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第六章 春の準備
170.ママ聖女、実験をする
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「ママ先生!」
「しぇーんしぇい!」
子ども達に起こされて私は目を覚ます。
今日も外の温度が低いのがわかる。
子ども達の口から白い息が出ていた。
寒さに負けた私はひっそりとテバサキの中に隠れようとしたら、体が軽くなった。
「朝だ」
私を持ち上げたのはアルヴィンだ。
朝から物理的な近距離攻撃に私の体も自然と熱くなる。
正直言って恥ずかしい。
なぜ、移動するときは基本的に運ばれるのだろうか。
「自分で歩けますよ」
私はアルヴィンの腕から降りようとしたが、中々降ろしてくれない。
朝って口臭とかも気になるし、髪の毛は寝癖でボサボサだ。
女性としてはあるまじき見た目をしているのに、どこに向かおうとしているのかな?
「それにしても寒いですね」
「そろそろ春が近づいてきているからな」
春が近づいてくると一気に寒くなって、暖かくなってくるらしい。
これだけ寒いと春が待ち遠しい。
「キラキラしてるね!」
「前はそれどころじゃなかったもんね」
「ママ先生のおかげだね」
「ママ先生もキラキラしてるよ」
「しぇんしぇいはほうしぇきだもんね!」
子ども達が玄関に集まって何か騒いでいる。
よほど楽しい話をしているのか、みんなニコニコとしている。
ただ、玄関の扉が開いていて風が中に入ってくる。
いつもは閉めているのになぜ開けているのだろう?
外に視線を向けるとそこには白く輝く雪が降っていた。
「雪か……」
小さな声でつぶやいたはずなのに、みんなの耳がピクピクとしている。
耳が良いから聞こえたんだね。
「雪?」
「ゆっきー?」
「しぇんしぇいのかのじょ?」
ちびっこの言葉でさらに私に視線が集まる。
急にアルヴィンの抱きしめる力も強くなったからね。
「彼女じゃないわよ」
「ふぅー」
「よかったね。ママ先生はみんなのものだもんね」
どうやら私が誰かの特別になることが嫌らしい。
「私はみんなのママ先生だからね」
私が誰かのものになることはないだろう。
それに私はモテないママ先生だからね。
それにしてもさっきから抱きしめる力が強いな……。
「アルヴィン、そろそろ降ろしたらどう?」
「そうか」
レナードが気を利かせてアルヴィンに伝えてくれた。
言われたアルヴィンは渋々私を降ろした。
無表情で私を見つめるってことは、何かを求めているのだろう。
とりあえずお礼だけ伝えておいた方が良いのかな?
「ありがとうございます?」
「ああ、俺はマミ先生の騎士だからな」
「兄ちゃん、ママ先生の騎士はオレだからね」
ほらほら、そういうこと言うとまたクロと言い合いしちゃうからね。
仲が良いのか悪いのかわからない二人を放っておいて私も外に出る。
「雪って久々だなー」
「マミ先生が住んでいたところは雪というのがよく降ってたんですか?」
「私のところはたまに降るぐらいですよ。雪合戦とか雪だるまとかよく作って――」
「キキも雪合戦したい!」
「オイラもする!」
「ハムも雪だるま食べる!」
「雪だるまはさすがに食べられないかな」
ハムは相変わらずの食いしん坊だね。
「食べるならかき氷かな?」
「ハム、かき氷食べる!」
雪を食べるならまだかき氷を食べた方が良いだろう。
そういえば夏の時にかき氷は食べてなかったもんね。
「さすがにこの季節は寒いかな。ひょっとしたらレナードさんがかき氷を出せるかもしれないですね」
「かき氷ですか?」
「はい。雪って氷の結晶で空気を多く含んでいるんです」
「ママ先生もっと詳しく!」
「ええ、私にもわかりやすく教えてください!」
気づいたら頃にはキキとレナードの勉強会が始まりそうだ。
まだ雪が積もってもいないから、外で遊ぶこともできない。
今日は朝食を食べたら勉強をする日になりそうだね。
台所に向かった私は早速朝食の準備を始める。
「先生何作るの?」
「今日はポタージュスープとハーブトーストを作ってみようかな」
「ポタージュスープ?」
「ハーブトースト?」
ハムとリリは同じ方に首を傾げていた。
その姿についつい微笑ましくなる。
そもそも今までパンをトーストすることがなかった。
今回は後ろにいるアルヴィンの視線がどうしても痛かったからね。
今もクロとどっちが一番手伝いができるか言い合っている。
それなら手伝ってもらおうかな。
「ポタージュスープはじゃがいも細かく刻んでいくね」
「それは俺がやる!」
アルヴィンが真っ先にお手伝いをすると言い出した。
クロはまだ包丁を持たせてないからできないもんね。
「オレは……」
その隣ではクロが寂しそうな顔をしていた。
孤児院のお兄ちゃんなのに、頼ってもらえないと思ったらすぐに落ち込むもんね。
「そんなクロにはハーブを切ってもらおうかな」
ハムとリリには迷惑をかけちゃうけど、お兄ちゃん二人はこうなると歯止めが効かない。
「ハムは私がじゃがいもの剥き方を教えるね」
「うん!」
ハムには小さなマイ包丁がある。
それを使ったじゃがいもの皮剥きを教えて、それをアルヴィンにある程度の大きさまで刻んでもらう。
「リリはオイーブオイルを持ってきて、ハーブを漬け込んでおいてね」
「はーい!」
イメージとしてはガーリックトーストを作ろうと思っている。
ニンニクよりは匂いはキツくないが、香辛野菜とハーブを使って似たような物が作れないかと思っていた。
直接カゼキ商会と関わるようになって、あまり使わなさそうな変わった食材を見せてもらった時に、ニンニクっぽいものを見つけた。
ついでに異世界のハーブも買えたため、地味に実験も含まれている。
嗅覚が優れているクロとリリなら、合いそうな組み合わせとかわかるんじゃないのかな?
今日のご飯も楽しみだね。
───────────────────
【あとがき】
第六章を始めていきます!
引き続きよろしくお願いします!
「しぇーんしぇい!」
子ども達に起こされて私は目を覚ます。
今日も外の温度が低いのがわかる。
子ども達の口から白い息が出ていた。
寒さに負けた私はひっそりとテバサキの中に隠れようとしたら、体が軽くなった。
「朝だ」
私を持ち上げたのはアルヴィンだ。
朝から物理的な近距離攻撃に私の体も自然と熱くなる。
正直言って恥ずかしい。
なぜ、移動するときは基本的に運ばれるのだろうか。
「自分で歩けますよ」
私はアルヴィンの腕から降りようとしたが、中々降ろしてくれない。
朝って口臭とかも気になるし、髪の毛は寝癖でボサボサだ。
女性としてはあるまじき見た目をしているのに、どこに向かおうとしているのかな?
「それにしても寒いですね」
「そろそろ春が近づいてきているからな」
春が近づいてくると一気に寒くなって、暖かくなってくるらしい。
これだけ寒いと春が待ち遠しい。
「キラキラしてるね!」
「前はそれどころじゃなかったもんね」
「ママ先生のおかげだね」
「ママ先生もキラキラしてるよ」
「しぇんしぇいはほうしぇきだもんね!」
子ども達が玄関に集まって何か騒いでいる。
よほど楽しい話をしているのか、みんなニコニコとしている。
ただ、玄関の扉が開いていて風が中に入ってくる。
いつもは閉めているのになぜ開けているのだろう?
外に視線を向けるとそこには白く輝く雪が降っていた。
「雪か……」
小さな声でつぶやいたはずなのに、みんなの耳がピクピクとしている。
耳が良いから聞こえたんだね。
「雪?」
「ゆっきー?」
「しぇんしぇいのかのじょ?」
ちびっこの言葉でさらに私に視線が集まる。
急にアルヴィンの抱きしめる力も強くなったからね。
「彼女じゃないわよ」
「ふぅー」
「よかったね。ママ先生はみんなのものだもんね」
どうやら私が誰かの特別になることが嫌らしい。
「私はみんなのママ先生だからね」
私が誰かのものになることはないだろう。
それに私はモテないママ先生だからね。
それにしてもさっきから抱きしめる力が強いな……。
「アルヴィン、そろそろ降ろしたらどう?」
「そうか」
レナードが気を利かせてアルヴィンに伝えてくれた。
言われたアルヴィンは渋々私を降ろした。
無表情で私を見つめるってことは、何かを求めているのだろう。
とりあえずお礼だけ伝えておいた方が良いのかな?
「ありがとうございます?」
「ああ、俺はマミ先生の騎士だからな」
「兄ちゃん、ママ先生の騎士はオレだからね」
ほらほら、そういうこと言うとまたクロと言い合いしちゃうからね。
仲が良いのか悪いのかわからない二人を放っておいて私も外に出る。
「雪って久々だなー」
「マミ先生が住んでいたところは雪というのがよく降ってたんですか?」
「私のところはたまに降るぐらいですよ。雪合戦とか雪だるまとかよく作って――」
「キキも雪合戦したい!」
「オイラもする!」
「ハムも雪だるま食べる!」
「雪だるまはさすがに食べられないかな」
ハムは相変わらずの食いしん坊だね。
「食べるならかき氷かな?」
「ハム、かき氷食べる!」
雪を食べるならまだかき氷を食べた方が良いだろう。
そういえば夏の時にかき氷は食べてなかったもんね。
「さすがにこの季節は寒いかな。ひょっとしたらレナードさんがかき氷を出せるかもしれないですね」
「かき氷ですか?」
「はい。雪って氷の結晶で空気を多く含んでいるんです」
「ママ先生もっと詳しく!」
「ええ、私にもわかりやすく教えてください!」
気づいたら頃にはキキとレナードの勉強会が始まりそうだ。
まだ雪が積もってもいないから、外で遊ぶこともできない。
今日は朝食を食べたら勉強をする日になりそうだね。
台所に向かった私は早速朝食の準備を始める。
「先生何作るの?」
「今日はポタージュスープとハーブトーストを作ってみようかな」
「ポタージュスープ?」
「ハーブトースト?」
ハムとリリは同じ方に首を傾げていた。
その姿についつい微笑ましくなる。
そもそも今までパンをトーストすることがなかった。
今回は後ろにいるアルヴィンの視線がどうしても痛かったからね。
今もクロとどっちが一番手伝いができるか言い合っている。
それなら手伝ってもらおうかな。
「ポタージュスープはじゃがいも細かく刻んでいくね」
「それは俺がやる!」
アルヴィンが真っ先にお手伝いをすると言い出した。
クロはまだ包丁を持たせてないからできないもんね。
「オレは……」
その隣ではクロが寂しそうな顔をしていた。
孤児院のお兄ちゃんなのに、頼ってもらえないと思ったらすぐに落ち込むもんね。
「そんなクロにはハーブを切ってもらおうかな」
ハムとリリには迷惑をかけちゃうけど、お兄ちゃん二人はこうなると歯止めが効かない。
「ハムは私がじゃがいもの剥き方を教えるね」
「うん!」
ハムには小さなマイ包丁がある。
それを使ったじゃがいもの皮剥きを教えて、それをアルヴィンにある程度の大きさまで刻んでもらう。
「リリはオイーブオイルを持ってきて、ハーブを漬け込んでおいてね」
「はーい!」
イメージとしてはガーリックトーストを作ろうと思っている。
ニンニクよりは匂いはキツくないが、香辛野菜とハーブを使って似たような物が作れないかと思っていた。
直接カゼキ商会と関わるようになって、あまり使わなさそうな変わった食材を見せてもらった時に、ニンニクっぽいものを見つけた。
ついでに異世界のハーブも買えたため、地味に実験も含まれている。
嗅覚が優れているクロとリリなら、合いそうな組み合わせとかわかるんじゃないのかな?
今日のご飯も楽しみだね。
───────────────────
【あとがき】
第六章を始めていきます!
引き続きよろしくお願いします!
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