上 下
61 / 141

61.思い出のカツ丼

しおりを挟む
 その後王都に戻ったエヴァンとプリシラは目を覚ました。どこか血が足りないのかふらふらとしていたため、そのまま宿屋に連れ帰ってきた。

 俺がエヴァンに腕を取り肩を組んで宿屋に帰るとルースがまた意味わからないことを言っていた。

 エヴァンとプリシラを寝かしつけると俺は食堂に向かった。俺はルースに聞きたかったことがあったのだ。

「ルースさん転生者って一体何者なんですか?」
 以前過去の記憶を持つ者と聞いているがあのスライムも転生者と書かれていた。

「私にもはっきりしたことは言えないの。 ただ言えるのは前世の記憶があるのと、スキルをいくつか持っているってことぐらいかしら」
 ルースが言う通りたしかにあのスライムはたくさんのスキルを持っていた。こっちの世界に生まれ変わる時に3つまでスキルの選択ができるらしい。

 その後も生まれてから前世の記憶があるわけでもなく、成長とともに何かの衝撃で前世の記憶が戻ってくるらしい。

 記憶が戻ってくるきっかけについてを話していたが、俺には何を言っているのかわからなかった。きっと壁になりたい理由と関係しているのだろう。

「そういえばこの紙ってここの宿屋のものですか?」
 俺はアイテムボックスから枕元にあった"株主お食事優待券"を取り出した。

「あー、あの吉田屋のお食事優待券がここにあるとは!」
 ルースは俺から紙を受け取ると突然祈り出した。

「これって何使うか知ってるんですか?」

「吉田屋って前世の私がいたところにあるお店なのよ。 ほかほかのお米の上にカツ……オークみたいなお肉を揚げて卵でとじる食べ物"カツ丼"が有名なのよ」
 どうやらルースの前世と関わる食べ物らしい。

「ルースさんが前世住んでいたところって──」

「日本っていう国だよ」
 株主お食事優待券に書いてある日本という言葉にどこか引っかかっていたがやはりルースが以前言っていた住んでいたところだったらしい。

「それにしてもなんで値引きクーポンとかじゃなくて株主優待券なんだろうね」
 ルースの世界では買い物をする時に安くしてもらえる値引きクーポンというものもあればお金の代わりになる株主優待券など様々なものがあるらしい。

「それでこの紙を破ると吉田屋から出前ってやつがされるらしいですよ」

「はぁん!?」
 ルースは俺と紙を交互に見ていた。

「出前って知ってますか?」

「商品が届くサービスのことよ。 きっと吉田屋のカツ丼が食べれるわ」
 彼女の目はエヴァンと俺が話している時とは異なりキラキラとした目でこちらを見ていた。

「じゃあ破ってみますね」
 俺は吉田屋のお食事優待券を破ると紙から光が飛び出しお食事優待券はそのまま消えた。

「あれっ!?」
 ルースの言った通りだとカツ丼が届く予定だったが来る気配がなかった。

「食べられると思ったけど残念でしたね」
 何も起きないとわかり、諦めようかと思った瞬間に突然空からお皿が落ちてきた。俺は咄嗟に取ることができたが、あのままどこかに行っていたら頭の上に落ちてきてたかもしれない。

「ルースさんカツ丼?が落ちてきましたよ」
 俺は落ちてきたカツ丼という食べ物をルースさんに渡すと彼女は震えていた。

「食べていいですか?」
 俺は席を開けるとそこにルースは座った。

「いただきます」
 彼女は毎回何かを食べる時にはこの挨拶をしてから食べていた。

「ははは、やっぱり味は変わらないや。 なんで突然いなくなっちゃったの……」
 彼女は何かを思い出しているのかその後も泣きながらカツ丼を食べていた。

 俺には前世の記憶がないからわからないが、会いたくてももう会えない人を思う気持ちはどんな感じなんだろうと俺はふと思った。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

処理中です...