美醜逆転した世界で俺は運命の相手を探す

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第二章 イケメンスローライフ?

37.ギルドへのお願い

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「おはようー」

「また髪の毛がピョコピョコしてるぞ」

「まるでひよこだね」

 ニャンタとクジャに髪の毛を直されると、俺はいつものように椅子に座る。

 少しずつ冒険者ギルドの生活に慣れ始めていた。

 ニャンタはウェンベルグ街の副ギルドマスターだが、なぜか帰らずに王都に滞在している。

「あー、やっぱりネコはかわいいね」

「そこいいにゃん」

 俺はケットを朝からもふもふして朝の日課を終える。

 ケット達はちゃんと試験に合格して、しばらくは王都に滞在して帰るらしい。

 もふもふがいなくなるのは寂しいな。

 ちなみにクジャはニャンタと同期で冒険者ギルドの副ギルドマスターらしい。

 だからあんなに仲が良いのだろう。

 犬猿の仲……犬と孔雀だけどな。

「最近薬草の依頼を受ける人が極端に減ったな」

「元々見つかりにくいからな。何かあったときにどうしようもない状況にならなければいいが……」

「魔物が増えたのも関係しているのだろう」

 どうやら森に魔物が増えたため、薬草の採取がしにくいらしい。

 そんなに魔物が増えたら王都は問題ないのだろうか。

「トモヤ、手が止まってにゃん」

「ああ、すまない。ちょっと話が気になってな」

「薬草と魔物のにゃん?」

 話は気になるがこのもふもふも止められそうにない。

「ああん……にゃにゃにゃん」

 変わった声で鳴く姿がまた可愛く見える。

 その後、もふもふを堪能するとクジャの元へ向かう。

「クジャいいか?」

「ああ、トモヤか! どうしたんだ?」

 他の獣人達はもふもふするが、クジャは副ギルドマスターという面子もあり、唯一何もせずに話せるようになった。

「さっき言ってた話って本当?」

「薬草と魔物の話か?」

「そうそう」
 
「それがどうかしたか?」

 薬草が足りないなら、俺が集めて来ようかと思い声をかけた。

 俺には薬草を見つけるのが上手なうにょ花ことカレンさんがついているからな。

 ちなみにカレンさんは土から抜いて2週間以上経っているから、今は胸ポケットの中で萎んでいる。

 そのまま死んでしまわないか心配だ。

「俺が薬草集めて来ようか?」

「うん? 何を言ってるんだ?」

 どうやら聞こえてないらしい。

 俺は少しだけ声を張り上げた。

「俺が薬草取ってく――」

「それは聞こえているぞ!」

 聞こえていないと思い、声出したのに聞こえていたらしい。

 クジャや他の冒険者は驚き、冒険者ギルド内がザワザワとしていた。

「そんなにお金に困っているんか?」

「いや、特に困ってはないよ? みんながお小遣いくれるし」

 もふもふ代で冒険者達がお金をくれるため、生活にはさほど困ってはいない。

 ご飯もなぜかみんなが奢ってくれるからな。

「じゃあ、何でそう思ったんだ?」

 たしかに説明しないと伝わらないのだろう。

 実際に王都に来る前も誘導はしたが、直接伝えてはいないからな……。

「みんなの手伝いがしたくて……?」

 まぁ、あながち間違えではない。

 単純に俺もそろそろ外に出たいのもある。

 冒険者ギルドから外に出ようにもニャンタに止められるからな。

「んー、戦えないトモヤには負担が強いだろうな。それに今は魔物も増えているから、何が起こるかわからない状況なんだ」

 魔物って言ったらスライムみたいなやつだよな?

 イムりんは俺の服の中に隠れているが、優しい子だけど、他の魔物は違うのだろう。

「じゃあ、俺はみんなの力にはなれないんだな……」

 戦う力がない俺は王都からも出れない役立たずなんだな。

 どうにか外に出る方法があればいいんだけどな……。

「いや……決してトモヤが役立たずなわけではないぞ! お前らもこっち見るなよ!」

 俺が落ち込むとクジャはあたふたとしていた。

 他の冒険者からも何かしらの視線を感じていたから、他の冒険者から圧がかかっているのだろう。

「俺はみんなを撫でることしかできないのか……」

 むしろ撫でるのは俺も心地良いから問題ない。

 ただ、こういう風に言えばみんなの良心がチクチクと痛むだろう。

「あー、ちくしょー。じゃあ特別に冒険者の試験としてトモヤの護衛をしながら魔物討伐する依頼を出すからそれでもいいか?」

 どうやら俺の作戦勝ちのようだ。

 一人では外に出られないが、試験として森に行ければ薬草を取りに行ける。

 出来るだけ薬草で稼げれば、この先やりたいことがあったときに困らないだろう。

 ええ、俺の金を稼ぐために薬草を採取したかっただけだ。

「じゃあ、決まり次第お願いします」

「ああ、わかった」

 俺は薬草採取が決まり喜んで部屋に戻った。
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