョロと更に見渡していると、龍禅は虎珀の反応にふふっと微笑みながら、本棚にある書物を1冊取りだして眺める。
「びっくりするだろ?俺も初めてこの部屋に来た時は、言葉失ったなぁ!」
「まさか……ここにあるもの全て、黒神のことか?」
「そう!あぁまあ、黒神以外のことも書かれてるけど、基本的には黒神関連かな」
「……多すぎるだろ……」
虎珀は、再び本棚を見上げる。
そもそも、この本棚だってどこに売っているのだ。
まるで黒神の書物を片付けるために作られたと言わんばかりに大きく、大切な歴史を保管しているという責任感を感じる。
これからここにある書物を全て読まなければ、黒神のことが知れないと考えると、虎珀は気が遠くなりそうだった。
(こんな量、一体誰が読むんだよ……)
「あ、ちなみに~。俺はここにある本、全部読んだ!」
「っ!?」
虎珀の心の声でも聞こえたのだろうか。
龍禅は虎珀の考えていることに答えるように、高々と自慢げに話す。
いや、思えば龍禅は黒神を心の底から崇拝している。
憧れの存在を知りたいと言う気持ちが強いから、ここにある書物を読むことは、決して苦しいことではなかったのだろう。
とはいえ、ここにある書物を全て読んだとなると、やはりその行動力は凄まじい。
「俺には無理だな……こんな量、読めない……」
「あっはは!まあそれが普通だよな!」
いくら読書家でも、ここにある書物を全て読み切るのは無理だろう。
前提として、妖魔より遥かに寿命が短い人間なんてもってのほか。
読んでいるうちに、老いを感じる。
龍禅が全て読むことが出来たのは、妖魔に与えられた長い寿命故だろう。
虎珀は眉間に皺を寄せながら、ぐるっと書物を見渡していく。
そして虎珀は、あるものに目が止まった。
「……なぁ龍禅。この屏風は?」
虎珀が指を指したのは、壁際に置かれている大きな屏風。
そこには、何やら戦争の情景が描かれていた。
龍禅が眺めていた書物から視線を外すと、「あぁ」と声を漏らして近づく。
「''伏魔の乱''だよ。
黒神が残してきた功績の中で、最も有名な話さ」
「伏魔の乱?」
「うん。当時、花蓮国には多くの妖魔たちが住処としていた場所があって。人々はその場所を「伏魔」って呼んでたんだ。そこに住まう妖魔たちは本当に強くて、仙人たちが何十年も頭を悩ませていたらしい」
「今で言う、鬼の王の黄泉みたいなものか?」
「あんな別世界ってほどの規模では無いけど、まあ似たようなものかな?
そんな人々が恐れていた場所を、黒神は壊滅させた。たった一人で。その時の情景を描いてるんだ」
龍禅の説明に、虎珀は屏風へと視線を落とす。
屏風に描かれているのは、大きな石造建築に蔓延る無数の妖魔。
辺りは火に囲まれ、見るからに危険な状態。
そして、建物に蔓延る妖魔たちがこぞって睨みつけている、一人の人間。
黒と赤の衣を纏い、黒く輝く剣を持ち、伏魔を見つめるその人物は……仮面をつけた若き少年だった。
虎珀はその少年の姿に、首を傾げる。
「……黒神って、仮面をつけていたのか?」
虎珀が尋ねると、龍禅は首を横に振った。
「ううん。黒神の顔は、誰にも描けないんだ」
「……描けない?」
「そう。話によれば、黒神って相当な美貌の持ち主だったらしいぜ?会う人全てを魅了する美男子で、当時の女性たちの憧れだったんだと。
それで、あまりにも美しいもんだから、どんなに腕のいい有名な画家が挑戦しても、誰1人黒神の美貌を描き表すことは出来なかった。だからこうして、仮面をつけて誤魔化してんだって」
「…………………………」
とんでもない美貌だから、顔を描く代わりに仮面をつけていたなんて。
一体、黒神はどんな顔立ちをしていたのだろう。
画家がお手上げなんて、聞いたことがない。
「いやぁ!俺もあと100年くらい前に生まれてれば、黒神と同じ時代を生きてたんだけどなぁ!惜しいなぁ……黒神の姿、この目で見てみたい!」
「……見たかったのか?」
「そりゃもちろん!憧れの存在だし?それに、そんなに美男子なら、ぜひとも拝みたいもんだぜ!」
龍禅はグッと拳を握った。
確かに、歴史物に残すことすら出来ない美貌とは、むしろどれほどの美しさなのか。
美醜の見分けは人それぞれ違うのだが、万人受けしていた美貌となると、相当なものだったのだろう。
ふと、虎珀はある人物を思い浮かべる。
(そういえば、彼も……)
脳裏に浮かんだのは、鬼の王 魁蓮。
彼から感じる恐怖などで忘れそうになるが、彼も妖魔とは思えないほどの美貌の持ち主だった。
虎珀は美男子など、見た目の美しさなんてものに興味はないのだが、そんな虎珀が言葉を失うほどだった。
きっと黒神も、それほどの男だったのだ。
すると、屏風をじっと見つめる虎珀に、龍禅がそっと近づいて耳打ちをする。
「ちなみにだけど~……
この伏魔の乱があった時、黒神はわずか15歳!」
「っ!?」
龍禅の言葉に、虎珀は目を見開いた。
長い生を歩む妖魔からすれば、人間なんてすぐ死ぬ生き物で、人間からすれば年寄りの80歳でさえ幼さを感じるほどだというのに……。
妖魔には一瞬とも思える年齢の15歳、そんな若い歳で黒神は妖魔を一掃しているとは。
やはり、史上最強と言われるだけある。
虎珀は再び屏風に視線を落とし、仮面をつけている黒神の姿を見つめた。
「ほんとすげぇよな!15歳で、しかも1人だぜ?」
「……………………」
確かに、これは凄い。
虎珀がこれほど世の中を渡り歩いてきたというのに、伏魔という場所を知らなかったことから考えるに、その場所は伏魔の乱で滅んだのだろう。
この、黒い剣を持つ若き少年によって。
「言っとくが、黒神が凄いのはそれだけじゃねえぞ?」
「?」
虎珀が屏風から視線をあげると、何やら龍禅が1冊の書物を渡してきた。
その書物には、「壱」という文字が。
どうやらこの書物が、一番最初に執筆された黒神の歴史らしい。
この部屋にある書物全ての、始まり……。
虎珀はその書物を受け取ると、ペラっと1枚めくる。
そこに書かれていたのは、びっしりと並ぶ文字の数々。
そして1行目には、こう記されている。
''その少年ら、人の姿をした神なり''
(……少年、ら……?)
虎珀は続けて、ざっと文に目を通す。
すると龍禅は、近くにあった椅子を虎珀の近くに引きずって、腰を下ろした。
「最初から読むと時間かかるから、俺が教えてあげる。よかったら、書物と読み比べながら聞いてよ」
そう言うと龍禅は、まるで子どもたちに読み聞かせをする語り手のように、優しい声音で語り出す。
龍禅が語ったのは……黒神の、生い立ちだ。
史上最強の仙人 黒神
後にその名で呼ばれるようになる若き少年は、元々孤児だった。
孤児ならば、そもそも仙人になることさえ困難だと、誰もが思うだろう。
しかし、彼は黒神という名で呼ばれる前から、世間にその存在を知らしめていた。
その第1歩となったのは、とある一件。
彼がまだ霊力というものを上手く扱えなかった頃のことだ。
彼はたまたま道端に落ちていた刀を拾うと、ずっと1人で彷徨い続けていた森の中にいる妖魔たちを、跡形もなく一掃した事件を引き起こした。
その行動に深い理由は無い、復讐心も、憎悪も無い。
ただ彼は、それが責務だと判断した。
その事件が起きた当時、彼はまだ4歳だった。
森の中での騒ぎを聞きつけた当時の仙主は、状況を確かめるために1人で森の中へと足を踏み入れた。
すると見えてきたのは、無惨な姿でやられた妖魔たちと、返り血を浴びた小さな子ども。
実に異様な光景、何倍もの大きさの体をした妖魔たちが、まだ力も未熟な子どもの前で倒れているのだ。
そして最も異様だったのは、妖魔ではなく子どもだ。
幼い体から感じる霊力は尋常なものではなく、大の大人でさえも腰を抜かしてしまうほどの威圧を放っていた。
しかし仙主は、残酷な運命を持ってしまった子どもが居た堪れなくなり、そのままその子どもを養子として引き取った。
それが、彼の人生の始まりだった。
部屋に入った虎珀は、四方八方に立ち塞がる本棚と大量の書物や巻物に、開いた口が塞がらない。
これは、どれだけ他の大きな書庫を探し当てても、比べ物にならないほどの量だった。
普段書物を読み慣れていない虎珀は、既に書物と巻物の多さに頭がクラクラする。
すると龍禅は、両手を腰に当てて本棚を見上げた。
「歴代志柳の当主の中に、作家を生業としていた人が居てな?その人、すっげぇ黒神様のことを崇めてたんだよ。それで、黒神様のことを後世にも伝えていきたいってことで、ずっと書き留めていたらしい」
「……えっ?つまり……
ここにあるのは、その当主が今まで書いてきたものってことか……?」
「そう!世間に書物として売ることはせず、世界でたった一つの歴史物としてここに残した。
志柳は、争いとかそういうのに巻き込まれにくいだろう?管理するには最適な場所だからな」
龍禅はニコッと笑った。
たった一人の人物を書き留めてきた書物の割には、相当な数だ。
だが同時に、その当主の黒神に対する気持ちというものは表れている。
その当主は、きっとこれを命懸けで行ってきたのだろう。
虎珀がキョロキョロと更に見渡していると、龍禅は虎珀の反応にふふっと微笑みながら、本棚にある書物を1冊取りだして眺める。
「びっくりするだろ?俺も初めてこの部屋に来た時は、言葉失ったなぁ!」
「まさか……ここにあるもの全て、黒神のことか?」
「そう!あぁまあ、黒神以外のことも書かれてるけど、基本的には黒神関連かな」
「……多すぎるだろ……」
虎珀は、再び本棚を見上げる。
そもそも、この本棚だってどこに売っているのだ。
まるで黒神の書物を片付けるために作られたと言わんばかりに大きく、大切な歴史を保管しているという責任感を感じる。
これからここにある書物を全て読まなければ、黒神のことが知れないと考えると、虎珀は気が遠くなりそうだった。
(こんな量、一体誰が読むんだよ……)
「あ、ちなみに~。俺はここにある本、全部読んだ!」
「っ!?」
虎珀の心の声でも聞こえたのだろうか。
龍禅は虎珀の考えていることに答えるように、高々と自慢げに話す。
いや、思えば龍禅は黒神を心の底から崇拝している。
憧れの存在を知りたいと言う気持ちが強いから、ここにある書物を読むことは、決して苦しいことではなかったのだろう。
とはいえ、ここにある書物を全て読んだとなると、やはりその行動力は凄まじい。
「俺には無理だな……こんな量、読めない……」
「あっはは!まあそれが普通だよな!」
いくら読書家でも、ここにある書物を全て読み切るのは無理だろう。
前提として、妖魔より遥かに寿命が短い人間なんてもってのほか。
読んでいるうちに、老いを感じる。
龍禅が全て読むことが出来たのは、妖魔に与えられた長い寿命故だろう。
虎珀は眉間に皺を寄せながら、ぐるっと書物を見渡していく。
そして虎珀は、あるものに目が止まった。
「……なぁ龍禅。この屏風は?」
虎珀が指を指したのは、壁際に置かれている大きな屏風。
そこには、何やら戦争の情景が描かれていた。
龍禅が眺めていた書物から視線を外すと、「あぁ」と声を漏らして近づく。
「''伏魔の乱''だよ。
黒神が残してきた功績の中で、最も有名な話さ」
「伏魔の乱?」
「うん。当時、花蓮国には多くの妖魔たちが住処としていた場所があって。人々はその場所を「伏魔」って呼んでたんだ。そこに住まう妖魔たちは本当に強くて、仙人たちが何十年も頭を悩ませていたらしい」
「今で言う、鬼の王の黄泉みたいなものか?」
「あんな別世界ってほどの規模では無いけど、まあ似たようなものかな?
そんな人々が恐れていた場所を、黒神は壊滅させた。たった一人で。その時の情景を描いてるんだ」
龍禅の説明に、虎珀は屏風へと視線を落とす。
屏風に描かれているのは、大きな石造建築に蔓延る無数の妖魔。
辺りは火に囲まれ、見るからに危険な状態。
そして、建物に蔓延る妖魔たちがこぞって睨みつけている、一人の人間。
黒と赤の衣を纏い、黒く輝く剣を持ち、伏魔を見つめるその人物は……仮面をつけた若き少年だった。
虎珀はその少年の姿に、首を傾げる。
「……黒神って、仮面をつけていたのか?」
虎珀が尋ねると、龍禅は首を横に振った。
「ううん。黒神の顔は、誰にも描けないんだ」
「……描けない?」
「そう。話によれば、黒神って相当な美貌の持ち主だったらしいぜ?会う人全てを魅了する美男子で、当時の女性たちの憧れだったんだと。
それで、あまりにも美しいもんだから、どんなに腕のいい有名な画家が挑戦しても、誰1人黒神の美貌を描き表すことは出来なかった。だからこうして、仮面をつけて誤魔化してんだって」
「…………………………」
とんでもない美貌だから、顔を描く代わりに仮面をつけていたなんて。
一体、黒神はどんな顔立ちをしていたのだろう。
画家がお手上げなんて、聞いたことがない。
「いやぁ!俺もあと100年くらい前に生まれてれば、黒神と同じ時代を生きてたんだけどなぁ!惜しいなぁ……黒神の姿、この目で見てみたい!」
「……見たかったのか?」
「そりゃもちろん!憧れの存在だし?それに、そんなに美男子なら、ぜひとも拝みたいもんだぜ!」
龍禅はグッと拳を握った。
確かに、歴史物に残すことすら出来ない美貌とは、むしろどれほどの美しさなのか。
美醜の見分けは人それぞれ違うのだが、万人受けしていた美貌となると、相当なものだったのだろう。
ふと、虎珀はある人物を思い浮かべる。
(そういえば、彼も……)
脳裏に浮かんだのは、鬼の王 魁蓮。
彼から感じる恐怖などで忘れそうになるが、彼も妖魔とは思えないほどの美貌の持ち主だった。
虎珀は美男子など、見た目の美しさなんてものに興味はないのだが、そんな虎珀が言葉を失うほどだった。
きっと黒神も、それほどの男だったのだ。
すると、屏風をじっと見つめる虎珀に、龍禅がそっと近づいて耳打ちをする。
「ちなみにだけど~……
この伏魔の乱があった時、黒神はわずか15歳!」
「っ!?」
龍禅の言葉に、虎珀は目を見開いた。
長い生を歩む妖魔からすれば、人間なんてすぐ死ぬ生き物で、人間からすれば年寄りの80歳でさえ幼さを感じるほどだというのに……。
妖魔には一瞬とも思える年齢の15歳、そんな若い歳で黒神は妖魔を一掃しているとは。
やはり、史上最強と言われるだけある。
虎珀は再び屏風に視線を落とし、仮面をつけている黒神の姿を見つめた。
「ほんとすげぇよな!15歳で、しかも1人だぜ?」
「……………………」
確かに、これは凄い。
虎珀がこれほど世の中を渡り歩いてきたというのに、伏魔という場所を知らなかったことから考えるに、その場所は伏魔の乱で滅んだのだろう。
この、黒い剣を持つ若き少年によって。
「言っとくが、黒神が凄いのはそれだけじゃねえぞ?」
「?」
虎珀が屏風から視線をあげると、何やら龍禅が1冊の書物を渡してきた。
その書物には、「壱」という文字が。
どうやらこの書物が、一番最初に執筆された黒神の歴史らしい。
この部屋にある書物全ての、始まり……。
虎珀はその書物を受け取ると、ペラっと1枚めくる。
そこに書かれていたのは、びっしりと並ぶ文字の数々。
そして1行目には、こう記されている。
''その少年ら、人の姿をした神なり''
(……少年、ら……?)
虎珀は続けて、ざっと文に目を通す。
すると龍禅は、近くにあった椅子を虎珀の近くに引きずって、腰を下ろした。
「最初から読むと時間かかるから、俺が教えてあげる。よかったら、書物と読み比べながら聞いてよ」
そう言うと龍禅は、まるで子どもたちに読み聞かせをする語り手のように、優しい声音で語り出す。
龍禅が語ったのは……黒神の、生い立ちだ。
史上最強の仙人 黒神
後にその名で呼ばれるようになる若き少年は、元々孤児だった。
孤児ならば、そもそも仙人になることさえ困難だと、誰もが思うだろう。
しかし、彼は黒神という名で呼ばれる前から、世間にその存在を知らしめていた。
その第1歩となったのは、とある一件。
彼がまだ霊力というものを上手く扱えなかった頃のことだ。
彼はたまたま道端に落ちていた刀を拾うと、ずっと1人で彷徨い続けていた森の中にいる妖魔たちを、跡形もなく一掃した事件を引き起こした。
その行動に深い理由は無い、復讐心も、憎悪も無い。
ただ彼は、それが責務だと判断した。
その事件が起きた当時、彼はまだ4歳だった。
森の中での騒ぎを聞きつけた当時の仙主は、状況を確かめるために1人で森の中へと足を踏み入れた。
すると見えてきたのは、無惨な姿でやられた妖魔たちと、返り血を浴びた小さな子ども。
実に異様な光景、何倍もの大きさの体をした妖魔たちが、まだ力も未熟な子どもの前で倒れているのだ。
そして最も異様だったのは、妖魔ではなく子どもだ。
幼い体から感じる霊力は尋常なものではなく、大の大人でさえも腰を抜かしてしまうほどの威圧を放っていた。
しかし仙主は、残酷な運命を持ってしまった子どもが居た堪れなくなり、そのままその子どもを養子として引き取った。
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