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後編

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 乗り込んだ馬車がガラガラと音を立てて走り出す。遠ざかる屋敷を見やりながら、私はこれまでの苦労を思い出していた。

 最初の頃は真面目に仕事をしていたラシューだったが、何の仕事だったか忘れたが大きくつまづいた。難題が立ちふさがった時、ラシューがしたことと言えば・・・逃げることだった。

 そんなことをすれば侯爵家がつぶれるかもしれないという考えは彼の頭には無かったらしい。
 そして逃げたラシューは、こともあろうに女に走ったのだ。

 女に走ったラシューは仕事をすることなく、女に溺れる日々。
 そんなことをすれば領民は苦しみ、侯爵家で働く者も路頭に迷う事になるかもしれないというのに。
 だから私が動いた。慣れない仕事を必死でこなした。皆が助けてくれなければ倒れてしまったかもしれない。

 そのせいで発症した病。発症してしまえば治らないそれだけど、おそらく今後は症状が軽くなるだろう。もしかしたら薬も必要なくなるかもしれない。

 侯爵邸は最初、ラシューが逃げた事によって借金が膨らみ、家財は全て売り払ってどうにか返済にあてた。それから今まであった家財は、全て私が働いてどうにか立て直ってから買い直した物だ。侯爵家のお金ではない、私が自分への給料としたお金から買ったのだ。なので当然処分する権利は私にある。

 そんな事も知らない、見ていないラシュー。元旦那様は、家財が全て売り払われた侯爵邸でどう暮らすつもりなのだろうか。慰謝料としてかなりの額を貰った上に、財産分与として侯爵家の財の半分は私が貰い受けた。それでもなんとかなるだろうと思ってるのだろうか、あの馬鹿は。

 実におめでたい。

 今頃ラシューは、女と離縁できることへの祝杯をあげてるのかもしれない。

 だが女と共に屋敷へと戻った時、彼はどんな顔をするのだろう。

 使用人は全て辞めて(辞職届は屋敷内で唯一残ってる彼の執務机に置いてきた)、家財は執務机一つのみ。侯爵家の仕事は正式な手続きの元、別の貴族に引き継いだ。

 彼に残された物は侯爵邸のみ。それだって私への慰謝料支払いの為に売り払う必要があるだろう。支払わなければ勿論正式な手続きの元、差し押さえるのみとなる。

 侯爵家が潰れたとて嘆くのは今は亡きご先祖様のみ。生きてる人間は誰も困らない。彼らを除いては。

「せいぜい困ればいいわ」

 もう見えなくなった屋敷に向けて私は呟くのだった。




「ねーラシュー様、侯爵夫人になるんだから、たくさん宝石とドレス買ってくださいね!」
「ああいいともマシリア。なに大丈夫さ、侯爵家は最近不思議な程に勢いを増してるからね。ドレスや宝石くらい、いくらでも買ってあげるよ」
「うわあ嬉しい!良かったですねえラシュー様、あの女と別れられて」
「ああそうだな。これで侯爵家の財は私が好き勝手できるぞ。まったくあの女は目の上のタンコブだったな!ううむ、今宵の酒は格別うまい!どれもっと飲むか、最高級の酒だぞ、マシリアもお飲み!」
「うっふふ~、それじゃあ遠慮なく・・・」
「「いっただっきまーす!!」」




  終わり
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みんなの感想(2件)

miyabi
2023.05.19 miyabi

一番みたいおバカ二人の顔が見られてない(泣)
作者様、ザマァをぜひ。

解除
諏訪つや子
2022.07.13 諏訪つや子

面白く読ませていただきました。
作者様、おまけでその後の2人側の「ざまぁ」を下さい(笑)

解除

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