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32.最強までの一歩
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「にいちゃ、大変だよ!」
「お兄ちゃん早く起きて!」
今日もロンとニアを抱きかかえて寝ていたはずが、いつのまにかいなくなっていた。
「もう少し寝かせてくれよ」
むしろ二人は俺のお腹の上ではしゃいでいた。朝から元気なのは獣人の特徴なのか、それとも単に俺が苦手なのかどっちなんだろうか。
「早くー!」
そんな俺を二人は必死に起こそうと揺する。
「ああ起き――」
「お兄ちゃんスキル玉がたくさんだよ」
俺はニアの声で体を起こした。スキル玉と言われれば、俺が唯一ステータスをカバーできる方法なのだ。
「あっ、にいちゃ起きた!」
「ひょっとして嘘なのか……とりあえずまた後で起こし――」
二人をそんな風に育て……いや、教育したつもりはなかったが嘘をつくのはいけないな。
俺は再び布団の中に潜り寝返りすると目の前に銀色に輝くスキル玉がいくつか転がっていた。今までにないぐらいの早さで頭は覚醒する。
「えっ……スキル玉!?」
俺の眠気はどこかに飛んでいく。しかし、今はスキル玉どころではなくなった。
「うっ……にいちゃが嘘つきって言ったー!」
「お兄ちゃんひどいよー!」
つい出てしまった言葉に二人が泣いてしまったのだ。
「あー、そんなつもりはないんだよ」
俺は優しく撫でるが二人は泣き止む様子はなかった。これぐらいの子供はすぐに傷つきやすいため、気をつけないといけないだろう。
「本当にごめんね。スキル玉をあげるから許して――」
「うん、いいよ!」
「やった!」
俺の言葉を聞いた瞬間に二人は泣き止んでいた。幼い子供の嘘泣きに騙されてしまったようだ。
そういえばこの間モーリンが生きる術として大事なことを教えたと言っていたがこのことなんだろうか。全く余計なことを教えてくれたもんだ。
もしステータスに知力という項目があったらこの子らは必ずSだろう。
俺はとりあえず布団を整えて、銀色に転がっているスキル玉を拾った。
スキル玉はブリジットのスキル屋からの配当だからか、やはり少し歪な形をしていた。
「んー、全部で5つか」
今回もらったスキル玉は5つで、どれも普通であれば"○回"や"使用無制限"と書いてあるが、このスキル玉には表示されなかった。むしろ使用回数については一切表示されていないのだ。
そして最大の特徴はスキル玉の中身だった。
「【剣術】って聞いたことないぞ?」
この世界のスキル玉は基本的に魔力を含んでいるため"○属性"や"○魔法"というスキル玉が一般的だ。だが、今目の前にあるのは【剣術】【短剣術】【弓術】【杖術】【槍術】と武器を中心的に扱うものばかりだった。
「お兄ちゃんはどれがいい?」
どうやら俺からスキルを選んでも、よかったらしい。
「じゃあ、俺は短剣術のスキル玉をもらうね」
俺は常に匠の短剣を使っていたため短剣術をもらうことにした。
「オラはにいちゃと同じやつがいいから剣術にする」
ロンは俺の戦い方を真似することが多いため、本人の希望もあり剣術を渡すことにした。
「んー、どうしよう。魔法なら杖術だけどスキル玉にも回数があるからな……」
反対にニアは自分の戦い方に悩んでいた。ニアはステータスから魔法への適性が高いが、呪いで魔法が封じられている。そのため、スキル玉を使って魔法を放つしかないが、それも限度がある。
「なら弓術もやればいいんじゃないか?」
ロンのスキルとは異なりニアは外套で姿を隠すことができるため弓はピッタリだろう。
ただ、急な接近戦のために杖術を持っておいても便利かもしれない。
「ニアだけたくさん……」
ニアに二つ与えたことでロンは拗ねてしまった。子供の管理は中々難しいところだ。
「じゃあ、ロンにも槍術をあげよう。これで俺達を守ってくれるんだろう?」
俺の言葉にロンは目を輝かせていた。彼の中で俺とニアを守る姿が想像できているのだろう。
ロンは外套を使っても視覚認知されやすいため基本は槍で距離を取りながら戦っていいかもしれない。全ては本人達の意思に任せるつもりだ。
ただ、二人の家族としてはなるべく前では戦って欲しくないのが現状だ。
基本的に俺が戦い、援護射撃とかをしてもらえると一番助かる。
「まずは武器を買いに行くか!」
今回のスキル玉はただ持っていても、武器がなければ意味がなかった。そのため俺達は食事を終えると武器屋に向かった。
ロンには剣と槍を与えて、ニアには弓矢と小さめな杖を買うことにした。
一気に武器を買ったため値段は高くついたが、武器を目の前にキラキラした目をされたら買わないわけにはいかなかった。
「全部で5500Gか……。よし、今度は実戦してみるか?」
武器も値段によっては安いものもあるが、命がかかっていれば多少高くても仕方ない。ここ最近は魔石で順調にお金を稼いでいるため問題はない。
全てメジストがスキル玉にしているからできる商売だ。
俺達はそのままいつもの森に向かって魔物を倒しに行くことにした。
しかし、このスキル玉に問題があったのをこの時は誰も気づくことはなかった。
「お兄ちゃん早く起きて!」
今日もロンとニアを抱きかかえて寝ていたはずが、いつのまにかいなくなっていた。
「もう少し寝かせてくれよ」
むしろ二人は俺のお腹の上ではしゃいでいた。朝から元気なのは獣人の特徴なのか、それとも単に俺が苦手なのかどっちなんだろうか。
「早くー!」
そんな俺を二人は必死に起こそうと揺する。
「ああ起き――」
「お兄ちゃんスキル玉がたくさんだよ」
俺はニアの声で体を起こした。スキル玉と言われれば、俺が唯一ステータスをカバーできる方法なのだ。
「あっ、にいちゃ起きた!」
「ひょっとして嘘なのか……とりあえずまた後で起こし――」
二人をそんな風に育て……いや、教育したつもりはなかったが嘘をつくのはいけないな。
俺は再び布団の中に潜り寝返りすると目の前に銀色に輝くスキル玉がいくつか転がっていた。今までにないぐらいの早さで頭は覚醒する。
「えっ……スキル玉!?」
俺の眠気はどこかに飛んでいく。しかし、今はスキル玉どころではなくなった。
「うっ……にいちゃが嘘つきって言ったー!」
「お兄ちゃんひどいよー!」
つい出てしまった言葉に二人が泣いてしまったのだ。
「あー、そんなつもりはないんだよ」
俺は優しく撫でるが二人は泣き止む様子はなかった。これぐらいの子供はすぐに傷つきやすいため、気をつけないといけないだろう。
「本当にごめんね。スキル玉をあげるから許して――」
「うん、いいよ!」
「やった!」
俺の言葉を聞いた瞬間に二人は泣き止んでいた。幼い子供の嘘泣きに騙されてしまったようだ。
そういえばこの間モーリンが生きる術として大事なことを教えたと言っていたがこのことなんだろうか。全く余計なことを教えてくれたもんだ。
もしステータスに知力という項目があったらこの子らは必ずSだろう。
俺はとりあえず布団を整えて、銀色に転がっているスキル玉を拾った。
スキル玉はブリジットのスキル屋からの配当だからか、やはり少し歪な形をしていた。
「んー、全部で5つか」
今回もらったスキル玉は5つで、どれも普通であれば"○回"や"使用無制限"と書いてあるが、このスキル玉には表示されなかった。むしろ使用回数については一切表示されていないのだ。
そして最大の特徴はスキル玉の中身だった。
「【剣術】って聞いたことないぞ?」
この世界のスキル玉は基本的に魔力を含んでいるため"○属性"や"○魔法"というスキル玉が一般的だ。だが、今目の前にあるのは【剣術】【短剣術】【弓術】【杖術】【槍術】と武器を中心的に扱うものばかりだった。
「お兄ちゃんはどれがいい?」
どうやら俺からスキルを選んでも、よかったらしい。
「じゃあ、俺は短剣術のスキル玉をもらうね」
俺は常に匠の短剣を使っていたため短剣術をもらうことにした。
「オラはにいちゃと同じやつがいいから剣術にする」
ロンは俺の戦い方を真似することが多いため、本人の希望もあり剣術を渡すことにした。
「んー、どうしよう。魔法なら杖術だけどスキル玉にも回数があるからな……」
反対にニアは自分の戦い方に悩んでいた。ニアはステータスから魔法への適性が高いが、呪いで魔法が封じられている。そのため、スキル玉を使って魔法を放つしかないが、それも限度がある。
「なら弓術もやればいいんじゃないか?」
ロンのスキルとは異なりニアは外套で姿を隠すことができるため弓はピッタリだろう。
ただ、急な接近戦のために杖術を持っておいても便利かもしれない。
「ニアだけたくさん……」
ニアに二つ与えたことでロンは拗ねてしまった。子供の管理は中々難しいところだ。
「じゃあ、ロンにも槍術をあげよう。これで俺達を守ってくれるんだろう?」
俺の言葉にロンは目を輝かせていた。彼の中で俺とニアを守る姿が想像できているのだろう。
ロンは外套を使っても視覚認知されやすいため基本は槍で距離を取りながら戦っていいかもしれない。全ては本人達の意思に任せるつもりだ。
ただ、二人の家族としてはなるべく前では戦って欲しくないのが現状だ。
基本的に俺が戦い、援護射撃とかをしてもらえると一番助かる。
「まずは武器を買いに行くか!」
今回のスキル玉はただ持っていても、武器がなければ意味がなかった。そのため俺達は食事を終えると武器屋に向かった。
ロンには剣と槍を与えて、ニアには弓矢と小さめな杖を買うことにした。
一気に武器を買ったため値段は高くついたが、武器を目の前にキラキラした目をされたら買わないわけにはいかなかった。
「全部で5500Gか……。よし、今度は実戦してみるか?」
武器も値段によっては安いものもあるが、命がかかっていれば多少高くても仕方ない。ここ最近は魔石で順調にお金を稼いでいるため問題はない。
全てメジストがスキル玉にしているからできる商売だ。
俺達はそのままいつもの森に向かって魔物を倒しに行くことにした。
しかし、このスキル玉に問題があったのをこの時は誰も気づくことはなかった。
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