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そして放課後、シミュレーションをする暇もなくいきなり本番を迎えたわけだが、一緒に来ていた志帆と図書準備室に入ると東を必死に取り押さえている水城に出迎えられた。
「二人共よく来た!いらっしゃい!」
「おい!離せ水城っ!」
「いーやーだーねー!理々子来ちゃったんだから観念しなよ!」
「っクソ!」
「水城ちゃん私達入ってよかった?」
「いいのいいの!これで東の退路は断たれたわけだからね!理々子は扉前の椅子に座ってね」
(……私はラスボスか何かか?)
色々突っ込みたくはあったが、それも面倒かと黙って水城の言う通り扉前に設置してある椅子に座った。
志帆もすぐ近くにある椅子に座る。
私達が椅子に腰を下ろすと、東は観念したのか抵抗を止め私の真正面にある椅子にドカッと座った。
片足を腿にかけ、背もたれに肘を置いて顔を背ける東の機嫌は言うまでもない。
そんな東に水城はやれやれと肩をすくめる。
「これでも最初はすごい乗り気だったんだよ?」
「おい!」
「本当のことでしょ?何で今更逃げようとするのか意味不明なんですけど。東だって理々子とちゃんと話したかったんでしょ?」
「……余計なこと言うんじゃねぇ」
「それはないんじゃないの」
「り、理々子?」
小さな子供のような拗ね方をする東に思わず口を挟んでしまった。
隣りにいる志帆が戸惑い気味に声をかけてきて我に返る。またやってしまった。
出だしからやらかしてしまったかと東を見たがその顔に怒気はなく、何故か怯えているようだった。
東の様子は志帆と水城も予想外であったらしく、何事かと東と私とを交互に見ている。
「…………ごめん」
「「えぇ?!」」
間を置いて東がもらした謝罪に二人は驚き仰け反る。
その動きは素晴らしいほどにシンクロしていた。
恐らくこれからこんな感じで話し合いがなされていくのだろうと思うと溜息がもれる。
溜息が聞こえてしまったらしい東が身を縮こませる様子に二人はまたしても忙しなく私達に視線を走らせる。
「何々なんなの?!こんなしおらしい東ってば初めてなんだけど!キモチワルイ!!」
「うっせぇ水城!」
「私は可愛いと思っちゃったよ……」
「かわっ……?!つかテメェ誰だよ!」
沈黙から一転、水城の発言を切欠に途端に騒がしくなる。
普段を知っている者は当然、不良っぽい見た目からしてこんな大人しい東など誰も想像しないだろう。
私も初めは驚き戸惑った。今は考えることが多すぎてスルーしていることがほとんどだ。
暫くワイワイ騒ぐ三人を眺めていたが、おさまりそうもなかったためパンっと手を一つ叩いた。
「私、話し合いがしたいんだけど、いいかな」
「「……すみませんでした」」
三人の謝罪が綺麗に重なった。東に至っては涙目だ。
話をする前からどっと疲れが押し寄せてきた。
「二人共よく来た!いらっしゃい!」
「おい!離せ水城っ!」
「いーやーだーねー!理々子来ちゃったんだから観念しなよ!」
「っクソ!」
「水城ちゃん私達入ってよかった?」
「いいのいいの!これで東の退路は断たれたわけだからね!理々子は扉前の椅子に座ってね」
(……私はラスボスか何かか?)
色々突っ込みたくはあったが、それも面倒かと黙って水城の言う通り扉前に設置してある椅子に座った。
志帆もすぐ近くにある椅子に座る。
私達が椅子に腰を下ろすと、東は観念したのか抵抗を止め私の真正面にある椅子にドカッと座った。
片足を腿にかけ、背もたれに肘を置いて顔を背ける東の機嫌は言うまでもない。
そんな東に水城はやれやれと肩をすくめる。
「これでも最初はすごい乗り気だったんだよ?」
「おい!」
「本当のことでしょ?何で今更逃げようとするのか意味不明なんですけど。東だって理々子とちゃんと話したかったんでしょ?」
「……余計なこと言うんじゃねぇ」
「それはないんじゃないの」
「り、理々子?」
小さな子供のような拗ね方をする東に思わず口を挟んでしまった。
隣りにいる志帆が戸惑い気味に声をかけてきて我に返る。またやってしまった。
出だしからやらかしてしまったかと東を見たがその顔に怒気はなく、何故か怯えているようだった。
東の様子は志帆と水城も予想外であったらしく、何事かと東と私とを交互に見ている。
「…………ごめん」
「「えぇ?!」」
間を置いて東がもらした謝罪に二人は驚き仰け反る。
その動きは素晴らしいほどにシンクロしていた。
恐らくこれからこんな感じで話し合いがなされていくのだろうと思うと溜息がもれる。
溜息が聞こえてしまったらしい東が身を縮こませる様子に二人はまたしても忙しなく私達に視線を走らせる。
「何々なんなの?!こんなしおらしい東ってば初めてなんだけど!キモチワルイ!!」
「うっせぇ水城!」
「私は可愛いと思っちゃったよ……」
「かわっ……?!つかテメェ誰だよ!」
沈黙から一転、水城の発言を切欠に途端に騒がしくなる。
普段を知っている者は当然、不良っぽい見た目からしてこんな大人しい東など誰も想像しないだろう。
私も初めは驚き戸惑った。今は考えることが多すぎてスルーしていることがほとんどだ。
暫くワイワイ騒ぐ三人を眺めていたが、おさまりそうもなかったためパンっと手を一つ叩いた。
「私、話し合いがしたいんだけど、いいかな」
「「……すみませんでした」」
三人の謝罪が綺麗に重なった。東に至っては涙目だ。
話をする前からどっと疲れが押し寄せてきた。
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