7 / 32
第二章 登場! 正義の味方
第二章 登場! 正義の味方 2
しおりを挟む* 2 *
青年と言うには少し歳を取りすぎた体育教師が、ポロシャツから出た太い腕を見せつけるように校門の前に仁王立ちになっていた。
学校指定の制服を身につけた生徒を監視している様子はない。
鋭い目つきで目を配っているのは、学校前の道を通る人や車のようだった。
居心地の悪さを感じながらその横を通り抜けて、僕はそそくさと教室に向かう。
夏休み明けで浮ついた雰囲気のある教室内は、でも数人で寄り集まって小さな声で話し合ったり、携帯端末を見せ合っていて、夏休みボケのクラスメイトがいるようには見えない。
そんな彼らの口に登る「ステラート」とか「悪の秘密結社」とか言う微かな声に、僕は机に突っ伏すしかなかった。
樹里に乗せられたとは言え、自分でやっちゃったことなんだから、耐えるしかない。
朝のホームルームが始まるまで寝たふりして過ごそうと心に決めて、僕は組んだ腕に顔を埋めた。
「天野君。ちょっといいかしら?」
そんな声に顔を上げてみると、僕の机の脇に女子生徒が立っていた。
かわいらしいと評判でそれ目当てに受験するという女の子がいるくらいの制服を身につけているのは、クラス委員の月宮ひかるさん。
落ちてきた長い黒髪を指でかき上げている彼女の様子に、僕は思わず見とれそうになる。
細いのに輪郭のはっきりした顔立ちに、強い意志を感じる揺るぎない瞳。そのことについて少しでも触れると目尻がつり上がる、……スレンダーな彼女が着ている制服は、かわいらしいと言うのが評判なのに、格好良さを感じるのはなぜだろうか。
授業用の大型の携帯端末を左腕に抱えるようにして持つ月宮さんは、少し不機嫌そうに僕を見ていた。
「今日が締め切りの夏休みの宿題、提出確認ができてないのは天野君だけなんだけど、もう提出できるかしら?」
「あ、うん」
一部を除けば端末から送信すれば提出が完了する夏休みの宿題は、七月の内にやり終えていたのに、提出するのをすっかり忘れていた。
鞄から端末を取り出して、終わってるのを指定された送信先に送信する。
「先生の仕事じゃないの?」
「朝、職員室に行ったら、提出確認を頼まれたのよ」
入試は主席で、入学式のときには生徒代表として挨拶を勤めるほど優秀な月宮さん。勉強だけじゃなく運動もできて、中学の頃には剣道で全国大会に進出したほどの実力があるそうだった。
今でこそ勉強の方を優先するために道場に通ってなくて、剣道部の活動に顔を出してるくらいだけど、他に茶道部にも所属している月宮さんは、次期生徒会長だと噂が立つくらい先生からの信頼が厚い。
決定的に愛想がなくて、人付き合いは苦手で友達と言える人もいないらしいけど、当然のことながら校内では密かに人気が高かった。
そんな彼女に僕が告白したのは、入学して間もない四月末のこと。
真面目で優秀で、でも僕を見つめてくる黒い瞳の奥に何か秘めているものがあるように思えて、興味を惹かれた僕はもっと彼女のことを知るためにつきあってほしいと言った。
結果は惨敗。きっちり振られていた。
その後も僕に続いて十人を超える男子がアタックしたらしいのに、彼女はすべて断っているという噂だった。
――頼まれたからやるなんて、相変わらず真面目だなぁ。
クラス委員もやっている月宮さんは、基本的に学校のこととなるとすごく真面目で、全力だ。
それは彼女の瞳の奥に見え隠れしているものに関わっている気がするけど、一学期の間彼女のことを見ていても、その理由はよくわからなかった。
「確認できたわ」
「そう思えば夏休みはどうだった?」
それだけ言って僕に背を向けようとする月宮さんに声をかけてみる。
少し困ったような表情を浮かべて、乱れてもいない髪をかき上げるような仕草をする月宮さん。
「天野君には関係ないでしょ」
いつもよりちょっとだけ早口に言って、彼女は僕に背を向けて行ってしまった。
学校のこととなると真面目だけど、それ以外のこととなるとちっとも話してくれないのは相変わらずらしい。
つきあうまではなくても、せめて友達からと思っていたりするのに、彼女のガードはいつも通り堅い。
それから、自分の机に向かって歩く彼女の、クセのない黒髪が背中の半ばで揺れるのを見ながら、僕は思う。
――やっぱり、そうだよね。
樹里の黒髪や顔立ちは、月宮さんと似ている。僕よりも少し年上の感じがあるから、月宮さんの姉だと紹介すれば、誰も疑問に思わないほどに。
たぶん樹里は、月宮さんや他に何人か、とくに僕が興味を持った人物を組み合わせた外見をしている。
やってきた担任教師に挨拶をした後、真っ先に話し始めたのはステラートに関する注意。
早めに下校して夜出歩かないようにとか、見かけたらすぐに逃げるといった一般的なことを言う先生の言葉を聞き流しながら、僕はこっそりため息を吐いていた。
――もうこの前みたいな人にあんまり迷惑をかけるようなことはしたくないなぁ。
戦闘員の管制についてはできるようになってきたから、勝手にものを破壊するようなことはない。
でもだからと言って、人にあんまり迷惑をかけるような活動はやりたいと思えなかった。
――じゃあどうすればいいだろう?
樹里にも問われたことだけど、僕はステラートを今後どうしていこうか、方向性が見えないでいた。
*
「よっ」
「うん」
始業式が終わってすぐに部室に来てみると、先客がいた。
主に文化系のクラブが使っている部室棟の部屋はそんなに広くなくて、長机を二つと折りたたみの椅子が四脚、集めてきたものとか印刷した資料を立ててある本棚、学内ネットに接続された据置端末なんかで空きスペースはあんまりない状態になっていた。
それ以外にもいろんなところから集めてきたおもしろそうな道具とか小物、僕たちがこの部室を使い始める前からあった謎の箱とかが雑多にあって、たった四人の部員で使うにも手狭だった。
そんな狭いここが、僕が高校に入ってすぐにつくったクラブ、探検研究部こと探研部の部室。
僕に挨拶をするだけして携帯端末に視線を落としてるのは、渡辺竜騎(りゅうき)。
僕よりちょっと小柄だけど、運動神経抜群で運動部からヘルプに呼ばれることもある彼がそんなにたいした活動もしてない探研部に所属してるのは、小学校に入る前から付き合いのある幼馴染みだからだろう。
「あ、もう来てたんだ」
そんなかわいらしい声とともに開けっ放しの扉から入ってきたのは、篠崎マリエちゃん。
少しクセの強い髪を揺らしながら近づいてきたマリエちゃんは、頭ひとつ分近く違う僕を見上げて微笑む。
「久しぶり、遼平」
「うん、久しぶり。マリエちゃん」
合宿に行っていたのは五日前だから久しぶりというほどの時間は経ってないと思うけど、僕も彼女の挨拶に応じて挨拶を返す。
にっこりと可愛い笑顔を見せてくれた後、マリエちゃんは竜騎の側に寄っていった。
「久しぶり、竜騎。何見てるの?」
「よぉ、マリエっち。まぁいろいろと」
竜騎の端末を覗き込むマリエちゃんとは中学からの付き合いだけど、出会った頃は引っ込み思案で奥手な女の子だった。
いまでもそうしたところは少しあるけど、少なくとも高校に入ってからはクラスに馴染んで友達も多いらしい。
明るく前向きになった性格の変化と同時に、中学の頃と見違えるほど成長したプロポーションは、たまに直視するのが恥ずかしくなるくらいだった。
マリエちゃんと同じクラスだけでなく、いろんな男子からスリーサイズを聞き出すようにお願いされてはいたけど、聞き出す気にはなれなかった。……いろんな意味で。
「英彦(ひでひこ)はもう帰ったの?」
僕と竜騎とマリエちゃんは別々のクラスで、いまはここには来てない最後の部員、安藤英彦はマリエちゃんと同じクラスだったから、竜騎と何か重そうな話をしている彼女に聞いてみる。
探研部は特定の曜日を決めて活動してるクラブじゃなく、何かあるときは活動するときはメールや会ったときに活動することを伝える程度。
始業式の今日は活動すると決めて集まってるわけじゃないから英彦が来なくても不思議じゃない。
「図書館に寄ってから来るって言ってたよ?」
「そっか」
竜騎の端末から顔を上げたマリエちゃんの言葉に応えたときだった。
「後ろにいるよ」
「え?」
いつの間に部室に入ってきたのか、僕のすぐ後ろに英彦が立っていた。
電子版で読めばいいのに、図書館の保護シールで覆われた文庫本に目を落としている彼は、この前まで古典ファンタジーを読んでいたと思うのに、時代を遡ったらしい。いま読んでる本のタイトルは、確か幻想文学に分類される本だったはずだ。
かなりの長身で、運動は普通くらいだけど、噂によると勉強は月宮さんにも並ぶと言う英彦がなんで探研部に入部することにしたのかは、僕はまだ訊いたことがない。
入学式の数日後に行われたクラブ説明会で僕が説明をした直後に入部届けを持ってきた彼は、他にふさわしいクラブがいくらでもありそうなのに、迷うことなく探研部を選んだようだった。
「そうだ。合宿の成果は、もうまとまってる?」
「いや、もうちょっと……」
探検研究部の活動はけっこう曖昧で、適当だったりする。お題目はそれなりのもので提出してあるけど、実際中身は気になったことや興味のあることを調べてまとめるだけのことだ。
本当のところ、主に僕が題材を決めて他の三人を振り回してるような感じになってて、やってることは概ね竜騎やマリエちゃんだけだった中学の頃の遊びと同じ。英彦が加わって、部活になって予算も付いたからもう少し広範囲のことができるようになってるけど、みんなを振り回してることには変わりない。
それでもたぶん、みんな楽しんで僕にくっついてきてくれてるんだと思う。
合宿のときに集めていたのは、南伊豆周辺の神社の由来や歴史に関する情報。その情報だけでもかなりの量で、集めているだけで楽しかったそれをマップにまとめる予定だった。
ステラートを結成することになってからこっち、マップに着手してる余裕はすっかりなくなっていたけど。
「期待して待ってるよ」
文庫本から目を上げた英彦は、目を細めてそう言った。
「そうだ。図書室にいた先生に聞いてきたことことだけど、奥村先生はしばらく休職になるそうだよ」
今度は本から顔を上げることなく、彼は少しずり落ちてきた眼鏡を直しているだけだった。
「え? マジで? 部活どうなるんだ? 顧問いないとやばいだろ?」
「いや。休職になるだけだったら顧問は維持される。合宿なんかはできなくなるけどね」
「でもどうしたんだろう、奥村先生……」
――僕にとっては好都合かな?
非常勤講師の奥村先生があんまり長く休職になるなら次の顧問を考えなくちゃいけないけど、先生の車に頼った合宿や遠出を含んだ活動ができない他は、ステラートのこともやってる僕にとっては都合がいいことかも知れなかった。
「どうしよう? 遼平」
「今度誰かに確認しておくよ」
不安そうな顔をして近づいてきたマリエちゃんに笑みとともに答えると、彼女も笑みを浮かべてくれた。
「そうそう、何かあったと言えば、ステラート! だよなっ」
竜騎の大きな声に、僕は身体が反応するのを止められなかった。
「興味あるね。悪の秘密結社で、首領はコルヴスと名乗ったそうだね。あんな物が出てくるなんて、テレビ番組が現実になったみたいだよ」
さすがに興味があるのか、文庫本を閉じた英彦も竜騎の話題に応じていた。
「でも何か警察でも相手にならなかったんでしょ? 怖いよ」
「ピストル効かなかったんだってな。すげーよな。正義の味方でも出てこないと、相手にならないんじゃないか?」
「どうだろうね。拳銃の弾丸はすべて命中したそうだけど、傷ひとつ与えられなかったみたいだね。それどころか、弾丸が発射された形状のまま落ちていたという話も見たことがあるよ。強力な武器を作戦で運用する軍隊で相手するのは難しいかも知れないね。基本的に軍隊が想定してるのは、人間か、人間の操る武器であって、超人相手となるとどんなことができるか不明だね」
不安そうに表情を曇らせてるマリエちゃんに対して、特撮ヒーロー番組マニアの親の影響もある竜騎は、むしろ楽しそうな顔をしていた。興味深そうな顔をしながらも、英彦だけは普段通りの様子だった。……いや、いつにも増して饒舌だから、もしかしたら興奮してるのかも知れないが。
教室のクラスメイトどころか、学校中で今日の朝から繰り返していた三人の会話に、僕は参加することができなかった。
ヘタすると自分からボロを出して正体を明かしてしまいそうで怖かったから。
「んーでも、いったい何が目的で現れたんだ? ステラートは」
「やっぱり世界征服? 人類抹殺とか? やっぱり何かを壊したりするのがテレビに出てくる悪の秘密結社だと定番じゃない?」
「不明な点だね。十二台の車の損壊、店舗の損害はあったそうだけど、ステラートは積極的には人間を攻撃していないし、特に目的も宣言はしていない。怪我人は三人出たけれど、三人とも逃げるときに転けたりぶつかったりのもので、直接ステラートに攻撃された人はいないんだよね」
どこからそこまでの情報を仕入れているのか不明だけど、冷静な英彦の言葉に、竜騎もマリエちゃんも頭の上にクエスチョンマークが浮かんで良そうなほど首を傾げていた。
「ね、遼平はどう思う?」
「え?」
突然マリエちゃんに声をかけられて、僕は答えに詰まる。
「わ、わからないことが多すぎるよねぇ」
――あんまりハッキリした目的があって活動してるわけじゃないし。
首領の僕自身がステラートのとりあえずの目的も見出せていないんだから、答えがあるはずもなかった。
「どうせなら」
誰に言うでもない口調で、目には見えない汚れでも気になるのか、眼鏡を外して拭き始めた英彦が言う。
「壊すのが目的なら、どうせだったら廃墟でも壊してくれたら良いかもし知れないね。いっぱいあるんだから」
そんな彼の言葉に、僕は思い付くものがあった。
――廃墟の破壊、か。
「遼平、どうかした?」
「うぅん、なんでもない」
見透かすように僕の顔を覗き込んでくるマリエちゃんに、僕はぎこちない笑顔を返すことしかできなかった。
何しろそのとき僕は、思い付いた考えに気を取られつつあったから。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる