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第64話
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「僕で良ければ、行くよ?」
「「「「「っ!!!!!」」」」」
日向の発言に、その場にいた全員が驚いていた。
「要するに、人間だらけで皆は潜入しづらいから困ってるってことだよな?僕、人間だから適任じゃね?」
人間しか居ない土地に行くならば、同じ人間が行けば問題ない、日向はそう考えていた。
抗えない種としての壁、それを打ち砕く術がたったひとつだけ残されている。
そのことに、魁蓮たちは気づいていなかった。
「ちょ、ちょっと待って!?」
すると、慌てた様子で龍牙が止めに入る。
「流石に無理だって!日向は戦えないし、何かあったらどうすんの!?危ない!」
「それはそうだけど、人間の僕が行った方が怪しまれる可能性は少ないんじゃないか?」
「俺が言いたいのはそんな事じゃっ」
「あと、この場の空気に流されたから行くって言ってる訳じゃないよ?僕も、協力したいだけ」
「えっ?」
日向は龍牙にニコッと微笑むと、魁蓮へと向き直る。
そして、真剣な眼差しで答えた。
「絶対に戻るから、現世に行く許可が欲しい」
「…………」
「正直、もう他人事ではないと思ってんだわ。あの異型妖魔のせいで、現世にいるみんなも困ってると思う。黙って見ているだけなんて嫌だ。手伝わせて欲しい」
異型妖魔は、基本現世に現れる。
あの謎の存在を、仙人が見過ごしているわけが無い。
きっと、妖魔との戦いよりも警戒しているはず。
この情報自体、仙人は掴んでいない可能性があるだろう。
ならば、やっと掴んだ情報を無駄にしないためにも、日向は早めに対処しておきたかった。
その時、龍牙がバンっと机を叩いた。
龍牙は少し焦った様子で、日向に視線を向ける。
「駄目!そんな危険なところに、日向を行かせたくない!日向が行くなら、俺も行く!俺が一緒に行って、日向を守るよ!!!」
「気持ちはありがたいけど、龍牙は妖魔だから、今は狙われる可能性が高いんだろ?危険なのは龍牙も一緒じゃねえか。それに、せっかく持ってきてくれた情報、無駄にしたくないだろ?」
「でもっ……」
「日向様」
その時、司雀が突然口を開いた。
日向が司雀を見ると、司雀は珍しく難しい顔をしている。
「こればかりは、私も龍牙と同意見です。
貴方の安全を考えれば、行かないのが妥当。貴方を、危険な目に合わせたくはありません」
「でも、このままじゃ詰みなんだろ?人間が相手なら、僕しか適任者いないじゃん」
「ですがっ」
「大丈夫だよ、僕も力になりたいだけなんだ」
もちろん、未知の土地など怖いものだ。
でも、このまま何もせずにはいられない。
何度も守られてきた、現世でも黄泉でも。
戦えないからこそ、別の面で役に立ちたい。
その機会が今回ってきた、ただそれだけ。
「主導権はお前にあるから、判断は任せるけど。
今の僕は、お前のもんなんだろ?こういう時くらい、好きに利用してみたらどうなんだよ」
日向は、そう魁蓮に話す。
全てを捧げると誓ったのだ。
何をするにも、彼の許可が必要になってくるだろう。
だがそれを、逆手にとるのも1つの手段。
日向は魁蓮をじっと見つめた。
「魁蓮!絶対に駄目!一歩間違えたら、日向死んじゃうって!」
龍牙は魁蓮に訴える。
だが、魁蓮は反応することなく、ただ日向をじっと見つめていた。
真っ直ぐに向けてくる日向の眼差し。
その奥には覚悟が見え、了承以外の返事は待っていないようだった。
暫く魁蓮が日向を見つめ続けていると、魁蓮は目を細めて笑みを浮かべた。
「……良いだろう」
魁蓮の返事は、是。
まさかの返事に全員が驚いていた。
ずっと反対していた龍牙は納得がいかず、ガタッと大きな音を立てて立ち上がる。
「なんでだよ魁蓮!意味分かってんのかよ!!」
「小僧が言い出したことだ」
「だったら俺も行く!一緒に行く!俺も行かせて!」
「断る」
「なんで!?」
「喧しいぞ。座れ、龍牙」
「っ……」
魁蓮に軽くあしらわれると、龍牙は納得がいかない表情を浮かべたまま、静かに席に座る。
魁蓮は日向を見つめながら、肘を着いた。
「言っておくが、かつての志柳はイカれた下劣の集まりとも言われていた土地だ。
それでも、お前は行くというのか?小僧」
「あったりめぇよ。んな生温い覚悟で言ってねぇわ」
「ククッ……相変わらず、いい面をするなぁ?まあ良い、この件は小僧に任せる。だが……
虎珀も同行することが条件だ」
「「っ!」」
魁蓮の言葉に、日向と虎珀は同時に驚く。
「人間相手、という面では小僧が適任ではあるが、地形や風習など、古くから伝えられている事柄については虎珀ほどの適任はおらんだろう。
内側と外側から、共に探れ」
魁蓮の作戦は、
人間がいる土地の内側は、日向が攻める。
会話をするなり、見たものを記録するなり、内側に踏み込まなければ分からない情報を掴むこと。
そして、土地の外側は虎珀が攻める。
地形や結界などに異常がないかを調べ、且つ日向に何かあれば助太刀に向かうこと。
「とはいえ、馬鹿正直に正面から向かっても怪しまれるだけだ。各々、備えをしておけ。
自ら言い出したことだからなぁ、期待はしておこう」
「ハッ、偉っそうに」
「ククッ……」
魁蓮は薄ら笑みを浮かべると、そのまま席を立ち、何も言わずに食堂から出ていった。
強制的に、会議は終了となった。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「もうっ、なんでぇぇ……」
食堂での会議後。
日向、龍牙、虎珀、忌蛇は庭に来ていた。
庭の草むらに座る日向に、龍牙は半べそをかきながら日向に抱きついている。
どうやら、日向が志柳に行くことをまだ認められないようだった。
「まだ行く日は決まってないぞ?それに虎珀も居るから大丈夫だよ、心配すんなって」
「するよぉぉ!なんで行くって言っちゃったのぉぉ!
魁蓮も魁蓮だよ!心配じゃねえのかっての!」
「あははっ……」
正直、心配なことばかりではある。
ここまで龍牙が止めるのは、日向が戦えないという理由の他に、志柳という場所に問題があるのだろう。
土地の名前を聞いた瞬間、全員の顔色が変わった。
無主地の土地は、何があるのか分からない。
未知の場所に踏み込むなど、怖くないわけがなかった。
「日向」
すると、日向の隣に座っていた忌蛇が、突然口を開いた。
日向が忌蛇に視線を向けると、忌蛇はどこか悲しそうな表情を浮かべている。
「僕も、日向が行くのは反対だよ。本当に心配。自分のことを大切にしてって言ったこと、忘れたの?」
「もちろん、忘れてないよ。命を投げ出そうとかは思ってない。絶対に戻ってくるって魁蓮にも言ったし」
「………………」
「ありがとな、龍牙も忌蛇も。心配してくれて。
でも、僕はひとりじゃないから。大丈夫」
大丈夫、と言っても不安が無くなることはないと分かっている。
それでも1度決めた以上、日向は引き下がれない。
せっかく魁蓮が認めてくれたのだ、逃げることはなるべくしたくはなかった。
その時。
「人間」
ふと、日向たちの様子を見守っていた虎珀が口を開いた。
日向が反応すると、虎珀は真剣な眼差しで答える。
「俺から1つ提案だ。戦う術を身につけないか?」
「「「「「っ!!!!!」」」」」
日向の発言に、その場にいた全員が驚いていた。
「要するに、人間だらけで皆は潜入しづらいから困ってるってことだよな?僕、人間だから適任じゃね?」
人間しか居ない土地に行くならば、同じ人間が行けば問題ない、日向はそう考えていた。
抗えない種としての壁、それを打ち砕く術がたったひとつだけ残されている。
そのことに、魁蓮たちは気づいていなかった。
「ちょ、ちょっと待って!?」
すると、慌てた様子で龍牙が止めに入る。
「流石に無理だって!日向は戦えないし、何かあったらどうすんの!?危ない!」
「それはそうだけど、人間の僕が行った方が怪しまれる可能性は少ないんじゃないか?」
「俺が言いたいのはそんな事じゃっ」
「あと、この場の空気に流されたから行くって言ってる訳じゃないよ?僕も、協力したいだけ」
「えっ?」
日向は龍牙にニコッと微笑むと、魁蓮へと向き直る。
そして、真剣な眼差しで答えた。
「絶対に戻るから、現世に行く許可が欲しい」
「…………」
「正直、もう他人事ではないと思ってんだわ。あの異型妖魔のせいで、現世にいるみんなも困ってると思う。黙って見ているだけなんて嫌だ。手伝わせて欲しい」
異型妖魔は、基本現世に現れる。
あの謎の存在を、仙人が見過ごしているわけが無い。
きっと、妖魔との戦いよりも警戒しているはず。
この情報自体、仙人は掴んでいない可能性があるだろう。
ならば、やっと掴んだ情報を無駄にしないためにも、日向は早めに対処しておきたかった。
その時、龍牙がバンっと机を叩いた。
龍牙は少し焦った様子で、日向に視線を向ける。
「駄目!そんな危険なところに、日向を行かせたくない!日向が行くなら、俺も行く!俺が一緒に行って、日向を守るよ!!!」
「気持ちはありがたいけど、龍牙は妖魔だから、今は狙われる可能性が高いんだろ?危険なのは龍牙も一緒じゃねえか。それに、せっかく持ってきてくれた情報、無駄にしたくないだろ?」
「でもっ……」
「日向様」
その時、司雀が突然口を開いた。
日向が司雀を見ると、司雀は珍しく難しい顔をしている。
「こればかりは、私も龍牙と同意見です。
貴方の安全を考えれば、行かないのが妥当。貴方を、危険な目に合わせたくはありません」
「でも、このままじゃ詰みなんだろ?人間が相手なら、僕しか適任者いないじゃん」
「ですがっ」
「大丈夫だよ、僕も力になりたいだけなんだ」
もちろん、未知の土地など怖いものだ。
でも、このまま何もせずにはいられない。
何度も守られてきた、現世でも黄泉でも。
戦えないからこそ、別の面で役に立ちたい。
その機会が今回ってきた、ただそれだけ。
「主導権はお前にあるから、判断は任せるけど。
今の僕は、お前のもんなんだろ?こういう時くらい、好きに利用してみたらどうなんだよ」
日向は、そう魁蓮に話す。
全てを捧げると誓ったのだ。
何をするにも、彼の許可が必要になってくるだろう。
だがそれを、逆手にとるのも1つの手段。
日向は魁蓮をじっと見つめた。
「魁蓮!絶対に駄目!一歩間違えたら、日向死んじゃうって!」
龍牙は魁蓮に訴える。
だが、魁蓮は反応することなく、ただ日向をじっと見つめていた。
真っ直ぐに向けてくる日向の眼差し。
その奥には覚悟が見え、了承以外の返事は待っていないようだった。
暫く魁蓮が日向を見つめ続けていると、魁蓮は目を細めて笑みを浮かべた。
「……良いだろう」
魁蓮の返事は、是。
まさかの返事に全員が驚いていた。
ずっと反対していた龍牙は納得がいかず、ガタッと大きな音を立てて立ち上がる。
「なんでだよ魁蓮!意味分かってんのかよ!!」
「小僧が言い出したことだ」
「だったら俺も行く!一緒に行く!俺も行かせて!」
「断る」
「なんで!?」
「喧しいぞ。座れ、龍牙」
「っ……」
魁蓮に軽くあしらわれると、龍牙は納得がいかない表情を浮かべたまま、静かに席に座る。
魁蓮は日向を見つめながら、肘を着いた。
「言っておくが、かつての志柳はイカれた下劣の集まりとも言われていた土地だ。
それでも、お前は行くというのか?小僧」
「あったりめぇよ。んな生温い覚悟で言ってねぇわ」
「ククッ……相変わらず、いい面をするなぁ?まあ良い、この件は小僧に任せる。だが……
虎珀も同行することが条件だ」
「「っ!」」
魁蓮の言葉に、日向と虎珀は同時に驚く。
「人間相手、という面では小僧が適任ではあるが、地形や風習など、古くから伝えられている事柄については虎珀ほどの適任はおらんだろう。
内側と外側から、共に探れ」
魁蓮の作戦は、
人間がいる土地の内側は、日向が攻める。
会話をするなり、見たものを記録するなり、内側に踏み込まなければ分からない情報を掴むこと。
そして、土地の外側は虎珀が攻める。
地形や結界などに異常がないかを調べ、且つ日向に何かあれば助太刀に向かうこと。
「とはいえ、馬鹿正直に正面から向かっても怪しまれるだけだ。各々、備えをしておけ。
自ら言い出したことだからなぁ、期待はしておこう」
「ハッ、偉っそうに」
「ククッ……」
魁蓮は薄ら笑みを浮かべると、そのまま席を立ち、何も言わずに食堂から出ていった。
強制的に、会議は終了となった。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
「もうっ、なんでぇぇ……」
食堂での会議後。
日向、龍牙、虎珀、忌蛇は庭に来ていた。
庭の草むらに座る日向に、龍牙は半べそをかきながら日向に抱きついている。
どうやら、日向が志柳に行くことをまだ認められないようだった。
「まだ行く日は決まってないぞ?それに虎珀も居るから大丈夫だよ、心配すんなって」
「するよぉぉ!なんで行くって言っちゃったのぉぉ!
魁蓮も魁蓮だよ!心配じゃねえのかっての!」
「あははっ……」
正直、心配なことばかりではある。
ここまで龍牙が止めるのは、日向が戦えないという理由の他に、志柳という場所に問題があるのだろう。
土地の名前を聞いた瞬間、全員の顔色が変わった。
無主地の土地は、何があるのか分からない。
未知の場所に踏み込むなど、怖くないわけがなかった。
「日向」
すると、日向の隣に座っていた忌蛇が、突然口を開いた。
日向が忌蛇に視線を向けると、忌蛇はどこか悲しそうな表情を浮かべている。
「僕も、日向が行くのは反対だよ。本当に心配。自分のことを大切にしてって言ったこと、忘れたの?」
「もちろん、忘れてないよ。命を投げ出そうとかは思ってない。絶対に戻ってくるって魁蓮にも言ったし」
「………………」
「ありがとな、龍牙も忌蛇も。心配してくれて。
でも、僕はひとりじゃないから。大丈夫」
大丈夫、と言っても不安が無くなることはないと分かっている。
それでも1度決めた以上、日向は引き下がれない。
せっかく魁蓮が認めてくれたのだ、逃げることはなるべくしたくはなかった。
その時。
「人間」
ふと、日向たちの様子を見守っていた虎珀が口を開いた。
日向が反応すると、虎珀は真剣な眼差しで答える。
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