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6月3日
結局、昨日はソフィーと二人して昼過ぎまで寝てしまっていた。
カムズやソフィーの侍女頭であるアリセが何度か起こしに来たみたいだが、全く気が付かなかった。
こんな事は今まで無かったんだが。
やっと気が付いて起きた時の、カムズとアリセの冷ややかな目。
私たち夫婦の従者だからか、二人とも同じような目をして見てくれるし、口うるさいトコも同じだし、似た者同士なあの二人は案外お似合いなのかも知れないな。
あの二人だったら一緒になりたいと申し出があったら許可してもいいが、口うるささが倍増しそうでそれはちょっと、いやかなりの懸案事項になるか。
今でさえ辟易してるのに。
あ~でも、反対に精神的に落ち着いて、心が広く、大きく、寛大になる可能性も棄て切れないか・・・よし、そっちに賭けよう!!
実際、二人が並んでる所は絵になるしな。
まぁ、それはいいとして。
ソフィーとの話し合い、もう本当に早くしないとダメだな。
結局、ほとんど話し合いらしい話は出来なかったし。
取り敢えず、同じ所に引っ掛かりを感じるのが確認出来ただけでも良かったか。
それにしても・・・
カムズの奴、あんなに書類積み上げる事ないだろうに!
一昨日のお茶の時間にしても、その時間を確保するのに前倒しで仕事したんだ。昨日の午前中、半日だけであんなに書類が溜まる訳ないだろう!!
今日にしてもそうだ。いつもの倍はあったんじゃないか?
それも特に急ぐ必要のないものが大半だったし!
ま、まぁ、いつか近い内には処理しないといけないものではあったが・・・
それを何も今日にまとめて持ってくる必要はないじゃないか!
あれは、絶対に嫌がらせだ!!
陰険なやり方がカムズの人間性を表してるようだっ、ホントに!!
ま、それでもやりきれてしまうのが私だから、仕方ないがな!
ともかく、なるべく早くソフィーと話し合いたいが、今それを言ったらカムズの奴が前倒しの書類の中に、嬉々としてなかなか進まない別部署の仕事を混ぜて来そうで、何となく気が進まない。
違う部署のが混じってるのを指摘しても
『他の部署も大変なですから、お手伝い出来るならして差し上げたらいかがですか?
それとも、皇太子ともあろう御方が御自分の能力で問題なく出来る事を、別部署が困ってるがわかってるのにも関わらず、見捨てるとおっしゃりたいのでしょうか?
これはこの国の為になる事であるのは、わかっておいでのはずでございましょう?』
とか、わざとらしくため息を吐きながらとっても言いそうだ。
あああああああ!!!!!
想像したら、本気でそうなりそうな気がしてきた。
別にするのはいいんだ。嫌いじゃないし。
この国を良くしていく事は、私のするべき事でもあるからな。
ただ、やらされてる感がするのが、嫌な感じに思えるだけなんだ。
しないとは言ってないんだ、何もわざわざ、早くに仕事を終わらせたい時に持ってくる必要はないと言いたいだけんだ。
多少余裕がある日もあるんだから、その時でも構わないはずなんだ。
昨日も結局、日が変わって数刻してからやっと解放されたもんだから、着替えもそこそこでベッドに入ると即寝落ちって感じで寝てたし、今日は今日で、朝食こそソフィーと一緒に取れたが、昼食と夕食は執務室で報告を受けながらになったし、もちろんトイレ以外の休憩はさせてくれないし。
本来は適度に休憩を挟みながらの方が効率はいいんだぞ、いやマジで。
あぁぁぁぁぁぁぁ!!
ソフィー成分が不足してるぅぅぅぅぅ!!!
明日は、朝食前にソフィーのトコに行って、ソフィーを補充しないとな!
その為にも、もう寝るとしよう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
盛大に愚痴りながらも、執務に関するやるべき事は終わらせたアルフレッドであったが、結局のところ、ソフィリアとの話はほとんど進んでおらず、これからどの様にしていくのか、アルフォンソにも話をするのか、するとしたらどのタイミング行うのか等、話し合うべき事柄は多数あった。
その為の時間を確保したくても、自分がやらかした為、数日はカムズが許可しないであろう事は容易に想像がついた。
それにより真面目に執務をこなしている内数日が経過してしまい、段々と話すタイミングを逃しつつあった。
もちろん強引に話を持っていく事も可能ではあったが、アルフレッドの中でのタイムリミットがアルフォンソの学友候補を選定するまでであり、それまでは大丈夫であろうとの思いから、色々気にはなりながらも改まってソフィリアとの時間を設けるのは、アルフォンソ関連の社交が色々始まりソフィリアが主体で動かなければならない事も増え、なかなか難しくなった事も重なり、先延ばしにされていた。
そうして約2ヶ月が過ぎたある日、ソフィリアが体調を崩したとかで、2、3日公務から離れていた。
もちろんアルフレッドは心配し、お見舞いに行こうとしたが、ソフィリアの侍女頭から止められ、会うことが出来なかった。
ソフィリアが『今は会いたくない』と言っていると言うのがその理由てあったのだが、アルフレッドにはソフィリアから会いたくないと言われる理由がわからなかった。最近はお互いに忙しく、アルフレッドの癒しであるソフィリアをからかう事もしてなかってし、おやつを取り上げる様な事もしてなかったはずなのに、と。
それからさらに1週間が経ち、やっとソフィリアの機嫌が直ったのかほんの短時間ではあったが、面会する時間を作ってくれる事となった。
指定された時間にソフィリアの私室に訪れると、そこにはソフィリアと侍女たちの他、もう一人先客がいた。
その人はここの王族の侍医を務めている者だった。
そんなにソフィリアの状態が悪いのかと思わずその侍医に詰め寄ろうとすると、当のソフィリアからストップがかかる。
『私が説明するから』と。
そう言いながら、チラリとアルフレッドを見ると赤くなってもじもじとして、なかなか話し出そうとはせず、その状況を見かねた侍医が説明しようとすると、慌てて止めに入り、やっと意を決して小さな消え入りそうな声でこう言った。
「赤ちゃん、出来たみたい」
と。
言われた直後、アルフレッドは何を言われたのかすぐには思考が追い付かず、ボケッと間抜けな顔を晒し、放心していた。そしてソフィリアの『喜んではくれないの?』と言う泣きそうな声で我に返り、ツカツカとソフィリアが横になったままのベッドに近付くと、そのままソフィリアを抱き締め
「良かった。嬉しい。
ありがとうソフィー、君はやっぱり最高の人だ!」
と、声を震わせ、涙声になりながらそう答える。
ソフィリアが
「それじゃ、喜んでくれるの?」
と、再度尋ねると、
「もちろん!!当たり前じゃないか」
と満面の笑みを浮かべる。そしてそのままイチャイチャに突入しそうになった所で、複数の方向から咳払いが聞こえた。その内の1つが侍医であり、関心をそらす事に成功したのがわかるとおもむろに説明を始める。
先日体調を崩したのは、妊娠初期にはよくある事でその時点でまだ確定の判断が難しかった事から、そこから1週間の様子見を経て今日確定の判断が出せた事を、そして、安定期に入るまでしばらくは無理をしないよう、させないようにとの説明がなされ
『もちろん、二人目でございますからわかっておられますよね?』
と言う釘差しも合わせてされるのであった。
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