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104.彼の想い

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 空を飛んできたホークスとハリスは俺達の目の前に降りるとジッとこちらを見ていた。

「お兄さん達怪我はないですか?」

「特にないよ」
 俺の言葉に2人は大きく息を吐いた。

「今みんなが王都で探しているよ」
 どうやら王都に住んでいる人達が俺達を探しているようだ。何か悪いことをしたか考えてみるが思いつくことはない。

「でも無事でよかったね。 私達は先にみんなに伝えてくるね」
 2人はまた獣化し王都の方に戻って行った。

「3日も帰ってこなかったから心配してるのかな?」

「んー、それ以外にもなにかあると思うよ? にいちゃ何かやらかした?」

「ん? それは俺が何かやらかしたのが前提なのか?」
 俺の言葉にロンとニアは頷いていた。いつから俺はそういうキャラになったのだろう。

「そういえば2人のところに行く前に触手を吸収してきたわ」
 俺は住民に連れられるまま触手を吸収していた。いつからか意識が遠のいていたからどれだけ吸収したのかは覚えていない。

「うん、きっとそれがお兄ちゃんを探している原因じゃないのかな」
 ロンも同じ意見なのか頷いていた。

「そうか……。 まぁ、疲れたから気長に帰ろうか」

「そこは相変わらずマイペースなんだね」
 俺はロンとニアの手を繋ぎゆっくりと歩きながら王都に向かった。





 王都が見え始めると門の前にはなぜかたくさんの人が待っていた。

「にいちゃ!」

「ん?」
 どこかロンは嬉しそうに俺の名前を読んでいた。

「お兄ちゃん見えてないの? ばあばとじいじがいるよ」
 ロンとニアは門に向かって勢いよく走った。獣人の2人には遠い先が見えているのだろう。

 俺には人がたくさんいるぐらいにしか見えない。

 2人を追いかけるように走っていくとそこには確かにモーリンとメジストが立っている。

 俺の顔を見ると大きくため息をついていた。久しぶりに見た2人の顔はどこか疲れているような気がした。

「やっと帰ってきたと思ったらそんな姿になりおって」

「ずいぶん男らしい姿になったじゃないか」
 2人の姿を見るとどこか溜まっていたものが吐き出しそうになった。やはり家族の顔を見ると安心するようだ。

「ははは、でも根は変わっていないようだな」
 自分自身が本当に俺なのかわからないままだったからこそ、この言葉を言って欲しかったのだろう。

 ロンとニアの前ではずっと不安だったが、兄とした強がっていた部分が一瞬にして剥がれた。

「ほらそんなところで突っ立ってないでこちらにおいで」
 優しく手を広げているモーリンに俺は勢いよく飛びついた。

「ただいま」
 俺から出た言葉はこれだけだ。どこかに感じるあの人もこの言葉をずっと待っていたのだろう。

「孫はいつになっても孫だね」
 優しく俺を撫でるその手に何かが溶かされる暖かさを感じた。

 溜めていた涙が彼の想いとともにそっと流れた。

 
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