男とか女とか

N

文字の大きさ
上 下
45 / 48

45

しおりを挟む
「何で……」
「っごめん、でも」

 “朝桐が屋上で待ってる”と圭からメールがきた。
そういえば朝桐と連絡先を交換していなかったと思い至り、そのメールを疑いもしなかった。
さっそく朝桐は圭と仲直りをしたのだと、そう思った。
だが屋上にいたのは朝桐ではなく圭だった。

(あ、ヤバい)

 そう感じると同時に踵を返すが、痛いくらいの力で腕を掴まれ引き止められた。
せめてもの抵抗で振り返りはしない。

「ごめん理々子!騙すようなことして……俺、我慢したんだ!でも見てるだけで、俺っ濡れ、」
(あぁ、)

 抵抗など虚しく私は自ら振り返る。
騙した罪悪感からか目に涙を溜め、でも欲に逆らえず上気しているのを全く隠せず切ない表情をした圭が目の前にいる。
約束をした日から一週間経つくらいだが、もう何ヶ月も前のように感じるほどに久しく圭を近くで見た気がしてならない。
酒など飲んだことはないけど、こういうのを酩酊状態だろうかと他人事のように思いながら後手で屋上の扉を閉じた。
実際はしっかりとした足取りなのにふらついてしまいそうだった。

「頼む、もっと近くにっ俺、もっと理々子と一緒にっ……」

 入り口の裏側へと移動する間に紡がれるたどたどしい言葉は私をひたすらに煽る。
慎重かつ穏便に事を進ませたいのに、私の番がそれを許してくれそうにない。

「圭は酷いね」
「あっ」

 両手をそっと首に添えただけで圭が小さく喘ぐ。
首から頬へと手を滑らすと圭がガクッと膝を折り座り込みそうになるが私の両肩を掴んで耐える。
堪らず溢れた圭の涙を指先に感じながらグッと体を近付けるとビクビクと圭が震えて軽く達したようだった。
圭の頭をソッと胸に抱き込み耳元で呟いく。

「圭、大好き」
「え、」

 眼の前に剥き出しになっている圭の項に噛み付いた。
力の加減ができるほどの理性はなかったらしい。
じわりと口内に血の味が広がっていく。

「ぁああっ!あ、あっ!」

 さっきの絶頂など比ではないほど圭が体を震わせる。
今度こそ腰を抜かし座り込んだ圭の肩を押せば簡単に倒れ込んだ。
その上に覆い被されば今までとは違う、でも確実に私を欲情させるニオイに包まれた。

「私だって我慢してたよ。ちゃんと圭の両親に認めてもらってから番って、安定した仕事に就いて圭を養えるようになったら結婚して数年は圭と二人きりの生活を楽しもうって」
「んぁ、あっごめんっごめん、理々子」

 驚くほどスラスラと口から言葉がこぼれ出た。
圭はかつてない絶頂を味わい顔をグシャグシャにしながら、それでも必死に私の言葉に耳を傾けている。

「私は圭を見ないようにしてたのに圭はずっと私を見てたよね」
「ぁ、あっ気付いて……」
「あんな熱のこもった視線向けられたら気付いちゃうよ。番だからかな……最近は圭に見られてる時、匂いも感じるようになっちゃった。ねぇ、私が学校帰ってから部屋に閉じこもってどれだけオナニーに耽ったか知ってる?」
「っ!?」
「それでも治まらないんだよ。射精すれば元に戻るけど、どんどん圭に触れたくなってしょうがなかった。ごめんね、私自分で思ったほど自制心強くなかったみたい」

 意味などないけど懺悔せずにいられない。
だって私は今からここで圭を犯すのだから。
ポタポタと落ちる雫が圭の涙に混じって頬を流れていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?

ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。 しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。 しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...