わたしは平穏に生きたい庶民です。玉の輿に興味はありません!

まあや

文字の大きさ
上 下
24 / 39

24 再会と出会い

しおりを挟む
「ネネ!」

「ナナ!」

 夕暮れ時、国立図書館前の前で再会した双子はひしと抱き合った。

 オルドは微笑ましそうにかわいい双子を眺めた。そこに、商売用の笑みを貼り付けたリアムが近づく。

「初めまして。あたし、リアム・レンブラントと申します。貴方は、バークレイ家のご子息とお見受けしますが……」

「ん? あぁ、俺はオルド・バークレイ。バークレイ家の次男だ。どこかで会ったことがあったかな」

「いえ、あたしも王立学園に通っているので、一方的に存じ上げているだけです。こちらのかわいいお嬢さん方を保護したのも何かの縁なので、ぜひお見知りおきくださいませ」

 ナナとネネは、美貌の攻略対象たちが握手を交わす姿にほぅっと見惚れた。熱い視線は、やっと出会えた今までの推しではなく、自分を助けてくれた方に向けられている。

「よろしく。ところで、二人をどうするかな」

 イケメンたちの視線を浴びて、双子は思わず飛び上がった。

「え、えっと……」

「わたしたちだけで帰れます!」

 これ以上迷惑はかけまいと声を上げる双子に、男性陣は眉根を寄せた。

「何言ってるの。家に帰るまでに真っ暗になっちゃうから、送るよ」

「あら、バークレイ様。馬車があるので、二人を送り届けるのはあたしにお任せください」

 オルドは訝し気にリアムを見遣る。

「……知り合ったばかりだから、申し訳ないけど君を信頼しきってはいないんだよね。女の子たちを男に任せても大丈夫なのか、って」

「確かに、騎士であるバークレイ様と比べるとあたしの信用は薄いでしょうね。しかし、ナナは足を怪我しているから、徒歩よりも馬車の方がいいと思います」

 男たちの間に火花が飛び散りかけたところに、気の抜けたような、しかしなぜかよく響く声が割って入る。

「図書館前で騒がないでくださーい」

 リアムもオルドも思わず背筋を伸ばす。二人とも、声の主のことは伝聞がほとんどではあるがよく知っていた。

「『白の災害』……」

「……実物をこんな間近で見るのは初めてね」

 冷や汗をかく二人に戸惑う双子は、男たちの間を突っ切って近づいてくる白髪の女性を見上げ、目を瞠る。

 どこかで見覚えのある女性だ。特徴的な、澱んだ深紅の瞳は全く感情が読めない。

 女性は双子を守るように抱き寄せて、ちらりと男たちを一瞥した。

「この子たちはわたしが責任を持って家まで送り届けます。あなた方はさっさとお帰り下さい」

「「……はい」」

 二人はもの言いたげな顔をしつつも、あっさりと引き下がる。手を振るイケメンたちを見送ると、双子は困惑しつつ女性を見つめた。

「「あの、あなたは……」」

「ソフィー、という名に聞き覚えはないですか?」

 双子ははっとする。サシャがよく口にする名だ。

「お姉ちゃんの」

「先生」

「そうですよぉ。あぁ、わたしがお嬢さんたちを送るのは、わたしがサシャちゃんに虫がつく機会を少しでも減らしたいってだけなので、感謝は要らないです」

 ソフィーはなぜか双子を図書館内に招き入れ、地下へと降りていく。

 ソフィーについていきながら、二人はこそこそ話をしていた。

「ねぇ、あの人、どこかで見たことない?」

「うん。わたしも思った……ゲームにあんなキャラいたかしら」

 記憶の片隅に、確かにいるのだが、はっきりと思い出せない。

 「ゲーム」、「キャラ」という言葉に、無表情だったソフィーが、少しだけ驚きの色を見せて振り返った。

 がしっと双子は肩を掴まれる。

「あなたたち、転生者なんですか?」

「「⁉︎」」

 なぜそれを、と双子は驚愕する。ソフィーは少し考え込むと、二人から離れて禁書庫の扉を開けた。

 立ち尽くす双子に入るよう促す。

「さっさと帰そうと思ってたんですけど、気が変わりました。少し、お話しましょう?」

 双子を捉える深紅の双眸は、先ほどとは打って変わって炎のように煌めいていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

処理中です...