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(どいつもこいつも……)
男子校、男ばかりの教室でひっそりと溜息をこぼす。
そして改めて思う、自分が性に淡白なタイプで心底良かったと。
同年代の奴等からはエロに興味がないだなんて不健全だと顔を顰められるが、性欲を持て余し犯罪に走るよりかは遥かにマシだと思う。
それに今日まで淡白であって迷惑をかけたこともなければ損をしたこともない。
むしろそれで良かったし助かった。
というのも、俺は人の心の声が聞こえてしまうからだ。
それと性欲が薄くて良かったことがどう結びつくのか。
ただでさえ思春期真っ盛りな男子の心の声もとい妄想などエロまみれもいいとこ。
しかもここは男子校、ただでさえ異性との触れ合いが少ないとなれば言わずもがなである。
これでもし自身の性欲が強ければより盛大に振り回されることとなっただろう。
どうしてこんな摩訶不思議な能力が自身に備わっているのかは未だに謎だ。
家系が特殊なわけでも何かきっかけたる事件があったわけでもない。
この妙な能力は生まれつきで、小さい頃は虚言癖を疑われ気味悪がられたり、カウンセリングを受けさせられたことも何度かあった。
そんな周りの反応を経験していくうち、この能力はイレギュラーなのだと嫌でも理解した。
耳から聞き取った声かどうか確認してから慎重に発言するよう気をつけた。
お陰で昔は不思議な子だったと、小さな黒歴史として周りは片付けてくれた。
十六になった今でも他人の心の声に振り回されることもままあるが、年を取るごとに確実にスルースキルは磨かれている。
人間慣れれば何とかなるものである。
が、たった今例外が発生している。
『何であんな生っ白いんだ。項クッソエロ。キスマークとか映えそう。全身に吸い付いてキスマークだらけにしてー。精液ぶっかけても目立たないかもな。肌白いせいで唇血色良く見えてエロいんだよなぁキスしてぇ……脇とか下の毛とか生えてんのか?流石に生えてるか。でも薄そう。髪と同じで猫っ毛でフワフワだったりして。何で水泳授業取ってねーんだよあいつ。体育の着替えいっつもどっか消えるし。あ~でも俺以外の奴に裸見られるのも嫌だしなぁ……つーか本ばっか見てねーで顔上げろよ。てかこっち向け。俺見ろっての』
といった妄想が自分に向けられているかもしれない場合、スルーできようか。俺はできない。
できないのだが、止めてくださいと言えるわけがない。
今まで通りスルーする他ない。何なんだこれは。
言葉だけだからまだ何とか我慢できる。
(けど、一体どういう……)
初のケースでかなり戸惑っている。
この能力は常時周囲の心の声が勝手に聞こえてくるわけではない。
俺が目で対象を見て初めてそいつの心の声が聞こえる。
目で捉えただけならチラッとぼやき程度に妄想の断片が聞こえるだけだが、俺が聞きたい・覗きたいとハッキリ意識して見るとより鮮明に心の声が聞こえてくる。
だが今、俺がそう思うどころか見てもいないのに強烈な妄想を言葉として飛ばしてくる奴がいる。後ろから。
方向がわかるほどの強い思念もとい妄想とか普通に慄くわ。
俺はずっと本を読んでいて誰も見ていないし項云々言ってたから変態野郎には恐らく背を向けている状態。
もしかして心の声ではないのだろうか。
しかしこんなことを実際口に出していたら教室内が静まり返ってもいいはず。
例え常日頃下ネタが飛び交う教室であってもあのレベルは流石にない。普通にドン引きされる。
でも教室内は平常運転。
(いやでも、これがあいつの平常運転で自分が知らないだけとか……いや、人としてどうなんだそれは)
自分に向けての妄想だとは限らない。
それでも顔を上げるのがとてつもなく怖い。振り向くなんてもってのほかだ。
だから何も聞かなかったことにしてその日はやり過ごした。
男子校、男ばかりの教室でひっそりと溜息をこぼす。
そして改めて思う、自分が性に淡白なタイプで心底良かったと。
同年代の奴等からはエロに興味がないだなんて不健全だと顔を顰められるが、性欲を持て余し犯罪に走るよりかは遥かにマシだと思う。
それに今日まで淡白であって迷惑をかけたこともなければ損をしたこともない。
むしろそれで良かったし助かった。
というのも、俺は人の心の声が聞こえてしまうからだ。
それと性欲が薄くて良かったことがどう結びつくのか。
ただでさえ思春期真っ盛りな男子の心の声もとい妄想などエロまみれもいいとこ。
しかもここは男子校、ただでさえ異性との触れ合いが少ないとなれば言わずもがなである。
これでもし自身の性欲が強ければより盛大に振り回されることとなっただろう。
どうしてこんな摩訶不思議な能力が自身に備わっているのかは未だに謎だ。
家系が特殊なわけでも何かきっかけたる事件があったわけでもない。
この妙な能力は生まれつきで、小さい頃は虚言癖を疑われ気味悪がられたり、カウンセリングを受けさせられたことも何度かあった。
そんな周りの反応を経験していくうち、この能力はイレギュラーなのだと嫌でも理解した。
耳から聞き取った声かどうか確認してから慎重に発言するよう気をつけた。
お陰で昔は不思議な子だったと、小さな黒歴史として周りは片付けてくれた。
十六になった今でも他人の心の声に振り回されることもままあるが、年を取るごとに確実にスルースキルは磨かれている。
人間慣れれば何とかなるものである。
が、たった今例外が発生している。
『何であんな生っ白いんだ。項クッソエロ。キスマークとか映えそう。全身に吸い付いてキスマークだらけにしてー。精液ぶっかけても目立たないかもな。肌白いせいで唇血色良く見えてエロいんだよなぁキスしてぇ……脇とか下の毛とか生えてんのか?流石に生えてるか。でも薄そう。髪と同じで猫っ毛でフワフワだったりして。何で水泳授業取ってねーんだよあいつ。体育の着替えいっつもどっか消えるし。あ~でも俺以外の奴に裸見られるのも嫌だしなぁ……つーか本ばっか見てねーで顔上げろよ。てかこっち向け。俺見ろっての』
といった妄想が自分に向けられているかもしれない場合、スルーできようか。俺はできない。
できないのだが、止めてくださいと言えるわけがない。
今まで通りスルーする他ない。何なんだこれは。
言葉だけだからまだ何とか我慢できる。
(けど、一体どういう……)
初のケースでかなり戸惑っている。
この能力は常時周囲の心の声が勝手に聞こえてくるわけではない。
俺が目で対象を見て初めてそいつの心の声が聞こえる。
目で捉えただけならチラッとぼやき程度に妄想の断片が聞こえるだけだが、俺が聞きたい・覗きたいとハッキリ意識して見るとより鮮明に心の声が聞こえてくる。
だが今、俺がそう思うどころか見てもいないのに強烈な妄想を言葉として飛ばしてくる奴がいる。後ろから。
方向がわかるほどの強い思念もとい妄想とか普通に慄くわ。
俺はずっと本を読んでいて誰も見ていないし項云々言ってたから変態野郎には恐らく背を向けている状態。
もしかして心の声ではないのだろうか。
しかしこんなことを実際口に出していたら教室内が静まり返ってもいいはず。
例え常日頃下ネタが飛び交う教室であってもあのレベルは流石にない。普通にドン引きされる。
でも教室内は平常運転。
(いやでも、これがあいつの平常運転で自分が知らないだけとか……いや、人としてどうなんだそれは)
自分に向けての妄想だとは限らない。
それでも顔を上げるのがとてつもなく怖い。振り向くなんてもってのほかだ。
だから何も聞かなかったことにしてその日はやり過ごした。
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