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第六章 春の準備
177.ママ聖女、再び貴族街にいく
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「では、お姉様行きましょうか」
「お前いつ着替えたんだ?」
「さっきですよ? せっかくならお揃いの服が着たいですわ」
子ども達の準備を終えて、出発しようとしたらアンフォもドレスからズボンスタイルに履き替えていた。
最近は動きやすさを優先してズボンを履いていたからね……。
部屋を貸して欲しいと言われて、許可を出したら従者達に手伝ってもらって着替えていた。
それなら初めからズボンを履いてきたら良いのにね。
レナードみたいな人でなければ、ズボンに抵抗があると思ったが、アンフォはそうではないらしい。
バッカアといい、この兄妹って頭が思ったより柔軟のようだ。
「やっぱり貴族でもドレスは動きにくいんですね」
「重たいドレスが多いですからね」
プレゼントされたドレスは大量に生地を使っているため、どれも重みがあった。
それにスタイルを強調させるためのコルセットや、スカートが広がりやすいように、張り骨みたいなのも着けている。
「胸の下で切り替えがあって、シンプルなシルエットのドレスってないんですか?」
私のイメージしているドレスはゴテゴテなドレスではなく、柔らかくふんわりしているものだ。
なぜかみんなの視線が集まってくる。
おかしなことでも言ったのだろうか。
「マミ先生、それってなんですか?」
「お姉様、私も教えてほしいです!」
特に女性であるレナードやアンフォは興味津々だ。
普段からドレスが重いことを気にしていたのだろう。
「なんだったかな……? エン……エンパイア?」
映画やドラマに出てくる古代ギリシャやローマの話にそんなドレスが出ていた気がする。
結婚する予定もなかった私がドレスのことを知ることもないから曖昧だ。
「今日はそれも作ってもらいましょう!」
「私もお姉様とお揃いにしますわ」
「いや……私はドレスなんて必要ない――」
「いります!」
この人達はなぜここまでドレスを押し付けてくるのだろうか。
「まるで春に貴族の社交パーティーでもあるような……」
「貴族の社交パーティーならあるぞ?」
「えっ……?」
どうやら考えていたことが口から出ていたようだ。
「おい、お前!」
「兄様!」
「バカ!」
そんなバッカアの口を3人は塞いでいた。
血沼の暴君と呼ばれていたバッカアにそんなことをしても良いのかと思ったが、それよりも3人の態度が気になった。
「ねぇ、それはどういうことかしら?」
「いや……」
「私は何も言ってないですよ?」
「お姉様に兄の婚約者として参加――」
「おい、マミ先生は俺と一緒に参加するつもりだ」
「あなた達揃いも揃ってバカなの!?」
ふーん……。
この人達は私を貴族の社交パーティーに無理やり連れて行こうとしていたってことか。
だから制服の提案とか言って、ドレスをプレゼントしていたのね。
「皆さんそこに座って」
「えっ……」
そんな子犬のような顔をしても私は許さないからね。
「早く正座する!」
「はい……」
貴族4人は渋々その場で正座をしていた。
♢
説教を終えた私はお店を一緒にやるハム達を連れて洋服店からあるところに向かっていた。
「おい、なんで俺達怒られたんだ?」
「バカ兄が勝手なことを言ったからじゃないの?」
「そうだ、お前のせいだ!」
「やっぱりバカはバカだね……」
「俺だけじゃないだろ!」
「でも理由を話したら先生も協力してくれるよ?」
「さすがにあそこまで怒ってたら、来てくれるかはわからないぞ」
孤児院の玄関で散々怒られた4人はクロを含めてコソコソと内緒話をしていた。
バッカアだけはなんで怒られたのかわかっていなさそうだった。
注意している時も、婚約者として一緒に行かないかと誘ってくるぐらいだからね。
「しぇんしぇいはパーティーにいかないの?」
「私?」
手を繋いでいるリリがパーティーに行かないかと聞いてきた。
「いや、貴族のマナーもダンスもわからないのよ。それに私みたいな人が行ってもね?」
「でも、あんなに連れて行こうとするには理由があるんじゃない? 例えばお店の集客の宣伝とか……」
隣にいたキキも気になっていたようだ。
「「「それだ!」」」
うん、今頃そう言っても遅いからね。
キキの言う通りお店の宣伝にはなっただろう。
ただ、私達がやる予定のお店って一般大衆向けなのを忘れてはいけない。
もう貴族に関わるのだけは嫌だからね。
「おっ……お疲れ様です!」
今日も貴族街の門番をしている第二騎士団員は姿勢を正して挨拶を返す。
それをマネするかのように、騎士団員やクロは拳を胸の前に置く。
「はぁー、本当に行くんですか?」
私は大きくため息を吐く。
今まで貴族街に行くとは思っていなかったからね。
「どこかに行かれるんですか?」
「カゼキ商会に用事があって……」
洋服店で制服に使えそうな服を探しに行ったが、似たような服があったとしても、どれも普段着に近くボロボロの見た目をしていた。
お店をするのに見窄らしい格好をするのも気が引ける。
そこでカゼ商会に相談することになったのだ。
「そうなんですね。貴族御用達のお店なので気をつけてくださいね」
門番もクロ達のことを知っているため、少し心配そうに見ていた。
できれば私もいきたくないからね。
「それに今は学園の生徒達が帰ってきたばかりなので……」
「はぁー」
門が少しずつ開き、綺麗に設備された道が見えてくる。
私はお店の制服を考えるだけだからね!
心にそう言い聞かせて足を踏み入れていく。
最悪なタイミングで私は再び貴族街に来ることになったようだ。
───────────────────
【あとがき】
いよいよ2巻の発売が来週に迫ってきました。
購入する予定の方はぜひ予約していただけると嬉しいです・:*+.\(( °ω° ))/.:+
2巻は1巻と違って部数も減るので、書店に置かれるかもわからないですからね……泣
「お前いつ着替えたんだ?」
「さっきですよ? せっかくならお揃いの服が着たいですわ」
子ども達の準備を終えて、出発しようとしたらアンフォもドレスからズボンスタイルに履き替えていた。
最近は動きやすさを優先してズボンを履いていたからね……。
部屋を貸して欲しいと言われて、許可を出したら従者達に手伝ってもらって着替えていた。
それなら初めからズボンを履いてきたら良いのにね。
レナードみたいな人でなければ、ズボンに抵抗があると思ったが、アンフォはそうではないらしい。
バッカアといい、この兄妹って頭が思ったより柔軟のようだ。
「やっぱり貴族でもドレスは動きにくいんですね」
「重たいドレスが多いですからね」
プレゼントされたドレスは大量に生地を使っているため、どれも重みがあった。
それにスタイルを強調させるためのコルセットや、スカートが広がりやすいように、張り骨みたいなのも着けている。
「胸の下で切り替えがあって、シンプルなシルエットのドレスってないんですか?」
私のイメージしているドレスはゴテゴテなドレスではなく、柔らかくふんわりしているものだ。
なぜかみんなの視線が集まってくる。
おかしなことでも言ったのだろうか。
「マミ先生、それってなんですか?」
「お姉様、私も教えてほしいです!」
特に女性であるレナードやアンフォは興味津々だ。
普段からドレスが重いことを気にしていたのだろう。
「なんだったかな……? エン……エンパイア?」
映画やドラマに出てくる古代ギリシャやローマの話にそんなドレスが出ていた気がする。
結婚する予定もなかった私がドレスのことを知ることもないから曖昧だ。
「今日はそれも作ってもらいましょう!」
「私もお姉様とお揃いにしますわ」
「いや……私はドレスなんて必要ない――」
「いります!」
この人達はなぜここまでドレスを押し付けてくるのだろうか。
「まるで春に貴族の社交パーティーでもあるような……」
「貴族の社交パーティーならあるぞ?」
「えっ……?」
どうやら考えていたことが口から出ていたようだ。
「おい、お前!」
「兄様!」
「バカ!」
そんなバッカアの口を3人は塞いでいた。
血沼の暴君と呼ばれていたバッカアにそんなことをしても良いのかと思ったが、それよりも3人の態度が気になった。
「ねぇ、それはどういうことかしら?」
「いや……」
「私は何も言ってないですよ?」
「お姉様に兄の婚約者として参加――」
「おい、マミ先生は俺と一緒に参加するつもりだ」
「あなた達揃いも揃ってバカなの!?」
ふーん……。
この人達は私を貴族の社交パーティーに無理やり連れて行こうとしていたってことか。
だから制服の提案とか言って、ドレスをプレゼントしていたのね。
「皆さんそこに座って」
「えっ……」
そんな子犬のような顔をしても私は許さないからね。
「早く正座する!」
「はい……」
貴族4人は渋々その場で正座をしていた。
♢
説教を終えた私はお店を一緒にやるハム達を連れて洋服店からあるところに向かっていた。
「おい、なんで俺達怒られたんだ?」
「バカ兄が勝手なことを言ったからじゃないの?」
「そうだ、お前のせいだ!」
「やっぱりバカはバカだね……」
「俺だけじゃないだろ!」
「でも理由を話したら先生も協力してくれるよ?」
「さすがにあそこまで怒ってたら、来てくれるかはわからないぞ」
孤児院の玄関で散々怒られた4人はクロを含めてコソコソと内緒話をしていた。
バッカアだけはなんで怒られたのかわかっていなさそうだった。
注意している時も、婚約者として一緒に行かないかと誘ってくるぐらいだからね。
「しぇんしぇいはパーティーにいかないの?」
「私?」
手を繋いでいるリリがパーティーに行かないかと聞いてきた。
「いや、貴族のマナーもダンスもわからないのよ。それに私みたいな人が行ってもね?」
「でも、あんなに連れて行こうとするには理由があるんじゃない? 例えばお店の集客の宣伝とか……」
隣にいたキキも気になっていたようだ。
「「「それだ!」」」
うん、今頃そう言っても遅いからね。
キキの言う通りお店の宣伝にはなっただろう。
ただ、私達がやる予定のお店って一般大衆向けなのを忘れてはいけない。
もう貴族に関わるのだけは嫌だからね。
「おっ……お疲れ様です!」
今日も貴族街の門番をしている第二騎士団員は姿勢を正して挨拶を返す。
それをマネするかのように、騎士団員やクロは拳を胸の前に置く。
「はぁー、本当に行くんですか?」
私は大きくため息を吐く。
今まで貴族街に行くとは思っていなかったからね。
「どこかに行かれるんですか?」
「カゼキ商会に用事があって……」
洋服店で制服に使えそうな服を探しに行ったが、似たような服があったとしても、どれも普段着に近くボロボロの見た目をしていた。
お店をするのに見窄らしい格好をするのも気が引ける。
そこでカゼ商会に相談することになったのだ。
「そうなんですね。貴族御用達のお店なので気をつけてくださいね」
門番もクロ達のことを知っているため、少し心配そうに見ていた。
できれば私もいきたくないからね。
「それに今は学園の生徒達が帰ってきたばかりなので……」
「はぁー」
門が少しずつ開き、綺麗に設備された道が見えてくる。
私はお店の制服を考えるだけだからね!
心にそう言い聞かせて足を踏み入れていく。
最悪なタイミングで私は再び貴族街に来ることになったようだ。
───────────────────
【あとがき】
いよいよ2巻の発売が来週に迫ってきました。
購入する予定の方はぜひ予約していただけると嬉しいです・:*+.\(( °ω° ))/.:+
2巻は1巻と違って部数も減るので、書店に置かれるかもわからないですからね……泣
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