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第二章:新旧パーティーのクエスト
3、クエスト
しおりを挟む「おわあああ、追いかけてくんな、崩れた手を伸ばすな、俺に微笑みかけるなー!」
必死の形相でゾンビから逃げまどう男、盗賊ライド。
初クエストと意気込んでやってきた村跡で、ライドは必死に逃げ回っていた。その足は今日も今日とて早い。俺の能力分けたからね。
ライドの逃げ足は早いのだが、ゾンビもこれまた負けじと早い。なんなのあのゾンビ、生前は走り屋でもしてたのか?
「頑張れよ、ライド。それが最後のゾンビだ、少なくて良かったな」
「まるで他人事だな!?」
「他人事だ」
俺の能力を分けてる時点で他人事だと思ってないのだが、いかんせんそれを言うわけにもいかない。
なので冷たくあしらえば、「つめてええ!」と返答があった。なんだかんだで逃げれてるから、まあ大丈夫だろう。あんまり素早さ分けてしまうと、俺も危なくなる。なにせ今までと違って俺も前線に出ねばならないのだから。能力のほとんどを仲間に振り分ける、なんて出来ない。
「えーっと、あっちが村長の家……ああ、あの屋根しか残ってないのがそれかな。てことは、あっちが教会か。なんとなくそれっぽい残骸があるな」
俺は学者に渡されたかつての村の配置図を手に、指示のあった場所を探す。なんでもメインは教会跡地で、そこにお宝が眠ってる可能性大だとか。なので探索しやすいようにしておくのが俺の役目。
「うらめしや~」
「裏に飯屋なんてない」
お決まりの言葉で襲い来る幽霊に、ベタな返しと共に聖水かけて撃退。あんまり使わせるなよ、聖水はお高いんだぞ。
ルルティエラがお祈りすれば、ただの水も聖水になる。だが今彼女はそれどころではないので、仕方なく市販の聖水を使っている。
チラリと見れば、幽霊が彼女の前に列をなしていた。
──どうやら成仏の順番待ちらしい。なんとも礼儀正しい幽霊の様に苦笑する。
「もう疲れたから、早く成仏したいってか。ならもっと早くに来てやれば良かったな」
幽霊だっていつまでも幽霊でいたいわけではないのだろう。それより早く成仏して転生したいと思うくらいには、彼らはこの地に縛り付けられていたのか。
この村は何か特産があるわけでもなく、街道から離れてもいるし特筆したものがなかったという。それゆえ魔物の脅威にさらされても、国も誰も助けてくれなかったのだとか。
そして人知れず滅び、その悲しみと苦しみが村人を幽霊やらゾンビやらに変えた。
なんとも悲しい話だ。
「来世は幸せにな」
そう言って、俺はまた幽霊に聖水をかけた。
本来ならルルティエラのお祈りがもっとも効果的で、苦しみなく成仏させてやれる。
だがそれは穏やかな魂で、礼儀正しく順番守れるやつらだ。俺に襲い掛かって来るような乱暴な幽霊は聖水で充分。悲鳴上げて成仏しやがれ。
ちなみに今は普通の水かけてるんだけどな。
事前に買った聖水なんぞ、とっくに切れている。もともとそんなに買ってなかったし。ピーカンデュ売ったくらいで大金になるわけもなく、買える数など微々たるもの。
すぐに尽きた聖水の代わりに、今は飲み水を代用している。ルルティエラは相変わらず幽霊対応に忙しいので、俺が自分で聖水にした。
そう、勇者である俺は、僧侶のように聖水作ることだってできるのだ。僧侶のような清い心もってないんだけどな。勇者って不思議便利。
「まて、ちょっと待て、ちょっと休ませろ、小休止だ」
足の速さは俺が能力分けてどうにかなっても、分けてない体力はどうしようもなく、ゼーハー肩で息をつくライド。
なぜか律儀に立ち止まるゾンビ。
「いやお前、なかなかやるなあ。根性あるぜ」
なんでお前、ゾンビとなれなれしく会話してんのよ。もう口もきけないくせに、なんでゾンビ頷いてんの。なに「お前もな!」みたいに一部骨があらわになってる親指グッと立ててんだよ。
「どうだザクス、すげえだろ。俺は誰とでも仲良くなれるんだ!」
「”誰とでも”の中にゾンビが入ってるのはお前くらいだよ」
どこに自慢要素があるのか知らんが、誇らしげに言われてしまった。おいこら座り込んでゾンビと対話してんじゃねえよ。
まあライドは放っておけばいいかとルルティエラを見れば、こちらも順調に幽霊の数が減っていってる。
ルルティエラの肩にとまって興味津々な顔で幽霊見てるのはミュセル。
妖精の特殊能力なのか、不思議なことにミュセルを肩に乗せてると魔力が減らないとルルティエラは驚いていた。だから大量の幽霊を昇天させるのが可能なのだろう。
ミュセルの存在はバレないようにせねばな、と本気で思う。
まあそれはいいとして。
なんで俺だけ執拗に幽霊が襲ってくるのかしらんが、それももう残り少ない。これなら今日中に終わりそうだな。
幽霊とゾンビを片付けたら、あとは教会跡の瓦礫をある程度整理。依頼主である学者が探索しやすくして終了。
なんとも平穏に順調にクエストが終わりそうな状況に、俺は満足げに頷いた。
* * *
その頃の勇者一行。
「おいディルド、なにチンタラやってやがる! お得意のスピードで翻弄してバッサリ斬るって攻撃はどうしたよ!?」
クエストに出たはいいが、思った以上の魔物の数に苦戦を強いられていた。
だがそれでもいつもなら難なく撃退できるそれらを、思うようにいかない苛立ちからか戦士兼武闘家のモンジーが苛立たし気に叫ぶ。
「うるさい、今日はちょっと調子が悪いんだ! モンジーこそ何してる!? お前がある程度魔物を蹴散らして、残りを俺が狩るのがいつもだろうが!」
「俺も調子悪いんだよ! おいセハ、こいつら魔法でどうにかしろ!」
「こんな狭い洞窟でドッカン使えるわけないでしょ」
「ちっ、使えねえなあ!」
「なんですってえ!?」
「ふ、二人とも、落ち着いてくださいですう」
いつもトラブルなくクエストを終えていた勇者一行。
それはザクスという、真の勇者が裏で手引きしていたから。誰にも気づかれずに、彼らの動きがうまくいくように導いていたからにすぎない。
それに未だ気付かぬ彼ら。
能力が弱まってることを認めたくない彼らは、仲良しこよしのはずの仲間内で衝突を増やしていく。
「ちくしょおお!なんなんだよ、これは!?」
偽物勇者の怒声が洞窟内に響き渡る。
不協和音が強くなる。
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