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第183話
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その頃……。
民の避難を終えた凪は、魁蓮と異型の様子を確認するために、崩壊しかけている町の中へと戻ってきた。
避難した民は瀧に任せ、凪は楊と共に魁蓮たちがいるところまで走る。
(酷い有様だ……)
足を踏み込んで改めて分かる、崩壊した町の現状。
眉を顰めてしまうくらいには酷いもので、凪たちが助けに来る前の、町の酷い出来事を物語っている。
きっと町にいた民や、異型を倒そうと駆けつけた仙人たちは怖くて仕方なかっただろう。
突然現れた異型、素性の知れない異型。
怖くないわけがない。
自分たちがもっと早く気づいていれば、何か変わっていたのだろうか……なんて、もうどうしようも無いことを凪は考えてしまう。
「っ……今はとにかく、鬼の王の元へ」
凪は首を横に振ると、再び魁蓮の方へと集中した。
民は避難し終えたのだ、町は後でどうにでもなる。
この酷い現状を増やさないためにも、今はただ異型をどうにかするしか無かった。
そのために、凪は異型と戦っている魁蓮の元へと足を進め続ける。
そしてその後ろを、楊はついて行った。
楊は、懸命に走り続ける凪の背中を、ただじっと静かに見つめていた。
(この仙人が、現代最強の仙人……)
楊の中で、あるひとつの変化が起きていた。
楊は現世に来てからというもの、瀧と凪のことがずっと気になっていたのだ。
何故気になるのかは分からない。
でも、何故か目が離せない、離したくないのだ。
それがどういう理由かは全く分からないけれど、人間である双子を、楊は気にかけてしまっていた。
主君である魁蓮に命令されたから、という理由だけでは無い、他に明確な理由があるような気がして。
(忌まわしき人間のくせに……何故……)
楊からすれば、人間は憎しみの対象だ。
主君である魁蓮を殺そうとする人間を、楊が快く受け入れるはずがない。
それはきっと、肆魔も同じ。
昔からある考えの通り、人間と妖魔はいがみ合う。
今の時代も、変わらない考えなのだ。
故に、魁蓮や楊と、瀧や凪が手を取り合う未来だって存在しない。
それなのに…………。
(日向殿に、近しい存在だから……なのか……?)
どうしても彼らが気になるのは、何故だろうか。
「何だ……?」
「っ……」
その時、凪が声を漏らした。
楊はその声にハッと我に返ると、凪が何かをじっと見つめているのに気づく。
楊もその見つめる視線の先へ、流れるように目を向けた。
すると……
「っ!!!」
凪たちの前に立ち塞がる、大きな黒い結界。
結界には蓮の模様が広がっており、まるで蓮が咲き誇る湖のようだった。
だがその中から感じる、魁蓮の底知れない妖力の気配。
その気配が、結界を見る者全てに危険だと信号を送る。
「これは……何が起きているんだ……」
危険だと分かっていても、どこか美しさを感じる黒い結界に、凪は興味を持っていた。
少しばかりの好奇心を胸に、凪はそっと結界に手を伸ばす。
その時……
「ピィッ!!!」
「うわっ!」
結界に触れようとした凪を、楊は慌てて止めた。
素早く凪の前に移動して、凪が伸ばした手を遮る。
突然前に来た楊に、凪は目を見開いて驚いていた。
「ちょっ、急に何だ…!?」
「ッ…………」
凪が片眉を上げて尋ねる中、楊は横目で結界に振り返った。
『この妖力の強さ、全てを遮断する結界、間違いない』
楊は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
この結界は、知る人ぞ知る結界。
特に楊は魁蓮の1部みたいなものだから、この結界が何を意味しているのか分かっていた。
『主君……何故異型如きに、奥義なんて…………』
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
(何だあれは……何が起きている)
一方、黒い結界内では……
魁蓮は、やっと見えてきた異型の体の構造に集中していた。
6つの核、人間で表すならば心臓。
それらが集まり、そして動いている。
ひとつの体の中に心臓が複数あるという、何とも奇妙な構造になっていた。
だが不思議だったのは、それだけでは無い。
「……2色……」
魁蓮の瞳に映っているのは、核を表す小さな炎。
見えるのは、黄色い炎が2つと、赤い炎が4つ。
そしてそれらが呪いによって混ざり合い、僅かに赤黒い炎に変化しつつあった。
その事実に、魁蓮は眉を顰めた。
(……有り得ん……)
瞳から入る情報は、魁蓮の不快感を誘った。
今まで見てきた赤黒い炎、それは異型妖魔を表すものだった。
だからその色の炎を宿す妖魔は、皆異型なのだと魁蓮も理解している。
子どもでも分かるような判断基準だ。
目の前にいる妖魔も、正真正銘の異型だと。
しかし…………
(どうやら我が追っている主とやらは……
随分と気色の悪い感性を持つ輩のようだな)
魁蓮がそう考えるのには、理由があった。
その理由の全てを、彼の目が語っている。
「……不愉快……」
魁蓮の特徴の一つとも言える、禍々しい赤い瞳。
魁蓮がこの瞳に力を込めた時、瞳はある2つの能力を発揮する。
1つは、身体、妖力、それらを限界まで高めること。
瞳の力を使わずとも魁蓮の力は異常なものだが、瞳の力を使えばその全てが底上げされる。
簡単に言えば、全ての力の向上だ。
瞳の力を使えば、大技である奥義も安定させることができ、ブレを起こすことなく戦うことが出来る。
同時に消費する妖力も少量で戦うことができ、耐久戦にも強くなる。
そのため、魁蓮は奥義を発動する際、決まって瞳に力を宿すのだ。
そして、瞳が持つもうひとつの能力…………。
(異型の正体……なるほどな……)
もう1つの能力は、相手の正体を見極めること。
仙人や妖魔は、己が持つ妖力や霊力で相手の気配や正体を感じとることが出来るが、それにも限界というものがある。
特に、大きな力を持つ妖魔に関しては、普通の人間と見た目がとても似ている上に力を隠すのも上手いため、妖魔と判断し損ねる可能性があるのだ。
だが魁蓮は、その僅かな違いを瞳の力で見極めることが出来る。
相手の正体を暴きたい時、魁蓮は瞳の力を使って内側を視て判断していた。
核や心臓は、炎で表される。
基本的に見えるのは、3種の色。
①霊力を持たない普通の人間は、青。
②霊力を持つ者や仙人たちは、黄色。
③妖魔や妖力を持つ者は、赤。
そして異型妖魔に関しては、赤に黒色が混ざる。
「何故異型は、核に黒色が混ざるのかずっと理解出来なかったが……相対する人間の心臓や霊力と、妖魔の核と妖力を無理やり混ぜているため、安定せず色が混濁しているのか……」
今まで魁蓮が見てきた異型妖魔たちは、全員が赤黒い色をした炎の核を宿していた。
何気なく見ていたものだが、今思えばおかしい。
混濁したような色の核を宿すなど、自分の正体がハッキリしていないと言っているようなものだからだ。
だが実際、その予想は当たっているのかもしれない。
(恐らく異型は……
妖魔と人間の、体と中身を呪いで繋ぎ合わせて作り上げる人工生物なのだろう。
少なくともあの異型の中には、妖魔が4体、仙人が2人混ざっている……相対する2つの種族を無理やり混ぜるとは……気色悪いことこの上ない)
この考えが当たっているのならば、異型の腕が仙人の剣に変化できるのにも納得が行く。
相対する2つの心臓を繋ぎ合わせるとは。
一体、何の呪いを使ったのか。
魁蓮の知識では、そんな胸糞悪い呪いは見たことも聞いたこともない。
主という存在が作り出した、新しい呪いなのか。
それとも……忘れているだけで、魁蓮も知っている呪いなのか。
(面倒だな……)
魁蓮がそう考えていると……
「ソナタノ時代ハ、モウスグ終ワリヲ迎エル」
「っ………………」
ふと、異型がそう口にした。
魁蓮は異型に視線を向けると、異型は湖の中にいる死体たちから逃げながら、魁蓮に声をかけていた。
異型の動きからして、死体たちから逃げるのにも慣れたのだろう。
最初に比べれば、軽やかな動きになっていた。
すると異型は、そのまま言葉を続ける。
「ソナタハ何ト、悲シイ人ナノダロウカ。鬼ノ王。
生キテイルダケデ恨マレ、忌ミ嫌ワレテイル。名ヲ轟カセレバ、犯シタ罪ガ付キ纏ウ。何ヲシテモ報ワレズ、生ト言ウ名ノ呪イガ襲ッテクル……強者故ニ、可哀想ナ方ダ………………」
哀れみか、情けか。
淡々と話す異型の言葉は、実に不愉快なものだった。
異型の言葉をそのまま受け取れば、魁蓮がとても悲しい人だとバカにされているようなもの。
これには流石の魁蓮も、眉を顰める。
「異型に情けをかけられるとは……忌々しいなぁ。
それほど我は、哀れに見えるか?」
「見エル……誰ヨリモ」
「そうか。どうやら、貴様の目は随分と腐っているようだなぁ?我を哀れむなど、無駄な行為だ」
自由に生き、自由に殺す。
何の不満も無いこんな人生の、どこに哀れみを感じるというのだろうか。
意外と馬鹿にされていることに気づき、魁蓮は煽るように異型を見つめる。
しかし、異型は言葉を止めなかった。
「イズレ分カル。
自分ガイカニ、地獄ノ中ニ立タサレテイルカヲ」
「……………………」
これも、主の命令のうちなのか。
それとも、この異型が抱える考えなのか。
どちらなのかは分からないが、魁蓮が喜ぶような内容ではないのは確かだ。
その時、異型はあることを口にする。
「鬼ノ王、ソナタ……。
自分ガ何者カ、考エタトコハアルカ?」
「………………あ?」
民の避難を終えた凪は、魁蓮と異型の様子を確認するために、崩壊しかけている町の中へと戻ってきた。
避難した民は瀧に任せ、凪は楊と共に魁蓮たちがいるところまで走る。
(酷い有様だ……)
足を踏み込んで改めて分かる、崩壊した町の現状。
眉を顰めてしまうくらいには酷いもので、凪たちが助けに来る前の、町の酷い出来事を物語っている。
きっと町にいた民や、異型を倒そうと駆けつけた仙人たちは怖くて仕方なかっただろう。
突然現れた異型、素性の知れない異型。
怖くないわけがない。
自分たちがもっと早く気づいていれば、何か変わっていたのだろうか……なんて、もうどうしようも無いことを凪は考えてしまう。
「っ……今はとにかく、鬼の王の元へ」
凪は首を横に振ると、再び魁蓮の方へと集中した。
民は避難し終えたのだ、町は後でどうにでもなる。
この酷い現状を増やさないためにも、今はただ異型をどうにかするしか無かった。
そのために、凪は異型と戦っている魁蓮の元へと足を進め続ける。
そしてその後ろを、楊はついて行った。
楊は、懸命に走り続ける凪の背中を、ただじっと静かに見つめていた。
(この仙人が、現代最強の仙人……)
楊の中で、あるひとつの変化が起きていた。
楊は現世に来てからというもの、瀧と凪のことがずっと気になっていたのだ。
何故気になるのかは分からない。
でも、何故か目が離せない、離したくないのだ。
それがどういう理由かは全く分からないけれど、人間である双子を、楊は気にかけてしまっていた。
主君である魁蓮に命令されたから、という理由だけでは無い、他に明確な理由があるような気がして。
(忌まわしき人間のくせに……何故……)
楊からすれば、人間は憎しみの対象だ。
主君である魁蓮を殺そうとする人間を、楊が快く受け入れるはずがない。
それはきっと、肆魔も同じ。
昔からある考えの通り、人間と妖魔はいがみ合う。
今の時代も、変わらない考えなのだ。
故に、魁蓮や楊と、瀧や凪が手を取り合う未来だって存在しない。
それなのに…………。
(日向殿に、近しい存在だから……なのか……?)
どうしても彼らが気になるのは、何故だろうか。
「何だ……?」
「っ……」
その時、凪が声を漏らした。
楊はその声にハッと我に返ると、凪が何かをじっと見つめているのに気づく。
楊もその見つめる視線の先へ、流れるように目を向けた。
すると……
「っ!!!」
凪たちの前に立ち塞がる、大きな黒い結界。
結界には蓮の模様が広がっており、まるで蓮が咲き誇る湖のようだった。
だがその中から感じる、魁蓮の底知れない妖力の気配。
その気配が、結界を見る者全てに危険だと信号を送る。
「これは……何が起きているんだ……」
危険だと分かっていても、どこか美しさを感じる黒い結界に、凪は興味を持っていた。
少しばかりの好奇心を胸に、凪はそっと結界に手を伸ばす。
その時……
「ピィッ!!!」
「うわっ!」
結界に触れようとした凪を、楊は慌てて止めた。
素早く凪の前に移動して、凪が伸ばした手を遮る。
突然前に来た楊に、凪は目を見開いて驚いていた。
「ちょっ、急に何だ…!?」
「ッ…………」
凪が片眉を上げて尋ねる中、楊は横目で結界に振り返った。
『この妖力の強さ、全てを遮断する結界、間違いない』
楊は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
この結界は、知る人ぞ知る結界。
特に楊は魁蓮の1部みたいなものだから、この結界が何を意味しているのか分かっていた。
『主君……何故異型如きに、奥義なんて…………』
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
(何だあれは……何が起きている)
一方、黒い結界内では……
魁蓮は、やっと見えてきた異型の体の構造に集中していた。
6つの核、人間で表すならば心臓。
それらが集まり、そして動いている。
ひとつの体の中に心臓が複数あるという、何とも奇妙な構造になっていた。
だが不思議だったのは、それだけでは無い。
「……2色……」
魁蓮の瞳に映っているのは、核を表す小さな炎。
見えるのは、黄色い炎が2つと、赤い炎が4つ。
そしてそれらが呪いによって混ざり合い、僅かに赤黒い炎に変化しつつあった。
その事実に、魁蓮は眉を顰めた。
(……有り得ん……)
瞳から入る情報は、魁蓮の不快感を誘った。
今まで見てきた赤黒い炎、それは異型妖魔を表すものだった。
だからその色の炎を宿す妖魔は、皆異型なのだと魁蓮も理解している。
子どもでも分かるような判断基準だ。
目の前にいる妖魔も、正真正銘の異型だと。
しかし…………
(どうやら我が追っている主とやらは……
随分と気色の悪い感性を持つ輩のようだな)
魁蓮がそう考えるのには、理由があった。
その理由の全てを、彼の目が語っている。
「……不愉快……」
魁蓮の特徴の一つとも言える、禍々しい赤い瞳。
魁蓮がこの瞳に力を込めた時、瞳はある2つの能力を発揮する。
1つは、身体、妖力、それらを限界まで高めること。
瞳の力を使わずとも魁蓮の力は異常なものだが、瞳の力を使えばその全てが底上げされる。
簡単に言えば、全ての力の向上だ。
瞳の力を使えば、大技である奥義も安定させることができ、ブレを起こすことなく戦うことが出来る。
同時に消費する妖力も少量で戦うことができ、耐久戦にも強くなる。
そのため、魁蓮は奥義を発動する際、決まって瞳に力を宿すのだ。
そして、瞳が持つもうひとつの能力…………。
(異型の正体……なるほどな……)
もう1つの能力は、相手の正体を見極めること。
仙人や妖魔は、己が持つ妖力や霊力で相手の気配や正体を感じとることが出来るが、それにも限界というものがある。
特に、大きな力を持つ妖魔に関しては、普通の人間と見た目がとても似ている上に力を隠すのも上手いため、妖魔と判断し損ねる可能性があるのだ。
だが魁蓮は、その僅かな違いを瞳の力で見極めることが出来る。
相手の正体を暴きたい時、魁蓮は瞳の力を使って内側を視て判断していた。
核や心臓は、炎で表される。
基本的に見えるのは、3種の色。
①霊力を持たない普通の人間は、青。
②霊力を持つ者や仙人たちは、黄色。
③妖魔や妖力を持つ者は、赤。
そして異型妖魔に関しては、赤に黒色が混ざる。
「何故異型は、核に黒色が混ざるのかずっと理解出来なかったが……相対する人間の心臓や霊力と、妖魔の核と妖力を無理やり混ぜているため、安定せず色が混濁しているのか……」
今まで魁蓮が見てきた異型妖魔たちは、全員が赤黒い色をした炎の核を宿していた。
何気なく見ていたものだが、今思えばおかしい。
混濁したような色の核を宿すなど、自分の正体がハッキリしていないと言っているようなものだからだ。
だが実際、その予想は当たっているのかもしれない。
(恐らく異型は……
妖魔と人間の、体と中身を呪いで繋ぎ合わせて作り上げる人工生物なのだろう。
少なくともあの異型の中には、妖魔が4体、仙人が2人混ざっている……相対する2つの種族を無理やり混ぜるとは……気色悪いことこの上ない)
この考えが当たっているのならば、異型の腕が仙人の剣に変化できるのにも納得が行く。
相対する2つの心臓を繋ぎ合わせるとは。
一体、何の呪いを使ったのか。
魁蓮の知識では、そんな胸糞悪い呪いは見たことも聞いたこともない。
主という存在が作り出した、新しい呪いなのか。
それとも……忘れているだけで、魁蓮も知っている呪いなのか。
(面倒だな……)
魁蓮がそう考えていると……
「ソナタノ時代ハ、モウスグ終ワリヲ迎エル」
「っ………………」
ふと、異型がそう口にした。
魁蓮は異型に視線を向けると、異型は湖の中にいる死体たちから逃げながら、魁蓮に声をかけていた。
異型の動きからして、死体たちから逃げるのにも慣れたのだろう。
最初に比べれば、軽やかな動きになっていた。
すると異型は、そのまま言葉を続ける。
「ソナタハ何ト、悲シイ人ナノダロウカ。鬼ノ王。
生キテイルダケデ恨マレ、忌ミ嫌ワレテイル。名ヲ轟カセレバ、犯シタ罪ガ付キ纏ウ。何ヲシテモ報ワレズ、生ト言ウ名ノ呪イガ襲ッテクル……強者故ニ、可哀想ナ方ダ………………」
哀れみか、情けか。
淡々と話す異型の言葉は、実に不愉快なものだった。
異型の言葉をそのまま受け取れば、魁蓮がとても悲しい人だとバカにされているようなもの。
これには流石の魁蓮も、眉を顰める。
「異型に情けをかけられるとは……忌々しいなぁ。
それほど我は、哀れに見えるか?」
「見エル……誰ヨリモ」
「そうか。どうやら、貴様の目は随分と腐っているようだなぁ?我を哀れむなど、無駄な行為だ」
自由に生き、自由に殺す。
何の不満も無いこんな人生の、どこに哀れみを感じるというのだろうか。
意外と馬鹿にされていることに気づき、魁蓮は煽るように異型を見つめる。
しかし、異型は言葉を止めなかった。
「イズレ分カル。
自分ガイカニ、地獄ノ中ニ立タサレテイルカヲ」
「……………………」
これも、主の命令のうちなのか。
それとも、この異型が抱える考えなのか。
どちらなのかは分からないが、魁蓮が喜ぶような内容ではないのは確かだ。
その時、異型はあることを口にする。
「鬼ノ王、ソナタ……。
自分ガ何者カ、考エタトコハアルカ?」
「………………あ?」
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