弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ

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第一章:パーティー追放

13、早々の再会

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「どう思います、ライド? この状況を」
「う~ん、大の大人が人形遊びをする変態?」
「わたくしもそう思っておりました」

 ちょっと待て、誰が変態だ?
 ミュセルという妖精との出会いから数日後。街道に出た俺は、旅を続けていた。とはいえ予定外の旅なので、準備はかなり心もとない。
 なにせ予定ではピーカンデュを売った金で旅の支度を整えるつもりだったのだ。それが隕石騒ぎで全ておじゃん。希望を胸に隕石の宝を開けば、そこには超お宝、レアアイテムの妖精が入っていた。
 だが命を売るわけにいかない。
 結果、俺は無一文で旅を続けるはめに。
 街を逃げるように離れてから数日、いまだ次の街には着かない。当然訪れる空腹。水は川がところどころにあるので困らなかったが、いかんせん空腹はどうしようもない。何か獲物は居ないかと見回しても、生き物一匹いないときてる。鳥すらも。
 あ、やべえなあと、空腹に耐えて木陰で休んでいたら、声がした。
 目を開ければ、俺を覗き込む怪しい影二つよ。

「……なにやってんの、お前ら」
「それはこっちのセリフだ」
「ですわ」

 俺の言葉にムスッとした顔をしたのはライド。盗賊だ。その横で同じく不機嫌そうな顔をしてるのは、僧侶のルルティエラ。
 なぜお前たちがここにいる。俺は確かに走って遠くまで来たというのに。
 足の速さは完全に能力が戻っており、本気で走る俺に追いつける者などいない。そう、確かに俺はライド達をまいたのだ。追いかけようと二人は必死の形相だったが、あっという間に二人の姿はゴマ粒となり消えた。
 だというのに、なぜ今二人がここにいるんだろう。

「ああ、俺もうすぐ死ぬのかあ。ここは天国? 俺死んで天国行ったの? 空腹で死ぬとか悲しぃ~。でもライドは天国行けないよなあ、じゃあ地獄? 俺、なにか悪いことした……あだあ!?」
「俺を勝手に殺すな!」

 天国なら何をしてもいいよな、許されるよなと、ライドのホッペをフニフニムギュムギュ揉んで伸ばして遊んでたら、脳天に痛みが走って思わず手を離した。
 ライドが殴ったのである。なんだよせこいな、ホッペくらい伸ばしたところで減らんだろうに。「俺の心が減る!」ってなんだよ、お前の心のステータス値、低くね?
 などとからかおうとして、やめた。言葉を呑み込む俺の前には、ズモモ……という効果音が似合いそうな顔で、俺を睨むライドが一人。

「お前なあ! なにいきなり逃げてんだよ!?」
「まあ色々と事情がありまして」
「どうせ元仲間の勇者一行に見つかりたくないとか、そんなとこだろ!? 逃げるにしても俺ら置いてくなよな! 追いかけるの大変だったんだぞ!?」
「それはそれは……でもほんと、よく見つけたな」

 まだ痛む頭をさすって、腰に手を当て仁王立ちのライドを見上げれば、勝ち誇ったような笑みを向けられた。なんか頬を引っ張りたくなる顔だよな、それ。

「ふははは! 聞いて驚け、俺の能力はだなあ!」
「ぐ~」
「寝るなあ! 聞け、俺の能力を!」

 話が退屈そうなので寝ようとしたらまた頭殴られた。そんな殴んないでくれる? バカになるじゃないか。

「ライドのようなおバカさんになっては大変ですわね。ライド、それくらいに」

 もう一発殴ろうとして拳を握るライドを制止する影。それは先ほどからずっと無言でライドの横にいた、ルルティエラ。

「よう、ルルティエラ。ご無沙汰」
「ほんの三日ぶりですわ」
「そんなものか。もっと時間が経ったような気がしてたんだけどな。腹減ったあ」
「あたなを追いかける前に旅の準備をしてまいりました。干し肉食べますか?」
「マジ? 食う食う!」

 差し出された何かしらの干し肉を涎が出る勢いで手を伸ばせば、引っ込められた。ちょっとお!

「なに……」
「食べたければ、説明してくださいまし」

 ジトッと細目で睨まれた。なんだよと目で問えば、ルルティエラも目で答える。

「こちら……あなたの肩にいる小さい御方(おかた)は人形、ではありませんわね。妖精と思われますが、一体どこで出会って一緒にいるんですの?」

 なるほど、まず聞きたいのはそこかと俺は傾いた体を立て直した。
 もたれていた背後の木から背を浮かし、肩にとまっていた妖精を手に持つ。意外になんの抵抗もない。
 キョトンとした顔で手の平に座る妖精を、二人の前に差し出し

「こいつは隕石の中にいた妖精で、名はミュセル。以上」

 と説明してやった。

「いやもっとちゃんと説明しろよ」
「うるせえなあ、それ以上の説明しようがないんだよ。ほらルルティエラ、説明したから干し肉よこせ」

 ライドの文句を流してルルティエラに手を伸ばすも、干し肉はやっぱり遠い。なんだよ、もう。

「ごめんなさいは?」
「は?」

 まさかの謝罪要求キタコレ。

「わたくし達を置いて行ったことに対して謝ってくださいませ」
「なんで? 別に俺ら仲間でもなんでもないし、置いてくとかいう表現おかしくねえ?」

 そう言った瞬間だった。ブワッとルルティエラの目に見る見る涙がたまり、そして──

「ひどいですわあ! ザクスはわたくしを捨てるんですのねえぇっ!? うわあああーん!」

 と泣き叫ぶのであった。えええええ!?

「あー泣~かした、泣~かした、ザクスがルルちゃん泣~かした。 い~けないんだ、いけないんだ、先生に言ってやろ♪」
「ライド、今すぐ黙るか俺の拳をその脳天で受け止めるか、どっちか選べ」
「黙ります……あだ!」

 ムカついたので……いや、しゃべったのでゲンコツお見舞いしたった。
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