上 下
7 / 141

7.一般ポーターとの違い 【side:アドル】

しおりを挟む
 俺は他の男と比べて良い人生を過ごしている。強い能力とみんなが見惚れるほどの容姿で今も女には困ってはいない。

「あん、マリベルだけズルい!」

「そんなこと言うなよ。シャルロもこっちに来いよ」

「やった! アテナも恥ずかしがってないでこっちに来なよ」

「わわわ、私は――」

 俺はアテナに口づけをしながら服を脱がしていく。この女達は俺の才能に惚れ込んで付いてきた奴らだ。毎日どこに行っても一緒で三人の相手を同時にするのは疲れるがそれもモテる男の宿命だ。

「ねぇ、メルロはいいの?」

「ああ、あいつか。俺に興味がないやつはいらないわ。それより三人で気持ち良くしてくれ」

 ウォーレンの代わりに入れたアイテムボックス持ちのメルロはとにかく見た目が最高だった。

 だから声をかけたのに俺の才能には全く興味がないのか近寄ってこない。

 勇者になった俺が声をかけたら股を開いて寄ってくると思ったが、あいつは力を欲していたわけではないようだ。

 今の俺には一人の女より三人の女と楽しんだ方がいいからな。外にいるメルロに聞こえるように、声が漏れ出るほど俺達は楽しんだ。

 きっと女なら艶やかな声を聞いたら体が疼いて仕方ないだろう。





 朝起きると外は騒がしくなっていた。どうやら女性同士で言い合いをしているようだ。

「おい、どうしたんだ?」

「だから言ったじゃない。アイテムボックスは限度があるって」

 昨日俺達があんなに激しい夜を過ごしたからなのか、メルロは朝から文句を言っていた。そんなに俺のことを取り合いしたいなら混ざってこれば良いものを……。

「お前も混ざれば――」

 声をかけるとメルロは俺を蔑む目で見ていた。どこかその瞳にも背筋がゾクゾクとして朝から元気になりそうだ。

 話を聞いているとどうやら荷物が収納できないらしい。アイテムボックス持ちが収納できないとはどういうことだろうか。

 アイテムボックスといえばなんでも入れられる、ポーターの中では最上位のスキルだ。お金しか持っていないあいつとは違う。

「そもそも私はお金が持てれば良いと言われてパーティーに誘われたわ」

 確かに俺はメルロにそう言って声をかけたが、アイテムボックス持ちなら荷物を持ってもらうのが当たり前だ。

「お金が少ない今なら荷物は持てるだろ?」

 今俺達が稼いだ金は大白金貨2枚ほどだ。勇者パーティーになると、今までとは比べ物にならないぐらい稼ぎが良い。どんどん金の方から舞い込んでくる。

「大白金貨がどれぐらいの重さか知ってて言ってるのかしら? ここにある荷物と同じ質量よ」

 指差ししていたのは俺達五人分のテントと食料だった。

 確かに行きは荷物が全て入ったが、大白金貨になれば質量はあるが大きさはそこまで大きいわけではないから問題ないはずだ。

「ポーターは基本的にサイズじゃなくて質量で荷物の量が決まっているのよ。勇者なのにそんなこともわからないのかしら」

 俺は何を言っているのかわからなかった。あの男は荷物が収納できないが、どれだけでも大白金を収納できていた。

 お金の管理はいつもあいつがやっていたから、俺はそんなことを知らない。むしろ知る気もなかった。

「メルロちゃんは何を言ってるの? 持てない分あなたが持てばいいのよ?」

「脳まであいつと一緒で腐ってるようね」

「ポーターの分際で!」

「これでも冒険者として戦う実力はあるわよ。私に挑む気かしら?」

 女性達は今にも戦いそうになっていた。まさかメルロが戦えるとは俺も知らない。俺は間に入って戦う前に止める。

「おいおい、流石に女性に対してそんなことはさせられないだろう」

 入らない物を一人に持たせることは流石に俺もできなかった。だって食料に関してもかなりの量がある。

「だってあいつはそれぐらい普通に持って歩いてたわ?」

 聖女のスキルを持っているシャルロはお嬢様育ちで俺に一目惚れして冒険者になった女だ。俺がメルロに好意があるのを知っているのか、何かある度にメルロに噛みついていた。

「あんた達がこんなに荷物を持って来なければ済むものよ。そもそも自分の荷物は自分で運んで、お金はもらった地域で使うのが冒険者としての当たり前よ」

 確かにメルロが言うことは冒険者の中では当たり前のことだ。ただ、俺達は勇者パーティーなのだ。その分一回に稼ぐお金の量が違う。

「そもそもいくつも討伐依頼を受けるのが間違いよ」

 そんなことを言っても俺達はそれが当たり前だったのだ。

「こんなことならあいつを辞めさせなければよかったわね。金もいらないしなんでも言うこと聞いてくれるから便利だったわ」

 魔女のマリベルはウォーレンの話を出してきた。そもそも俺以外の男の話が出るのもパーティーにいるのも気に食わなかった。

 俺はあいつが何もできないくせに、みんなから評価されるのが昔から許せない。俺の故郷でも俺よりあいつの話ばかりだ。

「黙れ! 俺が運ぶから何も話すな」

 いらないテントと最低限の食料以外は捨てて、俺はメルロから荷物を奪い背負った。あいつの存在が無ければ俺はこんな気持ちにならなかったはずだ。

「またメルロだけ……私のアドルを……絶対許さないわ」

 シャルロは何かを言っていたが、俺はあいつにイラつき話を聞いていなかった。

「ははは、ウォーレン。俺から逃げられると思うなよ」

 街に戻ったらあいつが生きていたのを後悔するぐらい痛めつけることを考えていると、自然と背負っている荷物が軽く感じた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

処理中です...