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第二章

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「藁園部長がフェアでいてくれる限り俺も嘘はいいませんよ。あと処女はガチなのでホント勘弁してください」

まぁ全てを話すとは言えないが……。

「どこまでならヤラせてくれるんだ? それに見合った対価は出すぜ?」
「表面触るだけなら身体に直接聞くの範囲で良いですよ。ただし扱いたり勃たせたらアウトです。勿論、藁園部長のもです」

まぁ要は興奮すんなさせるな、という所か。
コレで俺の身の安全は保障される。

「仕方ねぇな……。このパターンに持ち込んで逃げられたのは初めてだ」

まぁこんなセクシー大男に弱み握られて押し倒されたら怖くて思考も働かないよな……。
よく逃げた俺。

「勃た無い程度に興奮させるのは? 性感帯ぐらいは教えろよ」
「駄目です。ある程度でしたら口頭でお教えしますが……?」

眉を顰めて睨み付ければため息をつかれた。
いい具合にこっちのペースに持ち込めた。

「しゃーねぇ、じゃあこんくらいは許せよ」
「わっ!」

脇に手を入れられ軽く持ち上げられ俺は藁園部長の膝の上に座らせられた。

「で、どこが好きなんだ? 触んねぇから言ってみろよ」

至近距離でニヤリと笑われる。
あー、この人も自分のペースに持ち込もうとするタイプの人か。めんどくさい。

「フツ―に性器は気持ちいいですよ。あと触られてくすぐったいレベルなら背中でしょうか。首もくすぐったいですね」

耳は保留だ。

「フツ―だな。もうちょいアブノーマルな所ねぇのかよ」
「そこまで自慰に気合入れませんよ」

そういえば性に関しては淡泊なほうなのか……。
この学校の奴等見てると結構中学の頃から乱れてるの多そうだしなぁ……。

「彼女にケツとか開発されなかったのか?」
「手ェつないだりちゅーする程度の付き合いでしたよ……。もしかしてソレで別れられたのでしょうか……」

もうちょい強引な男の方がモテるのかもしれない……。此処のイケメンを見てるとかなり強引なのが多い気がする。美姫弥先輩や榛名先輩はそうでも無いが……。
対照的にジン先輩は強引な美形の代表例だ。

「何だ。処女なだけじゃなくて童貞なのか」

嘲る様に笑われたがまぁ恥ずかしくも何ともない。無責任な下半身馬鹿なんぞには流石になりたくはない。
せめてスるなら自分で責任の取れる年齢になってからが良い。

「そうですよ。責任とれない事は出来るだけしたくないんです」
「そんなモン相手にもあると思うがな。しかし童貞処女か……」
「俺の下半身事情ばっかり気にしますね。こんな平凡に下半身的醜聞やら特殊性癖があったとしてもいったいその情報いつ使うんですか……」

恐らく親衛隊の制裁だよなぁ……。怖い怖い。

「ん? これは俺が純粋に知りたい事だ。まぁ未開発ってのも悪くねぇしな……調教し甲斐がある」

ソレはソレで怖ぇ……。
できるだけこの人にはこれから関わんない様にしたい。

「ま、こんなもんでいいか。本題行くか」

此処までは藁園部長の趣味だったわけか……。

「出来るだけ詳しくお前の交友関係を教えろ」
「クラスメイトとは大体仲が良いです。同学年は他クラスの奴もそこそこ知っていますがこれといった特別な友人はいません。先輩ではクラスメイトの先輩だったフリオケの部長、藤原の関係で生徒会、風紀委員の人とは一度は会いましたね……。後は俺が入っているPK・FR部の部長ぐらいです」

先生は抜かして良いだろう。教科担当を片っ端から上げていくなんてめんどくさすぎる……。

「まぁ大体こっちが把握してる通りだな。榛名は初知だったが……。お前特定の友達いねぇの?」
「割とまんべんなく付き合ってますね、今の所は」
「一人で動けるのは良い事だ。だが、こーいう時に助けに入ってくれる奴がいねぇのは良いのか?」
「俺は自分の意思で此処にいますから下手に邪魔されるよりはいいですし、助けて欲しい時は自分で求められますよ……」

村海先輩のデータを消してもらわないと困る。
万が一あんなモノが流出したらせっかく入ったこの学校から出て行かなくならなくなる。

「ハハッ、流石ジンの後輩だ」

ジン年輩の後輩……。そんなに大それた位置なのか。
俺は純粋にスポーツとしてパルクールをしているだけのに……。

「所で、ジンが情報屋だって事は知ってたのか?」
「さっき冬月先輩に教えられたのが初めてです。上級生に会うと皆先輩のことを知っているので不審には思ってましたが……」

先輩の事だから情報戦で人を貶めたりはしてないだろうけど、性格が性格だから悪用はしてそうだ……。

「部屋に連れ込まれたりとかは?」
「それは趣味の方ですか?」
「あるんだな」

ニヤリと笑われ内心焦る。
生徒会関係は本当にボロを出したくない。美姫弥先輩に迷惑はかけられないし藤原の立場はまだ危ういんだから……。

「……ありますよ。部活の後に勉強を教えてもらうつもりがそのまま寝てしまって泊まってしまったんです。でもやましい事はしてませんよ」

そんなこともあった。
最近のことじゃあ無いだけで嘘はついていない。

「朝帰りねぇ……本当に何も無かったのか? 寝てる間にナニされてるかなんて分からないだろう?」
「ありえません。あの人、故郷に恋人がいるみたいですし……」

俺と浮気なんてありえない。前に携帯で写真を見せてもらったがジン先輩の恋人は太陽みたいに明るく蜂蜜の様に甘いマスクの美青年だった。
俺なんかが代わりなんかになれるもんか。

「ほう、ジンの彼氏の写真を見たのか」
「ジン先輩の情報は喋りませんが、とても綺麗で俺なんか及びもしない位の好青年でした。まぁジン先輩も綺麗な人ですしお似合いですよね」

カッコイイ恋人がいる、とジン先輩は言いふらしてるのでこれは問題ないだろう。むしろジン先輩レベルの美形の恋人が美形でないハズが無いだろう……。

「お前は恋人は欲しくないのか? あんな自慢しまくってる奴の近くにいて何とも思わないわけないだろう?」
「ソレも個人的な興味ですか?」
「お前の情報だろう? 言え」
「……」

腰を支える手に少し力が入り声も低くなる。
怖ぇ……。

「あんなに自慢されたら逆にヒキます。俺が恋人欲しいとか思ったのは彼女にフラれたあと数週間ぐらいです」

ホントあの時は自棄になっていた。行動にこそ移してないが誰でもいいから優しくしてほしいと思うくらいには落ち込んでいた。

「性欲も淡泊、恋人もいらない。ならお前は何が好きなんだ?」
「今は放課後の部活や成績が大事ですしクラス委員のこまごました仕事も楽しいですよ。日常が充実しているので今へたに恋愛とかしたくないです」

今の時間の割り振りが出来なくなったら困るのは俺だ。

「ふーん、因みに好みのタイプは? 男で」
「男で……。それって俺がタチかネコかって話ですか?」

正直恋愛するつもりも無いから考えづらいのだが……。

「ソレもぜひ教えてもらいたいな。世の中には小柄で可愛い奴にゴリゴリ掘られたい変態や筋肉隆々の男を屈服させたいサディストも多いからな」
「そんな特殊なレベルで考えたく無いですけど……。タチかネコかでいったら正直タチが良いです。今の所掘られるのは嫌ですし。しかしまぁ本気で好きになる相手がいたらその時考えますが……。好みのタイプは……うーん、取り敢えず誠実な人って事にしておきます」

ソレで間違いでは無いだろう。
浮気とかされたら立ち直れないし……。まぁ好きになるのと両想いになるのは違う話な気もするが……。

「ハッ、自分が嘘吐きなのは棚に上げて相手には誠実さを求めるのか?」
「俺が付くのは白い嘘だけですよ。そもそも嘘つかなきゃいけないような状況には陥りたくないですね」
「あと、お前にタチは向いてねぇよ。諦めろ」
「大きなお世話です」

少しムッとしたように答えればニヤリと笑われた。
俺だって別に小柄ってワケじゃあないし、向いてないって事は無いと思うのだが……。

「責任だのなんだの言ってる奴が他人の身体……。しかも同性を好き勝手に犯せるワケなけねぇだろ。逆に好き勝手されても泣き寝入りするんだろ? どうせ」
「……そんな状況にはなりたくないですね」

俺がこの学校でそんな事されたら相手によっては権力やら何やらで泣き寝入りせざるを得ない事がほとんどだろう……。

「今、そんな状況じゃねぇの?」
「別料金とは言いましたが体格的にはかないませんよねぇ。後は最初からヤラせるまでデータ消さないとか脅されたらまた話が変わりますし……」
「身の危険の真っただ中にいるっつーのに呑気だな」

髪を梳きつつ顔を近付けられても、まぁ“身体に聞く”の範囲だろうからヘラリと笑った。こういう時の反応も見られているんだろうし……。

「報道部の部長は最初の条件を反故にするんですか? 以前ジン先輩からは情報は信用が大事とか聞いたような気がするんですが」
「俺が信用できると?」
「するしか無いですね。世の中どうしようも無い事はいくらでもあります」

まぁ反故にされて襲われたら全力で抵抗するが……。

「肝が据わってんな」

逆を言えばそれしか持っていない。
もしかしたら何か奥の手があるのかもしれないと思わせるくらいでいた方が良い。ハッタリで相手が撤退してくれたら万々歳だ。

「ありがとうございます」
「抱いてやろうか?」
「丁重にお断りさせていただきます」

即答すればまたニヤリと笑われた。

「可愛げねぇなぁ……」
「そんなものいりませんよ」

そんなことよりも早く帰りたい。いつもなら食堂に行って夕飯を食べる時間を大幅過ぎていてちょっとお腹が減った。

「質問したのは、交友関係と性嗜好……か。後は何を聞いておこうか……」
「聞かれれば大概の事は喋りますよ」
「ふぅん……」

減らず口を利けば楽しげに笑われた。

「まぁいい。これで最後にしてやるよ」
「はぁ……」

あ、やばい。
お腹が鳴りそうだ……。

「別途料金を払って最後までさせてくれんならいくら払えばヤラせてくれんの?」
「……お金じゃ売れない価値があるんですよ」

売れるモノなら現金一括払いで。
憮然とした表情で藁園部長を見ればやはりニヤリと笑われた。
そうして、目の前でデータを消してもらい、何故か記念にと村海先輩とのキス寸前の生写真をもらってから報道の部室から出ると冬月先輩がドアの横に立っていた。

「あ、先輩」
「……どうやら無事だったみたいだな」

少し安心した様な表情だった。
もしかしたらずっと此処で待っていたのだろうか。もう冬も間近で廊下は冷えるというのに人が好い事だ。

「もう遅いから1年の寮まで送っていく」
「大丈夫ですよ」
「元々部屋までおぶって送るつもりだったんだ。そのくらいさせろ」

やっぱ俺はあそこで犯される予定だったのか……。怖ぇ。

「ありがとうございます。1つ聞いて良いですか?」
「何だ」
「報道の部長の間の手から逃げ切った人ってどのくらいいるんですか?」

興味本位で聞くと冬月先輩はニヤリと笑った。

「喜べ。お前が記念すべき1人目だ」

わー。今まで全員食ってきたのかあの人。マジ怖ぇ。
この事で目を付けられて無いといいなぁ……。




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