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第三章
75.ニャンタと騎士団長の密会
しおりを挟む俺は必死に門まで走っていく。
息が苦しくなるが、街の人からの視線が気になってしまう。
なぜか街を歩く人達と目が合うとすぐに逸らされてしまう。
しかも、みんな顔が赤くなっていくのだ。
最近やっと街の人達に馴染めたと思っていたが、そう思っていたのは俺だけかもしれない。
「はぁ……はぁ……、ここにニャンタはいますか?」
「んっ? ああ、トモヤさ……」
「ああ、すみません」
そして門番にも目を合わせてもらえない。
チラチラと俺を見ているのに気づいている。
ただ、視線を逸らしたタイミングでこっちを見ているのは何か理由があるのだろうか。
異世界の人間関係は中々複雑のようだ。
「いえ……ニャンタさんは騎士団長の部屋にいると思いますよ」
「ありがとうございます」
俺は遅い足で騎士団長の部屋に向かう。
やはり体力がないと、何をするのも大変だな。
「トモヤさん色気が溢れ出ていたな……おい、お前どこにいくんだ」
「ちょっとトイレに行ってくる!」
「いや、俺もこれをどうにかしないと仕事が……」
「お前のは小さいからバレないだろ! 俺のはデカイからこれだと俺が捕まるだろ!」
「ああ……そうか……。デカイやつはそれなりに苦労があるんだな」
俺がいなくなった瞬間、門前ではしばらく騒がしくなっていた。
騎士団長の部屋の場所は通路の一番奥にあるから覚えている。
人通りも少なくて、中の音や外の音すら聞こえづらいところだった気がする。
扉の前に来た俺は中の様子を確認するために、ドアに耳を当てて澄ませる。
「おい、違うだろ!」
「うっ……もう無理だ」
「何が無理なんだ? これぐらい余裕だろ?」
「こんなの入るわけないだろ」
部屋からニャンタとドM野郎の声が聞こえてきた。
まさか二人がお仕置きをする仲だとは思いもしなかった。
二人とも声は大きい方だが、さすがに行為中の声が外まで聞こえてくるのは気づいているのだろうか。
「はぁ……はぁ……」
「ほらほらもっと欲しいだろ」
「いや、これ以上は無理だ」
これは確実にドM野郎がニャンタをお仕置きしているよな。
それにしてもニャンタが受けをしているとはな……。
リッパーの時は必死に誤魔化していたが、ニャンタが攻めていたはずだ。
あの時はカレンの影響もあって、俺も記憶が曖昧だしな。
「もう……無理……」
「ほら、くたばるな!」
無理って言ってるのに強要するとは、ドM野郎はドS野郎を通り越してレイプ野郎だ。
俺は扉に手をかけておもいっきり開けた。
「ニャンタにはリッパーがいるし、お前がやっているのはレイプ……じゃない……のか?」
そこには腹筋をしながら本を読んでいるニャンタと足を押さえているドM野郎がいた。
「ん? なぜトモヤがここにいるんだ?」
どうやら俺の勘違いだったらしい。
「誰がトモヤに教えたんだよ。内緒にして……ってどんな格好で来てるんだよ!」
ニャンタは足元にいた騎士団長を蹴り飛ばすと急いで駆け寄ってきた。
「全くトモヤは無防備なんだよ!」
ニャンタは自分の着ていた服を脱ぎ出した。
あれ?
これは俺が何かされるパターンか?
「これを着ろ!」
「えっ? なんで?」
あの事件があってから妙にニャンタが彼氏のように優しく接してくる気もするが……。
「お前のちく……服が透けているんだよ」
俺は視線を下に向けると、汗で白いシャツが透けていた。
だから、ここに来るまでみんな目を背けていたのか。
「団長!」
廊下の方から大きな音が聞こえてくる。
だが、俺の頭の中は着替えることで頭いっぱいだ。
「ああ、着替えればいいのね」
俺は自分のシャツを脱ぐとそのままニャンタに渡す。
「小さいと思うけど代わりにこれあげる」
「うぇ……あっ……いや……」
「何かすごい音が聞こえたけど大丈夫でしたか?」
背後に視線を感じて振り返るが、誰もいないぞ?
確かに今誰か話していた気がするが、気のせいだろうか。
俺はニャンタから受け取った服をそのまま着た。
「ははは、ニャンタの匂いでいっぱいだね」
どこかニャンタに包まれているようだ。
久しぶりに手がうずうずとしてくる。
久しぶりにもふもふしたくなってきたな。
「トッ……トモヤ……」
「ニャンタどうしたの?」
目の前にいるニャンタはなぜか震えていた。
俺がもふもふしたいのがバレてしまったのだろうか。
「団長、すみません。用事を思い出しました」
「私も少しトイレに行ってこようと思います。失礼します!」
再び声がすると思ったら、急いで走っている門番達がいた。
さっきまでいなかったのに、どうやって隠れていたのだろうか。
まるで忍者のようだ。
「お前は無自覚過ぎるんだよ! 俺もトイレに行ってくる」
ニャンタも門番達を追いかけるように走って行く。
手を股間の辺りで組んでいたのは、おしっこをずっと我慢していたのだろう。
「そんなにおしっこを我慢していたんだな……」
そこまで我慢して筋トレをしていたのか。
やる気があるのは良いが、生理現象を我慢するのは良くないからな。
「はぁー」
ドM野郎は俺と目が合うとため息をついていた。
「さすがにもふもふしないからな?」
せっかくもふもふできる機会だったが、俺も我慢することにした。
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