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魔女と老人
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「おう、やっと出て来たか」
部屋を出た僕らに声を掛けてきたのは、山室さんだった。
彼は壁にもたれかかるようにして僕らを待っていたみたいだ。
「嬢ちゃん、この少年をちょっと借りて行っていいか」
山室さんのどこか真剣な表情に彼女は答える。
「出来るだけ早く返してね」
そういう彼女はどこか愉快そうだったけど、山室さんは約束は出来ねぇなぁとニヤリとした。
山室さんに連れられて、僕らは病院内にある喫煙スペースに来ていた。
山室さんはポケットから煙草の入れ物を取り出すと、そこから一本取り出すと吸い口を下にして箱にトントンッと叩きつける。
何度か箱にトントンッと叩きつけた後咥えて火をつける。
「お前さんが言ってたことだけどな、あれは誰から聞いたんだ?魔女のお嬢ちゃんからか?」
少し真剣な声色で僕に尋ねる。
「彼女では……ないです」
そうなんとか絞り出した。
「お嬢ちゃんじゃなけりゃ、この病院の誰かからか?」
「違います……」
山室さんはそうか、といって咥えている煙草の灰を落とす。
しばらくの沈黙の時間、山室さんの煙草が燃え進む音と煙を吐き出す音だけが通る。
一本目を灰皿に擦りつけ、二本目を取り出して火をつけるタイミングで僕は切り出した。
「電車の中で男の人に言われたんです」
「男?そいつはどんな風貌なんだ?」
僕は少し悩んでから彼の特徴を少し俯きながらも口にした。
「白髪で、髪が長くて、日本人ぽくない感じの……」
僕が順に感じた特徴を口に出すと、山室さんは今火をつけようとしていた煙草をポロっと落とした。
視界に落とした煙草が目に入り、山室さんを見ると彼は目を見開いて口もポカンとして開いていた。
「ま、まさか……あいつなのか……」
「山室さんは知ってるんですか?」
「儂は自身は知らないんだけど、先代から存在と昔話だけは聞いたことがある。そもそも少年は彼女のがどれだけ生きているのかしっているのか?」
山室さんは僕をまっすぐ見て言った。
「見た目的には17歳くらいじゃないんですか?」
山室さんは黙って首を振る。
「少なくとも300年。300年は生きていると聞いとる」
300年……。
彼女は魔女だ、魔法のようなものも見た。
目視したあの現象は確かに魔法としか呼べない代物だった。
「先代の話では白髪のその男は300年前に彼女と共にあったと聞いた――」
山室さんから語られる彼女の昔の話――
300年前にはすでに彼女は存在していた、そして死に場所を探して彷徨っていた。
そんなところにある少年と出会った。
その少年は路上で小汚く、白髪も赤と汚れで茶色くなり、いつ餓死をしてもおかしくない状態だった。
少年の前を通りかかり、彼女がその少年を見ると彼女を鋭い眼光で睨みつけていた。
その眼には絶望よりも、精気の方が勝り意思と誇りだけは決して捨ててないと言わんばかりの眼差しだった。
彼女は少年のその眼を気に入り……、ありったけの水を頭からぶっかけた。
「これでちょっとは綺麗になったでしょ」
突然水をぶっかけたられた少年が。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
少年は少女に飛び掛かったが、そんな少年を厚底のブーツで蹴り飛ばした。
カハッ――
くの字になりながら吹っ飛ばされた。
地面に倒れ落ちる瞬間、何もない地面に突然植物が生えそれがクッションとなった。
「怪我はしなかったでしょ」
ニヤッという効果音が聞こえるような笑顔を彼女が少年に向ける。
少年の腹部にはくっきりと靴底の跡が出来ていた。
ゲホッゲホッ、オエェェェェェェ――
ただただ、少年の口から黄色い酸っぱい匂いのする液体だけが地面に降り注ぐ。
「これでお腹はすっきりしたでしょ、じゃあ食べに行こうか」
彼は何も言わず彼女の後ろをただただ付いていく。
彼女も後ろを振り返らないそれでも二人で進んでいることだけは分かっている風に歩く。
彼はボサボサの白い髪を風にさらわれながら彼女の足跡を追う。
部屋を出た僕らに声を掛けてきたのは、山室さんだった。
彼は壁にもたれかかるようにして僕らを待っていたみたいだ。
「嬢ちゃん、この少年をちょっと借りて行っていいか」
山室さんのどこか真剣な表情に彼女は答える。
「出来るだけ早く返してね」
そういう彼女はどこか愉快そうだったけど、山室さんは約束は出来ねぇなぁとニヤリとした。
山室さんに連れられて、僕らは病院内にある喫煙スペースに来ていた。
山室さんはポケットから煙草の入れ物を取り出すと、そこから一本取り出すと吸い口を下にして箱にトントンッと叩きつける。
何度か箱にトントンッと叩きつけた後咥えて火をつける。
「お前さんが言ってたことだけどな、あれは誰から聞いたんだ?魔女のお嬢ちゃんからか?」
少し真剣な声色で僕に尋ねる。
「彼女では……ないです」
そうなんとか絞り出した。
「お嬢ちゃんじゃなけりゃ、この病院の誰かからか?」
「違います……」
山室さんはそうか、といって咥えている煙草の灰を落とす。
しばらくの沈黙の時間、山室さんの煙草が燃え進む音と煙を吐き出す音だけが通る。
一本目を灰皿に擦りつけ、二本目を取り出して火をつけるタイミングで僕は切り出した。
「電車の中で男の人に言われたんです」
「男?そいつはどんな風貌なんだ?」
僕は少し悩んでから彼の特徴を少し俯きながらも口にした。
「白髪で、髪が長くて、日本人ぽくない感じの……」
僕が順に感じた特徴を口に出すと、山室さんは今火をつけようとしていた煙草をポロっと落とした。
視界に落とした煙草が目に入り、山室さんを見ると彼は目を見開いて口もポカンとして開いていた。
「ま、まさか……あいつなのか……」
「山室さんは知ってるんですか?」
「儂は自身は知らないんだけど、先代から存在と昔話だけは聞いたことがある。そもそも少年は彼女のがどれだけ生きているのかしっているのか?」
山室さんは僕をまっすぐ見て言った。
「見た目的には17歳くらいじゃないんですか?」
山室さんは黙って首を振る。
「少なくとも300年。300年は生きていると聞いとる」
300年……。
彼女は魔女だ、魔法のようなものも見た。
目視したあの現象は確かに魔法としか呼べない代物だった。
「先代の話では白髪のその男は300年前に彼女と共にあったと聞いた――」
山室さんから語られる彼女の昔の話――
300年前にはすでに彼女は存在していた、そして死に場所を探して彷徨っていた。
そんなところにある少年と出会った。
その少年は路上で小汚く、白髪も赤と汚れで茶色くなり、いつ餓死をしてもおかしくない状態だった。
少年の前を通りかかり、彼女がその少年を見ると彼女を鋭い眼光で睨みつけていた。
その眼には絶望よりも、精気の方が勝り意思と誇りだけは決して捨ててないと言わんばかりの眼差しだった。
彼女は少年のその眼を気に入り……、ありったけの水を頭からぶっかけた。
「これでちょっとは綺麗になったでしょ」
突然水をぶっかけたられた少年が。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
少年は少女に飛び掛かったが、そんな少年を厚底のブーツで蹴り飛ばした。
カハッ――
くの字になりながら吹っ飛ばされた。
地面に倒れ落ちる瞬間、何もない地面に突然植物が生えそれがクッションとなった。
「怪我はしなかったでしょ」
ニヤッという効果音が聞こえるような笑顔を彼女が少年に向ける。
少年の腹部にはくっきりと靴底の跡が出来ていた。
ゲホッゲホッ、オエェェェェェェ――
ただただ、少年の口から黄色い酸っぱい匂いのする液体だけが地面に降り注ぐ。
「これでお腹はすっきりしたでしょ、じゃあ食べに行こうか」
彼は何も言わず彼女の後ろをただただ付いていく。
彼女も後ろを振り返らないそれでも二人で進んでいることだけは分かっている風に歩く。
彼はボサボサの白い髪を風にさらわれながら彼女の足跡を追う。
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