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101.転生 ※別視点
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「いい加減うるさいから黙れ。 人殺しの分際で何言ってんだ」
泣き叫ぶ俺の口から急に声が出なくなった。息を吐いても何も発声されないのだ。
男を見るとニヤリと笑っている。無表情だった男が笑った表情は背筋が凍るような恐ろしさを感じた。
「ははは、それでは人殺しにはそれ相当のカードを選ばせよう」
俺の目の前にもカードが3枚空中に浮いていた。俺はカードと男を交互に見ているとイラついているのか声を荒げて怒鳴ってきた。
「お前みたいな人殺しはどの人生でも変わらないんだよ! 早く選べ」
俺はとりあえず直感で右のカードを選んだ。
「ははは、次の人生で良い行いをするんだな。 きっとスライムでは無理だと思うけどな」
俺は男を睨みつけると他の2枚のカードも俺に見せつけてきた。
「アリとミトコンドリアよりは良かったな」
俺は現実世界に行っていたらアリかミトコンドリアになっていたらしい。どっちにしても俺は家族には会えないことを知った。
「これで世界の均衡が取れるだろう」
男はボソッと呟いていたが、消えていく俺にはすでに聞こえなかった。
♢
気づくと何も聞こえず、話せない環境で常に孤独と戦っていた。生きていたのか死んでるのかもわからず気づいたら刺激を求めている自分がいる。
だから俺は知らぬ間に光を求めて輝かしいところに惹かれていた。
そんな俺の目の前に突如現れたそいつに俺は魅了され、いつのまにか忘れていた何かを思い出すようにそいつを求めた。
「家族を守るために戦ったはずが離れ離れになったんですね」
何もない真っ暗な空間でそいつは俺に話しかけてきた。
「お前は誰なんだ」
話せないはずの口から久しぶりに声が出た。
「僕ですか? 僕はウォーレンと言います。 あなたは?」
「私は……」
答えようとしたが自分の名前が思い出せなかった。そもそも俺に名前はあったのだろうか。
「パパ? 父ちゃん?」
そいつは俺のことをそう呼んでいた。どこか懐かしい言葉に俺の視界は急に明るくなった。
「ああ、君がウォーレンくんか」
俺の目の前にはどこかあどけなさが残る若い男の子が立っている。
いつのまにか真っ暗な視界に色味が入り、鮮やかにはっきりと見えていた。
「やっと姿が見えましたね」
「えっ!?」
俺は視線下ろすと体中が赤く染まっているが手や足がちゃんとついていた。いつぶりかわからない人の形をしているのだ。
「ははは、やっと体を手に入れたぜ」
今まで何も分からなかった世界が一瞬にして変わったのだ。ずっと暗い空間にいた俺にとっては初めての感情だ。
「今までこんな空間にいたんですか?」
「ああ、今まではずっと真っ暗なところだったからな。 ただ俺は真っ直ぐ手を伸ばしてたらお前が立っていた」
「そうなんですね。 じゃあ外ではどんなことが起きているのか知ってますか?」
「お前は何言ってんだ?」
この男は何を言っているのだろう。俺はずっとここにいたから外に出たことはない。
むしろやっと真っ暗な部屋から出たからここが外なのだ。
「そうなんですね。 じゃあこの記憶をお返ししますね」
男は近づいてくると俺の手を握った。赤く染まった手を嫌な顔もせず、彼の笑顔は大事な何かを思い出させてくれると感じた。
「温かいな」
どこか懐かしくほっとする温かさに安心した。俺が求めていたのはこれだったと心の底から何かが溢れてきた。
「スキル【共鳴吸収】が発動されました」
脳内に流れてくる声とともに感じたことのない痛みに突然襲われた。
「ああああぁぁぉ」
俺の中に知らなかった記憶が直接脳内に電気を送るように流れてきた。そこで俺は気づいてしまった。
自分は手もつけられないほどの人殺しになっていたということを……。
泣き叫ぶ俺の口から急に声が出なくなった。息を吐いても何も発声されないのだ。
男を見るとニヤリと笑っている。無表情だった男が笑った表情は背筋が凍るような恐ろしさを感じた。
「ははは、それでは人殺しにはそれ相当のカードを選ばせよう」
俺の目の前にもカードが3枚空中に浮いていた。俺はカードと男を交互に見ているとイラついているのか声を荒げて怒鳴ってきた。
「お前みたいな人殺しはどの人生でも変わらないんだよ! 早く選べ」
俺はとりあえず直感で右のカードを選んだ。
「ははは、次の人生で良い行いをするんだな。 きっとスライムでは無理だと思うけどな」
俺は男を睨みつけると他の2枚のカードも俺に見せつけてきた。
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俺は現実世界に行っていたらアリかミトコンドリアになっていたらしい。どっちにしても俺は家族には会えないことを知った。
「これで世界の均衡が取れるだろう」
男はボソッと呟いていたが、消えていく俺にはすでに聞こえなかった。
♢
気づくと何も聞こえず、話せない環境で常に孤独と戦っていた。生きていたのか死んでるのかもわからず気づいたら刺激を求めている自分がいる。
だから俺は知らぬ間に光を求めて輝かしいところに惹かれていた。
そんな俺の目の前に突如現れたそいつに俺は魅了され、いつのまにか忘れていた何かを思い出すようにそいつを求めた。
「家族を守るために戦ったはずが離れ離れになったんですね」
何もない真っ暗な空間でそいつは俺に話しかけてきた。
「お前は誰なんだ」
話せないはずの口から久しぶりに声が出た。
「僕ですか? 僕はウォーレンと言います。 あなたは?」
「私は……」
答えようとしたが自分の名前が思い出せなかった。そもそも俺に名前はあったのだろうか。
「パパ? 父ちゃん?」
そいつは俺のことをそう呼んでいた。どこか懐かしい言葉に俺の視界は急に明るくなった。
「ああ、君がウォーレンくんか」
俺の目の前にはどこかあどけなさが残る若い男の子が立っている。
いつのまにか真っ暗な視界に色味が入り、鮮やかにはっきりと見えていた。
「やっと姿が見えましたね」
「えっ!?」
俺は視線下ろすと体中が赤く染まっているが手や足がちゃんとついていた。いつぶりかわからない人の形をしているのだ。
「ははは、やっと体を手に入れたぜ」
今まで何も分からなかった世界が一瞬にして変わったのだ。ずっと暗い空間にいた俺にとっては初めての感情だ。
「今までこんな空間にいたんですか?」
「ああ、今まではずっと真っ暗なところだったからな。 ただ俺は真っ直ぐ手を伸ばしてたらお前が立っていた」
「そうなんですね。 じゃあ外ではどんなことが起きているのか知ってますか?」
「お前は何言ってんだ?」
この男は何を言っているのだろう。俺はずっとここにいたから外に出たことはない。
むしろやっと真っ暗な部屋から出たからここが外なのだ。
「そうなんですね。 じゃあこの記憶をお返ししますね」
男は近づいてくると俺の手を握った。赤く染まった手を嫌な顔もせず、彼の笑顔は大事な何かを思い出させてくれると感じた。
「温かいな」
どこか懐かしくほっとする温かさに安心した。俺が求めていたのはこれだったと心の底から何かが溢れてきた。
「スキル【共鳴吸収】が発動されました」
脳内に流れてくる声とともに感じたことのない痛みに突然襲われた。
「ああああぁぁぉ」
俺の中に知らなかった記憶が直接脳内に電気を送るように流れてきた。そこで俺は気づいてしまった。
自分は手もつけられないほどの人殺しになっていたということを……。
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