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7 捕縛
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店長に絡まれ、気力を削られたわたしはよたよたと家を目指す。先の騒ぎのせいで遠巻きにされているが、走る元気もない。ようやくたどり着いた商店街の端の方で、思いがけない光景を目にすることとなった。
立ち話をしている、体操服を着た女子高生と、ジャージ姿のおじさ――いや、男子高校生。
(あれは……わたし⁉︎ 何でここに⁉︎ 横にいるのは……合田先輩?)
家で客の相手をさせられていると思っていたわたしの体が、すぐそこにある。新山さんは無事に優子さんたちの魔の手から逃げ出せたということだろうか。
最悪の事態は免れたのか。ほっと胸を撫でおろす。
そうだとしても、なぜ横に合田先輩がいるのか。どういう組み合わせだ? と首をひねっていると。
「立ち話もなんですし、行きましょうか」
「わたし」は合田先輩を連れて、すぐ傍の激辛ラーメン屋に入ろうとしている。
仲睦まじそうな二人の様子に、天啓がひらめいた。
(もしかして、新山さんは合田先輩みたいなガッチリした男性が恋愛対象なのでは……)
昨日、新山さんは合田先輩をじっと見ていた。てっきり怪我の確認だと思っていたが、実はそれは一目惚れで、合田先輩に見惚れていたのではないか。部屋に女性誌があったのは女性のようになりたいという願望の表れだとすると。
(わたしの身体で合田先輩と付き合おうとしている⁉︎)
非常に困る。新山さんを応援したいのはやまやまだが、ありのままの自分で頑張ってもらいたい。
「新山さん! 思いとどまってください!」
叫ぶわたしに、合田先輩が飛び上がり、「わたし」はどこか悟ったような顔をしていた。
昼過ぎ、鬼は来客に対応していた。
「では、捕まえることはできたのだな?」
「ええ。未遂なので立件は難しいかと思いましたが、調べると他の罪もぼろぼろ出てきたので。通報、感謝します」
びしっと敬礼するのは、目元が凛々しい警官だ。ポニーテールをなびかせて署を闊歩する姿に、男女問わずほぅっと見惚れるという宝塚的存在だ。
妖関係のことにも造詣が深く、鬼も頼りにしていた。
「急な頼みにも関わらずしっかり任務を果たしてくれたから、お礼を言うのはこちらの方だ。いつもありがとうな」
「いえ……にしても、あのような悪意に満ちた空間で、多感な年頃の女の子がよく健やかに生き延びられたなと思います」
警官は自分が見たものを思い出し、痛ましげな顔をする。しかしそれも一瞬のことで、すぐにきりっとした表情を作る。
「して、例の少女はどうするおつもりで? 鬼さまのことだから、何かお考えがあるのでしょう?」
鬼は顎を撫で、思案する。
「そうだな……一つ、考えたのは」
そこに、どたばたと騒がしい足音が聞こえた。
「鬼さま!」
「例の妖どもを捕まえてきました! あっ、佳織さん、こんにちは」
入ってきたのは用事を言いつけた双子たちだ。警官――佳織の姿に気づき、二人とも頬を赤らめる。佳織もその声に応え、小さく手を挙げた。
「おお、ご苦労だったな」
鬼の労いに、双子も顔を輝かせる。
「はい!」
「こちら、ご確認ください!」
あちこち擦り傷だらけで、服も薄汚れた双子たちが差し出したのは、頭に札を貼られ、縄に縛られてもなお暴れ続ける三匹の小鬼だった。
立ち話をしている、体操服を着た女子高生と、ジャージ姿のおじさ――いや、男子高校生。
(あれは……わたし⁉︎ 何でここに⁉︎ 横にいるのは……合田先輩?)
家で客の相手をさせられていると思っていたわたしの体が、すぐそこにある。新山さんは無事に優子さんたちの魔の手から逃げ出せたということだろうか。
最悪の事態は免れたのか。ほっと胸を撫でおろす。
そうだとしても、なぜ横に合田先輩がいるのか。どういう組み合わせだ? と首をひねっていると。
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仲睦まじそうな二人の様子に、天啓がひらめいた。
(もしかして、新山さんは合田先輩みたいなガッチリした男性が恋愛対象なのでは……)
昨日、新山さんは合田先輩をじっと見ていた。てっきり怪我の確認だと思っていたが、実はそれは一目惚れで、合田先輩に見惚れていたのではないか。部屋に女性誌があったのは女性のようになりたいという願望の表れだとすると。
(わたしの身体で合田先輩と付き合おうとしている⁉︎)
非常に困る。新山さんを応援したいのはやまやまだが、ありのままの自分で頑張ってもらいたい。
「新山さん! 思いとどまってください!」
叫ぶわたしに、合田先輩が飛び上がり、「わたし」はどこか悟ったような顔をしていた。
昼過ぎ、鬼は来客に対応していた。
「では、捕まえることはできたのだな?」
「ええ。未遂なので立件は難しいかと思いましたが、調べると他の罪もぼろぼろ出てきたので。通報、感謝します」
びしっと敬礼するのは、目元が凛々しい警官だ。ポニーテールをなびかせて署を闊歩する姿に、男女問わずほぅっと見惚れるという宝塚的存在だ。
妖関係のことにも造詣が深く、鬼も頼りにしていた。
「急な頼みにも関わらずしっかり任務を果たしてくれたから、お礼を言うのはこちらの方だ。いつもありがとうな」
「いえ……にしても、あのような悪意に満ちた空間で、多感な年頃の女の子がよく健やかに生き延びられたなと思います」
警官は自分が見たものを思い出し、痛ましげな顔をする。しかしそれも一瞬のことで、すぐにきりっとした表情を作る。
「して、例の少女はどうするおつもりで? 鬼さまのことだから、何かお考えがあるのでしょう?」
鬼は顎を撫で、思案する。
「そうだな……一つ、考えたのは」
そこに、どたばたと騒がしい足音が聞こえた。
「鬼さま!」
「例の妖どもを捕まえてきました! あっ、佳織さん、こんにちは」
入ってきたのは用事を言いつけた双子たちだ。警官――佳織の姿に気づき、二人とも頬を赤らめる。佳織もその声に応え、小さく手を挙げた。
「おお、ご苦労だったな」
鬼の労いに、双子も顔を輝かせる。
「はい!」
「こちら、ご確認ください!」
あちこち擦り傷だらけで、服も薄汚れた双子たちが差し出したのは、頭に札を貼られ、縄に縛られてもなお暴れ続ける三匹の小鬼だった。
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