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第101話
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数日前。
日向のお休み期間が始まったばかりの頃。
何もすることがないと暇を持て余していた龍牙と虎珀は、2人で廊下を歩いていた。
いつもならば龍牙は日向の傍にいるのだが、今は司雀に任せているため、丁度することがない。
そして虎珀も自由になっている龍牙が心配で、勝手なことをしないために、軽く監視がてら傍にいるのだ。
「日向、元気してっかなぁ?」
「司雀様が傍にいるから、問題ない。それに、魁蓮様も城にいるみたいだからな。万が一、何かあっても大丈夫だ」
「魁蓮が城に居続けてんの珍しいよな?基本、どっかに出かけてる印象が強いのに」
「流石に、多少は気にしているんじゃないか?」
他愛もない会話を繰り返し、ただ時間を潰す。
日向が黄泉に来て、早1ヶ月。
たった1ヶ月の間に、多くの出来事があった。
慌ただしい日々を感じながらも、肆魔の間にも変化というものは起きていた。
そしてそれは……鬼の王にも。
「近頃はどうだ、司雀」
「「っ!」」
廊下の曲がり角の先から聞こえた、魁蓮の声。
2人はその声に気づいて、思わず足を止める。
「変わらず、順調ですよ。問題も全く」
「ならば良い」
どうやら、司雀と何かを話しているようだった。
内容が明かされている訳では無いが、恐らく日向関連のことだろう。
盗み聞きしてはいけないと思い、2人は気づかれないように、クルっと歩いてきた道に向き直る。
ところが、そんな2人の気遣いは、次に聞こえてきた司雀の声で止められてしまった。
「魁蓮。日向様と、親睦を深めてみてはいかがですか」
「「っ…………」」
聞こえてきたのは、思いもよらない提案。
龍牙はその声に、ピタッと足を止める。
そして、普段は真面目な虎珀も、この言葉ばかりは止まらずにはいられなかった。
まるで打ち合わせをしていたかのように、2人は同時に足を止める。
「親睦?」
魁蓮の、少し不機嫌そうな声が聞こえてくる。
まあ、当然と言えば当然の反応だ。
他者に興味を持たず、力を基準に他者を見定める魁蓮にとって、親睦という言葉は忌むべきものとも言えるだろう。
だが、司雀はそれを分かった上で提案している。
「日向様が黄泉へ来て、もう1ヶ月。そろそろ共にこの城で過ごす者として、接してみてはいかがです?」
「……どういう事だ?」
「おや。噛み砕いて言った方がよろしいですか?
日向様と、仲良くしてくださいと申しています」
「は?」
「いつまでも無愛想にせず、真っ向から日向様と接してください」
ある意味司雀という男は、唯一魁蓮と対等に会話をすることが出来ると言っても過言では無い。
もちろん、龍牙たちも魁蓮と話すことは出来るのだが、それはあくまで普通の会話だけ。
どうしても言いにくいことでも、サラッと魁蓮に言えてしまうのが、司雀の強いところでもある。
だが、それが許される行為なのかと言われると、実際はそうでも無くて。
「何のつもりだ司雀。馬鹿抜かせ、不愉快だ」
当然、魁蓮からすれば良い話では無い。
そんなの、誰が聞いても分かることだ。
だからこそ、話を盗み聞きしていた龍牙たちは、謎の提案をした司雀に疑問が生じる。
一体何を思ってそんなこと、ましてや魁蓮に言ったのだろうかと。
しかし、なんの躊躇いもなく答えはすぐ返ってきた。
「以前にも申し上げたと思います。私は、できれば日向様と仲良くなって欲しいと。その話を再度しているだけの事です」
「…………………………」
「それに貴方も、多少は日向様のことを気にしているのでしょう?どうしても、放っておけないのでは?」
司雀は、笑みを浮かべた。
確かに、こればかりは龍牙たちも同意見だった。
1番の驚きは、人間である日向を殺していないこと。
理由があるのだろうが、1ヶ月も続くとは、誰も想像していなかった。
そして魁蓮は、復活したあの日から、誰ひとりとして人間を殺していない。
日向の存在が、魁蓮に大きな影響を与えているのだ。
「日向様の体を気遣い、稽古にも勤しむ。むしろ、ここまでして興味が一切無いと言われた方が驚きです。
少なからず、あの方を見ているのでしょう?」
「………………」
「私はっ」
「司雀」
バッサリと切るような、魁蓮の低い声。
声音で伝わる、不快な思いをしているということが。
どこか空気も重く感じ、龍牙と虎珀の中に緊張が走った。
そして聞こえてくる、魁蓮の声。
「お前……小僧に、何を求めている」
「っ…………」
全てを見透かしているような魁蓮の目が、司雀を捕らえる。
真っ直ぐに見つめられるだけでなく、答えなければいけないという圧がかかり、司雀は息を飲んだ。
言いすぎたのか、なんて後悔はもう意味が無い。
「龍牙たちが、この城に来た時も言っていたな。だが当時は、ここまで言わなかった……
何故小僧に限って拘る?お前は小僧を、どのように見ているのだ?」
「それはっ…………」
初めて、司雀が言葉に詰まった。
理由はあるはずなのに、司雀はいつものように、すぐには答えてくれない。
姿が見えない龍牙たちは、何が起きているのか分からず、ただただ沈黙の中を息を殺して待った。
すると、絞り出すような司雀の声が。
「日向様なら、貴方の苦しみに、寄り添うことが出来る」
「……あ?」
「長年の苦しみを、取り除いてくれる。貴方の心を、動かしてくれると信じているのです」
司雀の理由は、意外なものだった。
まさかそんな大きなことを抱えていたとは、この場にいた誰もが想像していなかっただろう。
龍牙たちでさえ、司雀が日向のことを気にしているのは、魁蓮のものだからだと思っていた。
だが実際には、しっかりと自分の意思があったようで。
初めて明かした司雀の思いに、龍牙たちは目を見開く。
「長年の、苦しみ?我の、心?」
一つ一つ、魁蓮は司雀の言葉を復唱する。
その声音は、まるで理解出来ていないような、どこか聞き返すような感じに聞こえる。
それでも、司雀は真面目な顔で魁蓮を見つめた。
意思は固い、そう訴えるように。
「この1ヶ月。日向様と接して分かったのです。
彼は、他者の痛みに寄り添い手を差し伸べることが出来る方だと。あの海のように広い心は、固まっていた肆魔の心をも溶かしています。妖魔である我らにも、同じように優しく接してくれて、そして力で癒してくれた……
それがいつしか、貴方にもっ……」
「……………………」
「あの方はっ、貴方の苦しみだってっ」
「あぁ……そういうことか」
「っ……?」
突然、魁蓮は薄ら笑みを浮かべた。
なにかに気づいたのか、面白がるように笑っている。
その姿が、どこか不気味で、司雀はその先の言葉が言えなかった。
すると、魁蓮は笑みを浮かべたまま口を開く。
「つまりお前は、我が今小僧に絆されていて、故に小僧も人間も殺していない。親睦を深める絶好の機会だと。
そして我が小僧を気にかけている、体を労わっている……そう思っているのだな?」
「ま、まあ……簡潔に申し上げると、そういうことになるかと……」
「ハハッ……なるほどなぁ?」
司雀は、この時気づいてしまった。
この笑い方、この聞き方、この反応。
全てにおいて、今までの経験が訴えかけてくる。
これは、何かが違うのだ、と。
そしてその予想は、嫌な程に的中した。
「履き違えるなよ司雀。
我は、小僧と親睦を深めるつもりは無い。元より、我が小僧を傍に置くのは、あの力を奪うためだ」
「っ…………」
魁蓮は、薄ら笑みを浮かべたまま告げる。
そうだ、そうだった、この男はそういう男だった。
どこかで、そんなことは無いと言い聞かせていたのか、突然の現実を叩きつけられ、司雀は言葉に詰まった。
「我が小僧に絆されている?ククッ、有り得ん。我が小僧と人間を殺さん理由は、あの力のため。それだけだ。今はまだ奪う方法が見い出せない故、生かしているだけのこと。初めから奪えるものなら、力を奪っている。その場合小僧は用済みだ。生かさず殺している」
「っ!」
「だがまあ……お前が絆されていると勘違いするのも仕方がない。現に我は、この1ヶ月人間を殺していない。小僧の影響だと思うのは必然なことだろう。
しかしなぁ、小僧を殺さん理由は他にもある」
魁蓮は腕を組むと、ふと思い出す。
今までの日向の言動、日向の威勢の良さ。
そして……
互いに誓った約束を。
「あれは、暇つぶしの生きた我の玩具だ。
飽きが来れば、殺す予定のなぁ?」
「「「っ!!!!!!」」」
日向のお休み期間が始まったばかりの頃。
何もすることがないと暇を持て余していた龍牙と虎珀は、2人で廊下を歩いていた。
いつもならば龍牙は日向の傍にいるのだが、今は司雀に任せているため、丁度することがない。
そして虎珀も自由になっている龍牙が心配で、勝手なことをしないために、軽く監視がてら傍にいるのだ。
「日向、元気してっかなぁ?」
「司雀様が傍にいるから、問題ない。それに、魁蓮様も城にいるみたいだからな。万が一、何かあっても大丈夫だ」
「魁蓮が城に居続けてんの珍しいよな?基本、どっかに出かけてる印象が強いのに」
「流石に、多少は気にしているんじゃないか?」
他愛もない会話を繰り返し、ただ時間を潰す。
日向が黄泉に来て、早1ヶ月。
たった1ヶ月の間に、多くの出来事があった。
慌ただしい日々を感じながらも、肆魔の間にも変化というものは起きていた。
そしてそれは……鬼の王にも。
「近頃はどうだ、司雀」
「「っ!」」
廊下の曲がり角の先から聞こえた、魁蓮の声。
2人はその声に気づいて、思わず足を止める。
「変わらず、順調ですよ。問題も全く」
「ならば良い」
どうやら、司雀と何かを話しているようだった。
内容が明かされている訳では無いが、恐らく日向関連のことだろう。
盗み聞きしてはいけないと思い、2人は気づかれないように、クルっと歩いてきた道に向き直る。
ところが、そんな2人の気遣いは、次に聞こえてきた司雀の声で止められてしまった。
「魁蓮。日向様と、親睦を深めてみてはいかがですか」
「「っ…………」」
聞こえてきたのは、思いもよらない提案。
龍牙はその声に、ピタッと足を止める。
そして、普段は真面目な虎珀も、この言葉ばかりは止まらずにはいられなかった。
まるで打ち合わせをしていたかのように、2人は同時に足を止める。
「親睦?」
魁蓮の、少し不機嫌そうな声が聞こえてくる。
まあ、当然と言えば当然の反応だ。
他者に興味を持たず、力を基準に他者を見定める魁蓮にとって、親睦という言葉は忌むべきものとも言えるだろう。
だが、司雀はそれを分かった上で提案している。
「日向様が黄泉へ来て、もう1ヶ月。そろそろ共にこの城で過ごす者として、接してみてはいかがです?」
「……どういう事だ?」
「おや。噛み砕いて言った方がよろしいですか?
日向様と、仲良くしてくださいと申しています」
「は?」
「いつまでも無愛想にせず、真っ向から日向様と接してください」
ある意味司雀という男は、唯一魁蓮と対等に会話をすることが出来ると言っても過言では無い。
もちろん、龍牙たちも魁蓮と話すことは出来るのだが、それはあくまで普通の会話だけ。
どうしても言いにくいことでも、サラッと魁蓮に言えてしまうのが、司雀の強いところでもある。
だが、それが許される行為なのかと言われると、実際はそうでも無くて。
「何のつもりだ司雀。馬鹿抜かせ、不愉快だ」
当然、魁蓮からすれば良い話では無い。
そんなの、誰が聞いても分かることだ。
だからこそ、話を盗み聞きしていた龍牙たちは、謎の提案をした司雀に疑問が生じる。
一体何を思ってそんなこと、ましてや魁蓮に言ったのだろうかと。
しかし、なんの躊躇いもなく答えはすぐ返ってきた。
「以前にも申し上げたと思います。私は、できれば日向様と仲良くなって欲しいと。その話を再度しているだけの事です」
「…………………………」
「それに貴方も、多少は日向様のことを気にしているのでしょう?どうしても、放っておけないのでは?」
司雀は、笑みを浮かべた。
確かに、こればかりは龍牙たちも同意見だった。
1番の驚きは、人間である日向を殺していないこと。
理由があるのだろうが、1ヶ月も続くとは、誰も想像していなかった。
そして魁蓮は、復活したあの日から、誰ひとりとして人間を殺していない。
日向の存在が、魁蓮に大きな影響を与えているのだ。
「日向様の体を気遣い、稽古にも勤しむ。むしろ、ここまでして興味が一切無いと言われた方が驚きです。
少なからず、あの方を見ているのでしょう?」
「………………」
「私はっ」
「司雀」
バッサリと切るような、魁蓮の低い声。
声音で伝わる、不快な思いをしているということが。
どこか空気も重く感じ、龍牙と虎珀の中に緊張が走った。
そして聞こえてくる、魁蓮の声。
「お前……小僧に、何を求めている」
「っ…………」
全てを見透かしているような魁蓮の目が、司雀を捕らえる。
真っ直ぐに見つめられるだけでなく、答えなければいけないという圧がかかり、司雀は息を飲んだ。
言いすぎたのか、なんて後悔はもう意味が無い。
「龍牙たちが、この城に来た時も言っていたな。だが当時は、ここまで言わなかった……
何故小僧に限って拘る?お前は小僧を、どのように見ているのだ?」
「それはっ…………」
初めて、司雀が言葉に詰まった。
理由はあるはずなのに、司雀はいつものように、すぐには答えてくれない。
姿が見えない龍牙たちは、何が起きているのか分からず、ただただ沈黙の中を息を殺して待った。
すると、絞り出すような司雀の声が。
「日向様なら、貴方の苦しみに、寄り添うことが出来る」
「……あ?」
「長年の苦しみを、取り除いてくれる。貴方の心を、動かしてくれると信じているのです」
司雀の理由は、意外なものだった。
まさかそんな大きなことを抱えていたとは、この場にいた誰もが想像していなかっただろう。
龍牙たちでさえ、司雀が日向のことを気にしているのは、魁蓮のものだからだと思っていた。
だが実際には、しっかりと自分の意思があったようで。
初めて明かした司雀の思いに、龍牙たちは目を見開く。
「長年の、苦しみ?我の、心?」
一つ一つ、魁蓮は司雀の言葉を復唱する。
その声音は、まるで理解出来ていないような、どこか聞き返すような感じに聞こえる。
それでも、司雀は真面目な顔で魁蓮を見つめた。
意思は固い、そう訴えるように。
「この1ヶ月。日向様と接して分かったのです。
彼は、他者の痛みに寄り添い手を差し伸べることが出来る方だと。あの海のように広い心は、固まっていた肆魔の心をも溶かしています。妖魔である我らにも、同じように優しく接してくれて、そして力で癒してくれた……
それがいつしか、貴方にもっ……」
「……………………」
「あの方はっ、貴方の苦しみだってっ」
「あぁ……そういうことか」
「っ……?」
突然、魁蓮は薄ら笑みを浮かべた。
なにかに気づいたのか、面白がるように笑っている。
その姿が、どこか不気味で、司雀はその先の言葉が言えなかった。
すると、魁蓮は笑みを浮かべたまま口を開く。
「つまりお前は、我が今小僧に絆されていて、故に小僧も人間も殺していない。親睦を深める絶好の機会だと。
そして我が小僧を気にかけている、体を労わっている……そう思っているのだな?」
「ま、まあ……簡潔に申し上げると、そういうことになるかと……」
「ハハッ……なるほどなぁ?」
司雀は、この時気づいてしまった。
この笑い方、この聞き方、この反応。
全てにおいて、今までの経験が訴えかけてくる。
これは、何かが違うのだ、と。
そしてその予想は、嫌な程に的中した。
「履き違えるなよ司雀。
我は、小僧と親睦を深めるつもりは無い。元より、我が小僧を傍に置くのは、あの力を奪うためだ」
「っ…………」
魁蓮は、薄ら笑みを浮かべたまま告げる。
そうだ、そうだった、この男はそういう男だった。
どこかで、そんなことは無いと言い聞かせていたのか、突然の現実を叩きつけられ、司雀は言葉に詰まった。
「我が小僧に絆されている?ククッ、有り得ん。我が小僧と人間を殺さん理由は、あの力のため。それだけだ。今はまだ奪う方法が見い出せない故、生かしているだけのこと。初めから奪えるものなら、力を奪っている。その場合小僧は用済みだ。生かさず殺している」
「っ!」
「だがまあ……お前が絆されていると勘違いするのも仕方がない。現に我は、この1ヶ月人間を殺していない。小僧の影響だと思うのは必然なことだろう。
しかしなぁ、小僧を殺さん理由は他にもある」
魁蓮は腕を組むと、ふと思い出す。
今までの日向の言動、日向の威勢の良さ。
そして……
互いに誓った約束を。
「あれは、暇つぶしの生きた我の玩具だ。
飽きが来れば、殺す予定のなぁ?」
「「「っ!!!!!!」」」
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