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第二章 イケメンスローライフ?
57.焼肉屋は大忙しです
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焼肉屋がオープンしてから、俺は恐ろしいほど充実した日々を過ごしている。
誰もこんなことになるとは予測していなかっただろう。
「いらっしゃいませ! もう少しお待ちくださいね」
客が来店してくれるのは嬉しいことだが、明らかに客の人数がおかしい。
毎日行列が出来ており、ここまで繁盛するとは思わなかった。
男性の割合が多い世界だからか、食欲が旺盛な人が多い。
「トモヤくん手伝おうか?」
「助かります」
そんな俺を常連の方々はいつも手伝ってくれる。
いつのまにかそれがこのお店の決まりになりつつある。
「おい、俺が手伝う予定だったんだぞ!」
「お前はこの後仕事があるだろう!」
「ああ、くそ!」
若干誰が手伝うか喧嘩になっているが、獣人と人間が入り混じっているこの空間が平和的で居心地が良い。
「また来たぞ!」
声をかけてきたのは、女神の祝福が大好きなドM野郎の騎士団長だ。
あれからは特に求められることはなく、普段からこのお店を利用してもらってる。
「今日はお連れ様がいるんですね」
「あっ……そそそそうなんだ」
どきまぎした姿を見て、直感的に触れてはいけないと感じた。
きっと愛人の密会としてここに来たのだろう。
そこまで姿を隠したいなら、個室があるお店にするべきだ。
よほど焼肉が気に入っているのだろう。
「席はこちらでお願いします」
席を案内すると、愛人はその場で固まって動かなくなっていた。
「あのー、大丈夫ですか?」
「ああ」
体調が悪いかと思ったが、特に問題はないそうだ。
それにしてもぶっきらぼうな感じだな。
やっぱりドM野郎が愛人にするぐらいだ。
きっと冷たくされるのが好きなんだろう。
「注文は……いつも通りので大丈夫ですか?」
「ととととりあえず、オススメをください」
話しづらそうに答えていた。
いつも通りだと若干辛めの味付けが多いから、相手のことを思ってオススメにしたのだろう。
普通に頼めばいいのに、いつも頼んでいるやつを聞かれたくないのかな?
まぁ、メニュー名がなんとも言えないからな。
"刺激たっぷり奥までガツンと肉"とか"#私を虐めて激辛スープ"とか、変わったメニュー名が多い。
おじさん達にこれなら売れると言われてつけたメニューだ。
ちなみに奥までガツンと肉に関しては、ただの異世界版ソーセージのことだ。
単純に長いから食べるときに、喉の奥まで届くらしい。
たまに客から食べて欲しいと、言われることもある訳の分からない人気商品になった。
さすがお店の経営をしていただけるとある。
そんなメニュー名を普通は考えないからな。
だが、これもオススメの中に入っているけど……問題ないか。
「すぐにお待ちしますね」
注文を受けると俺は他のテーブルにもお肉を運ぶ。
今日も相変わらず忙しいからな。
「トモヤくんはこの世とも思えないな」
「あの一生懸命さがさらに男心をくすぐるよ」
こんな言葉にはもう慣れた。
今まで言われたことない言葉だから、嘘つきの客としか認識していないからな。
「トモヤくん、これを騎士団長のところにお願いします」
チラッと見ると、二人は話さずにずっとこっちを見ている。
何か理由があるのだろうか。
俺は渡されたメニューに息を呑む。
「お待たせしました。こちら当店オススメの刺激たっぷり奥までガツンと肉、私を虐めて激辛スープです」
「ぐふっ!?」
テーブルに商品を置くと、愛人は飲んでいた飲み物を吹き出しかけていた。
商品名が少し卑猥だもんな。
エッチなお店と間違えても仕方ない。
だが、ここではそういうのはお断りだからな。
「あああ、ありがとう」
騎士団長は額から少し汗をかいていた。
そんなに暑いのかな?
空調も魔道具だから、誰かに温度の調整をしてもらわないといけないな。
「トモヤくんー! こっちもお願いします」
「はい、今行きます」
俺は頭を下げてから、また商品を取りに戻る。
「これも同じテーブルなのでお願いします」
俺は商品をお盆に乗せて、また騎士団長のテーブルに向かった。
「こちらが焼肉セットです」
畑の肉をテーブルの上に置いたら、愛人はマジマジとお肉を見ていた。
「焼肉か……」
雰囲気から少し楽しそうに肉を眺めていた。
そこまで焼肉が気になっていたのだろう。
その後も二人は黙々と肉を食べていた。
騎士団長は普段より食が進んでいなかったが、どこか体調が悪いのだろう。
一方、愛人も少し震えていた。
二人して食あたりにあったのかと思ったが、特に心配はいらないらしい。
食べ終わると席を立ち上がり、そさくさと帰る準備をしていた。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
「ああ、美味しかったよ」
二人に頭を下げると、どこかで聞いた声と懐かしさに心の底から何か溢れ出しそうになった。
顔をあげるが二人は既にお店を後にしていた。
あの気持ちはなんだろうか。
懐かしさと寂しさが入り混じった感覚に、俺は不思議に思った。
まるでここにはいないはずのあの人に会った気分だ。
誰もこんなことになるとは予測していなかっただろう。
「いらっしゃいませ! もう少しお待ちくださいね」
客が来店してくれるのは嬉しいことだが、明らかに客の人数がおかしい。
毎日行列が出来ており、ここまで繁盛するとは思わなかった。
男性の割合が多い世界だからか、食欲が旺盛な人が多い。
「トモヤくん手伝おうか?」
「助かります」
そんな俺を常連の方々はいつも手伝ってくれる。
いつのまにかそれがこのお店の決まりになりつつある。
「おい、俺が手伝う予定だったんだぞ!」
「お前はこの後仕事があるだろう!」
「ああ、くそ!」
若干誰が手伝うか喧嘩になっているが、獣人と人間が入り混じっているこの空間が平和的で居心地が良い。
「また来たぞ!」
声をかけてきたのは、女神の祝福が大好きなドM野郎の騎士団長だ。
あれからは特に求められることはなく、普段からこのお店を利用してもらってる。
「今日はお連れ様がいるんですね」
「あっ……そそそそうなんだ」
どきまぎした姿を見て、直感的に触れてはいけないと感じた。
きっと愛人の密会としてここに来たのだろう。
そこまで姿を隠したいなら、個室があるお店にするべきだ。
よほど焼肉が気に入っているのだろう。
「席はこちらでお願いします」
席を案内すると、愛人はその場で固まって動かなくなっていた。
「あのー、大丈夫ですか?」
「ああ」
体調が悪いかと思ったが、特に問題はないそうだ。
それにしてもぶっきらぼうな感じだな。
やっぱりドM野郎が愛人にするぐらいだ。
きっと冷たくされるのが好きなんだろう。
「注文は……いつも通りので大丈夫ですか?」
「ととととりあえず、オススメをください」
話しづらそうに答えていた。
いつも通りだと若干辛めの味付けが多いから、相手のことを思ってオススメにしたのだろう。
普通に頼めばいいのに、いつも頼んでいるやつを聞かれたくないのかな?
まぁ、メニュー名がなんとも言えないからな。
"刺激たっぷり奥までガツンと肉"とか"#私を虐めて激辛スープ"とか、変わったメニュー名が多い。
おじさん達にこれなら売れると言われてつけたメニューだ。
ちなみに奥までガツンと肉に関しては、ただの異世界版ソーセージのことだ。
単純に長いから食べるときに、喉の奥まで届くらしい。
たまに客から食べて欲しいと、言われることもある訳の分からない人気商品になった。
さすがお店の経営をしていただけるとある。
そんなメニュー名を普通は考えないからな。
だが、これもオススメの中に入っているけど……問題ないか。
「すぐにお待ちしますね」
注文を受けると俺は他のテーブルにもお肉を運ぶ。
今日も相変わらず忙しいからな。
「トモヤくんはこの世とも思えないな」
「あの一生懸命さがさらに男心をくすぐるよ」
こんな言葉にはもう慣れた。
今まで言われたことない言葉だから、嘘つきの客としか認識していないからな。
「トモヤくん、これを騎士団長のところにお願いします」
チラッと見ると、二人は話さずにずっとこっちを見ている。
何か理由があるのだろうか。
俺は渡されたメニューに息を呑む。
「お待たせしました。こちら当店オススメの刺激たっぷり奥までガツンと肉、私を虐めて激辛スープです」
「ぐふっ!?」
テーブルに商品を置くと、愛人は飲んでいた飲み物を吹き出しかけていた。
商品名が少し卑猥だもんな。
エッチなお店と間違えても仕方ない。
だが、ここではそういうのはお断りだからな。
「あああ、ありがとう」
騎士団長は額から少し汗をかいていた。
そんなに暑いのかな?
空調も魔道具だから、誰かに温度の調整をしてもらわないといけないな。
「トモヤくんー! こっちもお願いします」
「はい、今行きます」
俺は頭を下げてから、また商品を取りに戻る。
「これも同じテーブルなのでお願いします」
俺は商品をお盆に乗せて、また騎士団長のテーブルに向かった。
「こちらが焼肉セットです」
畑の肉をテーブルの上に置いたら、愛人はマジマジとお肉を見ていた。
「焼肉か……」
雰囲気から少し楽しそうに肉を眺めていた。
そこまで焼肉が気になっていたのだろう。
その後も二人は黙々と肉を食べていた。
騎士団長は普段より食が進んでいなかったが、どこか体調が悪いのだろう。
一方、愛人も少し震えていた。
二人して食あたりにあったのかと思ったが、特に心配はいらないらしい。
食べ終わると席を立ち上がり、そさくさと帰る準備をしていた。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
「ああ、美味しかったよ」
二人に頭を下げると、どこかで聞いた声と懐かしさに心の底から何か溢れ出しそうになった。
顔をあげるが二人は既にお店を後にしていた。
あの気持ちはなんだろうか。
懐かしさと寂しさが入り混じった感覚に、俺は不思議に思った。
まるでここにはいないはずのあの人に会った気分だ。
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