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第一章 ここは異世界ですか?
14.異世界はホワイト企業
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「これはなに?」
「私も見せてもらったけどわからなかったのよ」
「……」
どうやら公爵家であっても騎士団は金銭関係については苦手のようだ。
さっきクラウドがずっと考えていたのは、これが何かを考えていたのだろう。
「これが元になったやつです」
俺は元になった資料を数枚取り出すと、見慣れたことある資料に頷いていた。
「これは魔物討伐に使った費用と報酬だね」
俺が渡したのは特に計算上に間違いが出ている収支が記載してあるものだ。
収支とは収入から支出を差し引いて残っているもののことだ。
「この資料には必ずマイナスになるように記載してあるけど、一度試算表で計算して収支を出すとマイナスはないことになっているんです」
簡単に言えば前の資料では支出の計算が違っており、収入より支出が多くなっているのだ。
「それってどういうことなの?」
二人は何を言っているのかわかっていないようだ。
「この魔物討伐に関する財源ってどこから出ていますか?」
「それはこの領地の税とわずかに国からの援助金で成り立っているね」
領地に出現する魔物は基本的には民から集めた税金で対応しているらしい。
魔物の数もまばらでお金もかかることから足りない部分に関しては、ウェンベルグ公爵家が補填している。
「ってことは何かしらの人がウェンベルグ公爵家のお金をこっそりと騎士団にたくさん回そうとしている人がいるかも知れないってことですね。もしくは――」
「今すぐそいつを呼んでこい!」
俺は急いでテーブルを掴んだ。
クリスチャンの圧が最大級になりテーブルがガタガタと揺れている。
でも単純に考えれば増えたお金を誰かが横領したことになるが、この騎士団にそこまで頭が回る人がいるのかが疑問になっていた。
だってみんな脳筋そうなんだもん。
その辺で言い合いをしているし、さっきも肉の取り合いで喧嘩していたぐらいだ。
そもそも処罰で管理しているからこそ、その人に直接お金が行くことはないため、単純に計算間違えなんだろう。
公爵家である程度の勉学があり、騎士団長と副騎士団長である目の前の二人でさえ気づいていない方がむしろ問題のような気がした。
「あいつらを一度問い詰める必要があるな」
「一度締め付けないとわからないのかしらね」
それにしても二人の圧が俺に伝わってくる。
早く止めないと食堂のテーブルが全て壊れて余計に費用がかかりそうだ。
「でも、気になる部分もあるんです」
「気になることってなんだ?」
いや、怖いから俺に圧をかけないで欲しい。
国に数人しかいないと言われるソードマスターの圧って本当に獰猛な動物に睨まれている感覚だ。
「ここの騎士団にそんなことができる頭の回る人っていますか? 特にこの人とか……」
俺は資料の端に書いてある文字を指さした。
「これはロビンだわね。あいつまたやらかしたのね!」
どうやらロビンという人はよくミスをしている人なんだろう。
「たしかにロビンはミスばかりしているけど、人としてはちゃんとしているわ。そんなことをやる人ではないはずよ」
副団長であるクラウドは仲間のことを信頼しているのだろう。
それなら俺もその気持ちに寄り添ってあげるべきだな。
「なら今度公爵家で騎士団に関係する資料を確認してもいいですか? そこで単純に問題なければロビンさんが計算を間違えていることになりますし、今騎士団にある今年の財源も教えて頂けると助かります」
「たしかにそっちのほうが可能性は高いわね。面倒な仕事を押し付けて悪いわね」
さっきまでの威圧は収まり、テーブルも無事に割れず……いや、少し角が割れているがきっと前に何かあったやつなんだろう。
「役に立てればいいですが……」
「別にいてもらえるだけでいいのよ。できれば息子達のお嫁さんになってもらえると助かるけどね」
サラッと息子達を結婚相手に勧めるあたり、親として暖かさを感じる。
「じゃあ、先に作業に戻りますね」
俺は食べた物を片付けてから資料室に戻ることにした。
「あっ、帰りは何時ごろになりますか?」
そういえば終わる時間を聞くのを忘れていた。
今度は呼ばれる前に準備を終えて、二人を待とうと思う。
「仕事は16時までだからその間には入り口にいてもらえるかな?」
俺は驚いてしまった。
たしか騎士団本部に着いたのも十時頃だった。
「そんなに終わるの早いんですか……?」
「トモヤくんの世界……前のところは何時に終わっていたの?」
「えーっと、基本的には9時から19時ぐらいに終わってましたね」
俺が仕事をしている時は毎日サービス残業があり、早くても19時ぐらいに終わっていた。
異世界はかなりのホワイト企業だった。
「私達が行ったら絶対に生きていけないわね……」
俺の話を聞いていたクラウドは驚いていた。
この世界の人達が地球に来たら魔法も剣もなく、さらに物理的に戦うこともないため生きにくいだろう。
そう思えば俺が渡人としてこの世界に来たのならまだ幸運なんだろう。
さすが天国だね。
「では、作業に戻りますね」
俺が手を振るとなぜか食堂入り口にいたホビーも手を振っていた。
イカツイ見た目で手を振っていると、どこか可愛く見えてきた。
俺はその後も資料室に戻り、資料の割り振りとできる範囲で試算表を作るのに追われていた。
「私も見せてもらったけどわからなかったのよ」
「……」
どうやら公爵家であっても騎士団は金銭関係については苦手のようだ。
さっきクラウドがずっと考えていたのは、これが何かを考えていたのだろう。
「これが元になったやつです」
俺は元になった資料を数枚取り出すと、見慣れたことある資料に頷いていた。
「これは魔物討伐に使った費用と報酬だね」
俺が渡したのは特に計算上に間違いが出ている収支が記載してあるものだ。
収支とは収入から支出を差し引いて残っているもののことだ。
「この資料には必ずマイナスになるように記載してあるけど、一度試算表で計算して収支を出すとマイナスはないことになっているんです」
簡単に言えば前の資料では支出の計算が違っており、収入より支出が多くなっているのだ。
「それってどういうことなの?」
二人は何を言っているのかわかっていないようだ。
「この魔物討伐に関する財源ってどこから出ていますか?」
「それはこの領地の税とわずかに国からの援助金で成り立っているね」
領地に出現する魔物は基本的には民から集めた税金で対応しているらしい。
魔物の数もまばらでお金もかかることから足りない部分に関しては、ウェンベルグ公爵家が補填している。
「ってことは何かしらの人がウェンベルグ公爵家のお金をこっそりと騎士団にたくさん回そうとしている人がいるかも知れないってことですね。もしくは――」
「今すぐそいつを呼んでこい!」
俺は急いでテーブルを掴んだ。
クリスチャンの圧が最大級になりテーブルがガタガタと揺れている。
でも単純に考えれば増えたお金を誰かが横領したことになるが、この騎士団にそこまで頭が回る人がいるのかが疑問になっていた。
だってみんな脳筋そうなんだもん。
その辺で言い合いをしているし、さっきも肉の取り合いで喧嘩していたぐらいだ。
そもそも処罰で管理しているからこそ、その人に直接お金が行くことはないため、単純に計算間違えなんだろう。
公爵家である程度の勉学があり、騎士団長と副騎士団長である目の前の二人でさえ気づいていない方がむしろ問題のような気がした。
「あいつらを一度問い詰める必要があるな」
「一度締め付けないとわからないのかしらね」
それにしても二人の圧が俺に伝わってくる。
早く止めないと食堂のテーブルが全て壊れて余計に費用がかかりそうだ。
「でも、気になる部分もあるんです」
「気になることってなんだ?」
いや、怖いから俺に圧をかけないで欲しい。
国に数人しかいないと言われるソードマスターの圧って本当に獰猛な動物に睨まれている感覚だ。
「ここの騎士団にそんなことができる頭の回る人っていますか? 特にこの人とか……」
俺は資料の端に書いてある文字を指さした。
「これはロビンだわね。あいつまたやらかしたのね!」
どうやらロビンという人はよくミスをしている人なんだろう。
「たしかにロビンはミスばかりしているけど、人としてはちゃんとしているわ。そんなことをやる人ではないはずよ」
副団長であるクラウドは仲間のことを信頼しているのだろう。
それなら俺もその気持ちに寄り添ってあげるべきだな。
「なら今度公爵家で騎士団に関係する資料を確認してもいいですか? そこで単純に問題なければロビンさんが計算を間違えていることになりますし、今騎士団にある今年の財源も教えて頂けると助かります」
「たしかにそっちのほうが可能性は高いわね。面倒な仕事を押し付けて悪いわね」
さっきまでの威圧は収まり、テーブルも無事に割れず……いや、少し角が割れているがきっと前に何かあったやつなんだろう。
「役に立てればいいですが……」
「別にいてもらえるだけでいいのよ。できれば息子達のお嫁さんになってもらえると助かるけどね」
サラッと息子達を結婚相手に勧めるあたり、親として暖かさを感じる。
「じゃあ、先に作業に戻りますね」
俺は食べた物を片付けてから資料室に戻ることにした。
「あっ、帰りは何時ごろになりますか?」
そういえば終わる時間を聞くのを忘れていた。
今度は呼ばれる前に準備を終えて、二人を待とうと思う。
「仕事は16時までだからその間には入り口にいてもらえるかな?」
俺は驚いてしまった。
たしか騎士団本部に着いたのも十時頃だった。
「そんなに終わるの早いんですか……?」
「トモヤくんの世界……前のところは何時に終わっていたの?」
「えーっと、基本的には9時から19時ぐらいに終わってましたね」
俺が仕事をしている時は毎日サービス残業があり、早くても19時ぐらいに終わっていた。
異世界はかなりのホワイト企業だった。
「私達が行ったら絶対に生きていけないわね……」
俺の話を聞いていたクラウドは驚いていた。
この世界の人達が地球に来たら魔法も剣もなく、さらに物理的に戦うこともないため生きにくいだろう。
そう思えば俺が渡人としてこの世界に来たのならまだ幸運なんだろう。
さすが天国だね。
「では、作業に戻りますね」
俺が手を振るとなぜか食堂入り口にいたホビーも手を振っていた。
イカツイ見た目で手を振っていると、どこか可愛く見えてきた。
俺はその後も資料室に戻り、資料の割り振りとできる範囲で試算表を作るのに追われていた。
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