美醜逆転した世界で俺は運命の相手を探す

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第二章 イケメンスローライフ?

53.作戦会議

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 俺は冒険者ギルドに戻るとカウンターにいるクジャに声をかけた。

「町の中で肉を焼いたら問題になるか?」

 一応この世界の常識を知らないから、やらかしてしまう可能性があった。

 今回は事前に相談して対策を練るつもりだ。

 やる時はやる男だからな。

「基本的にはあまりオススメはしないな。売り買いしないのであれば問題ないとは思うが、商店街や貴族街に近いところでは文句を言われて騎士に通報されると思うぞ?」

 クジャの反応からしていきなり露天のような形の販売はできないことがわかった。

「冒険者ギルドでの販売は?」

「あー、そもそも冒険者ギルドって名前はあるけど店としての証明書は存在しないからな?」

 冒険者ギルドという名前で獣人達を保護する団体として活動し、金を稼ぐために何でも屋として経営しているのが実情らしい。

「じゃあ、俺がいつも飯を作っているのは……?」

 俺はギルド内で焼肉屋もどきを始めるようになってからは、ご飯を作る機会が多くなった。

 今は食べる時にお金を払う仕組みになっている。

「冒険者ギルドという名の集団の食事当番ってところだな」

 どうやら酒とかは前から出していたが、あまり食事の提供はしていなかったらしい。

 異世界あるあるの冒険者ギルド内に食事処があるのを想定していたが、ただ単に俺が作って出していたという体らしい。

「じゃあ、冒険者ギルド内で売り買いをするのはダメってことか」

「そういうことだな」

 リッパーにあれだけ啖呵を切ったが、解決策が中々出てこなかった。

 冒険者内で商売をするにも、色々と基準があって難しいのが現状だとクジャは言っていた。

「トモヤ、どうしたんだ?」

 仕事を終えたニャンタが帰ってきた。

 最近は低ランク冒険者の指導がニャンタの仕事らしい。

 ウェンベルグ街の冒険者ギルドを辞めて、今は王都で活動している。

 副ギルドマスターを辞めてまで王都に居たい理由は、やっぱりリッパーのことが関係していそうだ。

「リッパーのところの肉が中々売れないのは、畑の肉が原因って言われたからさ」

「ああ、そういうことか」

 元の原因になったことを話すと、ニャンタはすぐに理解してくれた。

「そもそも人間達と他の種族じゃ食べるものが違うぞ」

「それは食べれないってこと?」

「ある意味そうだな。むしろ、人間のお前が普通にここで食べている方が不思議だ」

 ニャンタの言葉にクジャも頷いていた。

 俺って特殊な胃袋でも持っているのだろうか。

「人間達は俺達のことを下位の種族だと思っているから、俺達が食べる物は一切食べないんだ」

「それって食わず嫌いってこと?」

 食わず嫌いであそこまで言われたって思うとイラッとしてくる。

 文句を言うなら食べてから言って欲しい。

「ああ、簡単に言えばそうなるかもな。人間達は基本的に魔法を使うから、魔力が宿る物を食べることが多い」

「魔果の実とか?」

 俺が知っている魔力が宿っているものの代表が、大変な思いをした魔果の実だ。

「それも一つだな。獣人は魔力が少ないからそういう魔力を宿った物をあまり食べなくてもいいが、人間達は肉を食べるときは魔物の肉を食うのが一般的だ」

 確かに獣人が豚や牛を食べていたら、共食いになってしまう。

 豚の半獣が豚を食べていると想像すると、かなりグロテスクな状態だ。

「だけど俺が畑の肉を食べても問題ないぞ?」

「ああ、実際は特に問題ないからな。むしろタレに微弱な魔力があるから、俺達にはちょうどいいぞ」

 獣人のような総魔力量が少ない種族は魔物を食べると魔力過多症という状態になるらしい。

 逆に人間は基本的に魔力を使いすぎなければ、気にせず何を食べても良い。

 それにしても焼肉のタレに魔力が宿っていたことに驚いた。

 タレに潜らせることで、適度に魔力を得ることができる焼肉は無敵な食べ物だな。

「じゃあ、あとはどうやって食べてもらうかってのが問題だよな……」

「人間が食べるかどうかは難しいところだな。とりあえず、腹減ったんだが、今日はどこで食べるんだ?」
 
「今日も裏の……あっ、表で食べたらダメなのか?」

 いつもは裏の見えないところで食べていた。

 だが、宣伝するなら、わざと人間が見える表玄関で食べてみるのはどうだろうか。

「確かにやってみる価値はあるかもな……」

 クジャの反応からして問題はないのだろう。

「よし、今日は表で食べるからテーブルを運べ!」

 他の冒険者達に声をかけると、素早く準備を始めた。

 どうやらみんなお腹を空かして待っていたらしい。
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