上 下
68 / 141

68.最強ニアちゃん

しおりを挟む
 水中で身動きが取れない俺に脳内へ声が聞こえてきた。

「魔力を吸収しますか?」

「んつっ!?」
 俺は魔水昆虫王ギタガメの熱い口づけのような攻撃を避けながらスキル玉を使うような感覚を全身に感じた。

「魔力を吸収しました」
「スキル【限界突破】が発動されました。 魔力の限界値が上昇します」
 どうやら魔力の湖にある魔力を吸い取ったようだ。

 俺は腰につけている短剣を取り出しスキル玉【雷属性】を発動させた。一瞬で光ると同時に魔物の力は弱まり、俺は魔物を足台として勢いよく地上に向かい力を入れた。

「ぷっはあー!」
 俺は地上に出たタイミングで大きく息を吸った。

「にいちゃ!」
「お兄ちゃん!」
 湖に入ろうとしてロビンに止められていた2人が近寄ってきた。

「なんか湖にめちゃくちゃいるよ!」
 俺は雷属性を使うと同時に底には大量のギタガメがいることに気づいたのだ。

「ひょっとしてあいつ遊んでただけじゃないの――」

「遊んではないです!」
 ロビンとエヴァンが何やら話し出したため俺は否定しておいた。

「それで湖はどうだった?」
 俺は湖に鑑定を発動させると鑑定結果が変わっていた。

《綺麗な湖》
効果 森の中にある水が澄んだ綺麗な湖。湖の中には魔物も生息しているが水質に関して特に問題はない。

「どうやらただの湖にようです」

「ただの湖に?」

「はい」

「はぁー」
 ロビンはまた俺の顔を見てため息をついていた。

 それにしてもあの魔物達は光りに弱いのか俺がスキルを発動した瞬間に逃げ出そうとしていた。

「ちょっとこれをつけて湖に魔法を放ってもらっていいか?」
 俺はニアにスキル玉を渡すとニアはスキルホルダーに装着していた。

「雷属性の魔法を湖に放てばいいんだよね?」

「おっ、おう」
 ニアは手を湖に向けると何か嫌な予感がしていた。

「なんか雨が降ってきたぞ?」
 
「おい、ニア調整――」
 俺が話しかけた最中に雷鳴と共に雷が湖に向かって落ちてきたのだ。その姿はどこかモーリンに被っていた。

「おー、モーリン様に似てきたな」
 ロビンも俺と同じことを思ったのだろう。雷は湖に落ちるとそのまま湖に雷が走るように湖全体が光っていた。

「お兄ちゃんこれありがとう! なんかスッキリするね!」

「おっ、おう」
 ニアからスキル玉を預かった。どこかその笑顔もモーリンを彷彿とさせていた。

 その後湖から魔物達の死体がどんどん浮かび上がっていた。その中にはさっきまで俺に熱い口づけをしようとしていた魔水昆虫王ギタガメもいた。

「あっ、あそこのやつが俺に口づけをしようとしてきて……」
 俺は魔水昆虫王ギタガメを指差すとロビンとエヴァンは可哀想な人を見る目でこっちを見ていた。

「ああ、ひょっとして遊ぶってそういう趣味があったんだな」

「あー、だからプリシラと同じ部屋で寝ても何も思わなかったのだろうな」
 俺は何かロビンとエヴァンに誤解を生み出したようだ。プリシラも子供達の耳を塞いでいた。

「あのー――」

「よし、すぐに戻ったら王都で一番いいお店を紹介してやろう。 今回はお前達が依頼を解決したようなもんだしな」

「あっ、俺も連れてってもらってもいいですか?」

「おっ、お前も男になったのかー!」
 俺は何を言っているのか理解できなかった。でも顔を真っ赤にしているプリシラを見ると話の内容はなんとなく想像はついた。

 それよりも俺は呆れているロンとニアが心配だった。だって、プリシラは片耳ずつしか隠せていなかったのだ。

「お兄ちゃん……?」

「あの……ニアちゃん? 俺今湖から出てきたばっかりだからそれは寒いよ……」
 辺りは急に温度が下がり、濡れた体の俺はさらに体温が奪われ少し震えていた。決してニアが怖くて震えているわけではない。

「お兄ちゃんの変態! エッチ!!」
 話に入っていないはずの俺を中心にニアは氷属性魔法を発動させた。一瞬にして俺を含むロビンとエヴァンは氷漬けにされていた。

「お兄ちゃんの馬鹿! ニアがいるのに!」
 そう言ってニアは街に向かって歩いて行った。
 
「にいちゃ……女の人を怒らせたらダメだよ?」
 そんな俺にロンは優しくスキル玉【火属性】を発動していた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

Link's

黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。 人類に仇なす不死の生物、"魔属” そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者” 人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている―― アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。 ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。 やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に―― 猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...