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24 再会と出会い
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「ネネ!」
「ナナ!」
夕暮れ時、国立図書館前の前で再会した双子はひしと抱き合った。
オルドは微笑ましそうにかわいい双子を眺めた。そこに、商売用の笑みを貼り付けたリアムが近づく。
「初めまして。あたし、リアム・レンブラントと申します。貴方は、バークレイ家のご子息とお見受けしますが……」
「ん? あぁ、俺はオルド・バークレイ。バークレイ家の次男だ。どこかで会ったことがあったかな」
「いえ、あたしも王立学園に通っているので、一方的に存じ上げているだけです。こちらのかわいいお嬢さん方を保護したのも何かの縁なので、ぜひお見知りおきくださいませ」
ナナとネネは、美貌の攻略対象たちが握手を交わす姿にほぅっと見惚れた。熱い視線は、やっと出会えた今までの推しではなく、自分を助けてくれた方に向けられている。
「よろしく。ところで、二人をどうするかな」
イケメンたちの視線を浴びて、双子は思わず飛び上がった。
「え、えっと……」
「わたしたちだけで帰れます!」
これ以上迷惑はかけまいと声を上げる双子に、男性陣は眉根を寄せた。
「何言ってるの。家に帰るまでに真っ暗になっちゃうから、送るよ」
「あら、バークレイ様。馬車があるので、二人を送り届けるのはあたしにお任せください」
オルドは訝し気にリアムを見遣る。
「……知り合ったばかりだから、申し訳ないけど君を信頼しきってはいないんだよね。女の子たちを男に任せても大丈夫なのか、って」
「確かに、騎士であるバークレイ様と比べるとあたしの信用は薄いでしょうね。しかし、ナナは足を怪我しているから、徒歩よりも馬車の方がいいと思います」
男たちの間に火花が飛び散りかけたところに、気の抜けたような、しかしなぜかよく響く声が割って入る。
「図書館前で騒がないでくださーい」
リアムもオルドも思わず背筋を伸ばす。二人とも、声の主のことは伝聞がほとんどではあるがよく知っていた。
「『白の災害』……」
「……実物をこんな間近で見るのは初めてね」
冷や汗をかく二人に戸惑う双子は、男たちの間を突っ切って近づいてくる白髪の女性を見上げ、目を瞠る。
どこかで見覚えのある女性だ。特徴的な、澱んだ深紅の瞳は全く感情が読めない。
女性は双子を守るように抱き寄せて、ちらりと男たちを一瞥した。
「この子たちはわたしが責任を持って家まで送り届けます。あなた方はさっさとお帰り下さい」
「「……はい」」
二人はもの言いたげな顔をしつつも、あっさりと引き下がる。手を振るイケメンたちを見送ると、双子は困惑しつつ女性を見つめた。
「「あの、あなたは……」」
「ソフィー、という名に聞き覚えはないですか?」
双子ははっとする。サシャがよく口にする名だ。
「お姉ちゃんの」
「先生」
「そうですよぉ。あぁ、わたしがお嬢さんたちを送るのは、わたしがサシャちゃんに虫がつく機会を少しでも減らしたいってだけなので、感謝は要らないです」
ソフィーはなぜか双子を図書館内に招き入れ、地下へと降りていく。
ソフィーについていきながら、二人はこそこそ話をしていた。
「ねぇ、あの人、どこかで見たことない?」
「うん。わたしも思った……ゲームにあんなキャラいたかしら」
記憶の片隅に、確かにいるのだが、はっきりと思い出せない。
「ゲーム」、「キャラ」という言葉に、無表情だったソフィーが、少しだけ驚きの色を見せて振り返った。
がしっと双子は肩を掴まれる。
「あなたたちも、転生者なんですか?」
「「⁉︎」」
なぜそれを、と双子は驚愕する。ソフィーは少し考え込むと、二人から離れて禁書庫の扉を開けた。
立ち尽くす双子に入るよう促す。
「さっさと帰そうと思ってたんですけど、気が変わりました。少し、お話しましょう?」
双子を捉える深紅の双眸は、先ほどとは打って変わって炎のように煌めいていた。
「ナナ!」
夕暮れ時、国立図書館前の前で再会した双子はひしと抱き合った。
オルドは微笑ましそうにかわいい双子を眺めた。そこに、商売用の笑みを貼り付けたリアムが近づく。
「初めまして。あたし、リアム・レンブラントと申します。貴方は、バークレイ家のご子息とお見受けしますが……」
「ん? あぁ、俺はオルド・バークレイ。バークレイ家の次男だ。どこかで会ったことがあったかな」
「いえ、あたしも王立学園に通っているので、一方的に存じ上げているだけです。こちらのかわいいお嬢さん方を保護したのも何かの縁なので、ぜひお見知りおきくださいませ」
ナナとネネは、美貌の攻略対象たちが握手を交わす姿にほぅっと見惚れた。熱い視線は、やっと出会えた今までの推しではなく、自分を助けてくれた方に向けられている。
「よろしく。ところで、二人をどうするかな」
イケメンたちの視線を浴びて、双子は思わず飛び上がった。
「え、えっと……」
「わたしたちだけで帰れます!」
これ以上迷惑はかけまいと声を上げる双子に、男性陣は眉根を寄せた。
「何言ってるの。家に帰るまでに真っ暗になっちゃうから、送るよ」
「あら、バークレイ様。馬車があるので、二人を送り届けるのはあたしにお任せください」
オルドは訝し気にリアムを見遣る。
「……知り合ったばかりだから、申し訳ないけど君を信頼しきってはいないんだよね。女の子たちを男に任せても大丈夫なのか、って」
「確かに、騎士であるバークレイ様と比べるとあたしの信用は薄いでしょうね。しかし、ナナは足を怪我しているから、徒歩よりも馬車の方がいいと思います」
男たちの間に火花が飛び散りかけたところに、気の抜けたような、しかしなぜかよく響く声が割って入る。
「図書館前で騒がないでくださーい」
リアムもオルドも思わず背筋を伸ばす。二人とも、声の主のことは伝聞がほとんどではあるがよく知っていた。
「『白の災害』……」
「……実物をこんな間近で見るのは初めてね」
冷や汗をかく二人に戸惑う双子は、男たちの間を突っ切って近づいてくる白髪の女性を見上げ、目を瞠る。
どこかで見覚えのある女性だ。特徴的な、澱んだ深紅の瞳は全く感情が読めない。
女性は双子を守るように抱き寄せて、ちらりと男たちを一瞥した。
「この子たちはわたしが責任を持って家まで送り届けます。あなた方はさっさとお帰り下さい」
「「……はい」」
二人はもの言いたげな顔をしつつも、あっさりと引き下がる。手を振るイケメンたちを見送ると、双子は困惑しつつ女性を見つめた。
「「あの、あなたは……」」
「ソフィー、という名に聞き覚えはないですか?」
双子ははっとする。サシャがよく口にする名だ。
「お姉ちゃんの」
「先生」
「そうですよぉ。あぁ、わたしがお嬢さんたちを送るのは、わたしがサシャちゃんに虫がつく機会を少しでも減らしたいってだけなので、感謝は要らないです」
ソフィーはなぜか双子を図書館内に招き入れ、地下へと降りていく。
ソフィーについていきながら、二人はこそこそ話をしていた。
「ねぇ、あの人、どこかで見たことない?」
「うん。わたしも思った……ゲームにあんなキャラいたかしら」
記憶の片隅に、確かにいるのだが、はっきりと思い出せない。
「ゲーム」、「キャラ」という言葉に、無表情だったソフィーが、少しだけ驚きの色を見せて振り返った。
がしっと双子は肩を掴まれる。
「あなたたちも、転生者なんですか?」
「「⁉︎」」
なぜそれを、と双子は驚愕する。ソフィーは少し考え込むと、二人から離れて禁書庫の扉を開けた。
立ち尽くす双子に入るよう促す。
「さっさと帰そうと思ってたんですけど、気が変わりました。少し、お話しましょう?」
双子を捉える深紅の双眸は、先ほどとは打って変わって炎のように煌めいていた。
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