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アルフレッドから聞かれた事に答えたソフィリアは、アルフレッドがしばし自分の考えをまとめているのに気が付き、
『ダーリンちゃんは真面目だねぇ~
もっと気楽にしとかないと、ホントにハゲるよぉ?』
と声を出さずに見つめていたら、一瞬今の年齢のまま髪の毛のかなり寂しくなったアルフレッドの画像が頭をよぎり、自分の想像に驚いて飲もうとしていたお茶が気管に入りそうになって、むせてしまった。
アルフレッドが考え事をしてるから邪魔をしないようにと思って、いつもなら口に出してた事を、わざわざ黙ったまま見てるだけにしてたのに、むせた事により普通に声を出すより大きな音をたててしまっていると言う、何とも残念な気遣いになってしまっていた。
案の定、アルフレッドはソフィリアがむせた事に驚いて、慌ててナフキンを手に立ち上がりソフィリアの側に駆け寄ろうとして、立ち上がった時の体勢が悪かったのか自分で自分の足に引っ掛かり転けそうになっていた。
常時であれば、そんなアルフレッドを見ると笑って両手を広げ、身体を受け止めてあげようと言うふりだけはするソフィリアだが、今はお腹の中に児がいる為、もしアルフレッドの踏ん張りが効かず、お腹に激突でもされたら、大変な事になるのは目に見えている。
その為、むせながらも両手を突き出すように前に伸ばしアルフレッドが自分にぶつからないようガードした。
本当は身体を捩って避けたいところだが、お腹を捻ってしまうと中の赤ちゃんに影響が出そうで恐くて出来ないし、もし影響が出るならお腹にアルフレッドが当たるのを避けるためにしてるのに、それは本末転倒になってしまう。
さっ、と動けるなら立ち上がって避ける事も出来たが、5ヶ月に入り外から見てもお腹が膨らんできてるのがわかる状態ではそんなには早く動けなくなって来てるし、その前にむせていたから元から素早く動ける感じではなかったのだ。
ソフィリアのそんなに様子を見てアルフレッドは根性で体勢を立て直した。手でガードをしていた理由はわかっているのだが、でも、何となく少し傷付いた気がした。
理性と理由と感情は同じようにはいかないのだ。
が、いつまでもそうした感情を引きずっていても、コレばかりは仕方のない事なのもわかっているので、何事も無かったかのように手に持ったままになってたナフキンをソフィリアに渡すアルフレッド。
ソフィリアの方はと言うと、そうしたアルフレッドの心の動きもわかるし、とっさの判断で自分がした行動が理由である為、多少気まずく思いながらも、何事も無かったかのように礼を言いながらナフキンを受け取り、口元を押さえるのだった。
アルフレッドはしばらく心配そうにソフィリアを見ていたのが、落ち着きを取り戻したのがわかると、ほうと大きく息をついた。
そして何気なく目を上げると、側を流れる小川の方に何か見えた気がした。
何だろうかとそのまま小川の方を見ていると、それにソフィリアが気付き
「どうしたの?何かあったの?」
と、同じようには小川の方を見た。
「うん、何か見えた気がして、ちょっと見てた」
「私の方は特に何かあるように見えないけど、角度か位置の差かな?」
ソフィリアはそう言いながら立ち上がるとアルフレッドの近くに寄って行き、同じように小川を見るが、やはりソフィリアには気になるような物があるようには見えなかった。
「気のせいか、見間違えかもよ?」
そう言うとソフィリアは好奇心を顔に覗かせながら、アルフレッドが見ていた方に歩き出す。
「私が見てきてあげる」
「いやいやいや、待ってソフィー。行くなら僕の方だからね?
何で君は自分で動いちゃうの?
危険な事とかはないだろうけど、今は君1人の体じゃないんだから、もし本当に何かあったらどうするの?」
「・・・ごめん、大人しくしてる」
戻ってきたソフィリアの手を引いて席までエスコートし、椅子を小川が見える方に向きを変え置き直すと、ソフィリアを座らせる。
「ちゃんとここで待ってる事!いいね?
もし僕に何かあったら、大声でちゃんと護衛たちを呼ぶんだよ?」
何もそんな大袈裟に、と思わないでもなかったが、それでアルフレッドが安心するならと思い、
「わかってるって、ちゃんと大人しくここで待ってるから。
ダーリンちゃんこそ、気を付けてよね」
ソフィリアがそう声をかけるのを背に、アルフレッドは何かが見えたと思われる場所に向かって、多少の緊張と警戒心を持ちながら歩きだした。
─────────────────
なろう様で先行していたのに追い付いたので、これからは毎日の更新ではなくなり、2~3日置きくらいになると思います。
よろしくお願いします。
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