3 / 3
後編
しおりを挟む
乗り込んだ馬車がガラガラと音を立てて走り出す。遠ざかる屋敷を見やりながら、私はこれまでの苦労を思い出していた。
最初の頃は真面目に仕事をしていたラシューだったが、何の仕事だったか忘れたが大きくつまづいた。難題が立ちふさがった時、ラシューがしたことと言えば・・・逃げることだった。
そんなことをすれば侯爵家がつぶれるかもしれないという考えは彼の頭には無かったらしい。
そして逃げたラシューは、こともあろうに女に走ったのだ。
女に走ったラシューは仕事をすることなく、女に溺れる日々。
そんなことをすれば領民は苦しみ、侯爵家で働く者も路頭に迷う事になるかもしれないというのに。
だから私が動いた。慣れない仕事を必死でこなした。皆が助けてくれなければ倒れてしまったかもしれない。
そのせいで発症した病。発症してしまえば治らないそれだけど、おそらく今後は症状が軽くなるだろう。もしかしたら薬も必要なくなるかもしれない。
侯爵邸は最初、ラシューが逃げた事によって借金が膨らみ、家財は全て売り払ってどうにか返済にあてた。それから今まであった家財は、全て私が働いてどうにか立て直ってから買い直した物だ。侯爵家のお金ではない、私が自分への給料としたお金から買ったのだ。なので当然処分する権利は私にある。
そんな事も知らない、見ていないラシュー。元旦那様は、家財が全て売り払われた侯爵邸でどう暮らすつもりなのだろうか。慰謝料としてかなりの額を貰った上に、財産分与として侯爵家の財の半分は私が貰い受けた。それでもなんとかなるだろうと思ってるのだろうか、あの馬鹿は。
実におめでたい。
今頃ラシューは、女と離縁できることへの祝杯をあげてるのかもしれない。
だが女と共に屋敷へと戻った時、彼はどんな顔をするのだろう。
使用人は全て辞めて(辞職届は屋敷内で唯一残ってる彼の執務机に置いてきた)、家財は執務机一つのみ。侯爵家の仕事は正式な手続きの元、別の貴族に引き継いだ。
彼に残された物は侯爵邸のみ。それだって私への慰謝料支払いの為に売り払う必要があるだろう。支払わなければ勿論正式な手続きの元、差し押さえるのみとなる。
侯爵家が潰れたとて嘆くのは今は亡きご先祖様のみ。生きてる人間は誰も困らない。彼らを除いては。
「せいぜい困ればいいわ」
もう見えなくなった屋敷に向けて私は呟くのだった。
「ねーラシュー様、侯爵夫人になるんだから、たくさん宝石とドレス買ってくださいね!」
「ああいいともマシリア。なに大丈夫さ、侯爵家は最近不思議な程に勢いを増してるからね。ドレスや宝石くらい、いくらでも買ってあげるよ」
「うわあ嬉しい!良かったですねえラシュー様、あの女と別れられて」
「ああそうだな。これで侯爵家の財は私が好き勝手できるぞ。まったくあの女は目の上のタンコブだったな!ううむ、今宵の酒は格別うまい!どれもっと飲むか、最高級の酒だぞ、マシリアもお飲み!」
「うっふふ~、それじゃあ遠慮なく・・・」
「「いっただっきまーす!!」」
終わり
最初の頃は真面目に仕事をしていたラシューだったが、何の仕事だったか忘れたが大きくつまづいた。難題が立ちふさがった時、ラシューがしたことと言えば・・・逃げることだった。
そんなことをすれば侯爵家がつぶれるかもしれないという考えは彼の頭には無かったらしい。
そして逃げたラシューは、こともあろうに女に走ったのだ。
女に走ったラシューは仕事をすることなく、女に溺れる日々。
そんなことをすれば領民は苦しみ、侯爵家で働く者も路頭に迷う事になるかもしれないというのに。
だから私が動いた。慣れない仕事を必死でこなした。皆が助けてくれなければ倒れてしまったかもしれない。
そのせいで発症した病。発症してしまえば治らないそれだけど、おそらく今後は症状が軽くなるだろう。もしかしたら薬も必要なくなるかもしれない。
侯爵邸は最初、ラシューが逃げた事によって借金が膨らみ、家財は全て売り払ってどうにか返済にあてた。それから今まであった家財は、全て私が働いてどうにか立て直ってから買い直した物だ。侯爵家のお金ではない、私が自分への給料としたお金から買ったのだ。なので当然処分する権利は私にある。
そんな事も知らない、見ていないラシュー。元旦那様は、家財が全て売り払われた侯爵邸でどう暮らすつもりなのだろうか。慰謝料としてかなりの額を貰った上に、財産分与として侯爵家の財の半分は私が貰い受けた。それでもなんとかなるだろうと思ってるのだろうか、あの馬鹿は。
実におめでたい。
今頃ラシューは、女と離縁できることへの祝杯をあげてるのかもしれない。
だが女と共に屋敷へと戻った時、彼はどんな顔をするのだろう。
使用人は全て辞めて(辞職届は屋敷内で唯一残ってる彼の執務机に置いてきた)、家財は執務机一つのみ。侯爵家の仕事は正式な手続きの元、別の貴族に引き継いだ。
彼に残された物は侯爵邸のみ。それだって私への慰謝料支払いの為に売り払う必要があるだろう。支払わなければ勿論正式な手続きの元、差し押さえるのみとなる。
侯爵家が潰れたとて嘆くのは今は亡きご先祖様のみ。生きてる人間は誰も困らない。彼らを除いては。
「せいぜい困ればいいわ」
もう見えなくなった屋敷に向けて私は呟くのだった。
「ねーラシュー様、侯爵夫人になるんだから、たくさん宝石とドレス買ってくださいね!」
「ああいいともマシリア。なに大丈夫さ、侯爵家は最近不思議な程に勢いを増してるからね。ドレスや宝石くらい、いくらでも買ってあげるよ」
「うわあ嬉しい!良かったですねえラシュー様、あの女と別れられて」
「ああそうだな。これで侯爵家の財は私が好き勝手できるぞ。まったくあの女は目の上のタンコブだったな!ううむ、今宵の酒は格別うまい!どれもっと飲むか、最高級の酒だぞ、マシリアもお飲み!」
「うっふふ~、それじゃあ遠慮なく・・・」
「「いっただっきまーす!!」」
終わり
6
お気に入りに追加
47
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
公爵夫人でしたが浮気と托卵をした罰により家畜になりました
白雪の雫
恋愛
私、ストロベリー=ショートは美人四姉妹の一人で侯爵令嬢よ。家は多額の借金を抱えているから貧乏だけど。
借金で苦しんでいる我が家に救いの手を差し伸べてくれたのが、シナモン=ミルクティーなの。
王弟にして公爵。おまけに超大金持ち。そこだけを聞けば超優良物件なんだけど、顔中はニキビと吹き出物だらけ。
おまけにデブでキモイときている。
女だったらそんな男に嫁ぐのは嫌に決まっているじゃない!
でも背に腹は代えられないという理由で、四姉妹の中でも一番の美人である私がミルクティー公爵に嫁ぐ事になったの──・・・。
これはキモデブに嫁いだ令嬢が浮気と托卵をした結果、夫によってざまぁされる話である。
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。
健気な妻は今日でお終い
杉本凪咲
恋愛
伯爵家のホースの家に嫁いだ公爵令嬢モニカ。しかしホースはほとんど家には帰って来ず、愛を囁くことすらしない。加えて、金目当てで結婚したことが判明し、挙句の果てには使用人と不倫までしているようで、愛想を尽かしたモニカは彼に離縁を宣言する。
第三王子の夫は浮気をしています
杉本凪咲
恋愛
最近、夫の帰りが遅い。
結婚して二年が経つが、ろくに話さなくなってしまった。
私を心配した侍女は冗談半分に言う。
「もしかして浮気ですかね?」
これが全ての始まりだった。
私の自慢の旦那様は、本当は私の事など見てくれない最低な男なのです。
coco
恋愛
優しくて美形で頭もよく稼ぎもあって…誰からも羨ましがられる自慢の旦那様。
そんな彼は、本当は私の事など見てくれない最低な男なのです─。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
【完結】あなた、私の代わりに妊娠して、出産して下さい!
春野オカリナ
恋愛
私は、今、絶賛懐妊中だ。
私の嫁ぎ先は、伯爵家で私は子爵家の出なので、玉の輿だった。
ある日、私は聞いてしまった。義父母と夫が相談しているのを…
「今度、生まれてくる子供が女の子なら、妾を作って、跡取りを生んでもらえばどうだろう」
私は、頭に来た。私だって、好きで女の子ばかり生んでいる訳じゃあないのに、三人の娘達だって、全て夫の子供じゃあないか。
切れた私は、義父母と夫に
「そんなに男の子が欲しいのなら、貴方が妊娠して、子供を産めばいいんだわ」
家中に響き渡る声で、怒鳴った時、
《よし、その願い叶えてやろう》
何処からか、謎の声が聞こえて、翌日、夫が私の代わりに妊娠していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
一番みたいおバカ二人の顔が見られてない(泣)
作者様、ザマァをぜひ。
面白く読ませていただきました。
作者様、おまけでその後の2人側の「ざまぁ」を下さい(笑)