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第五章 冬の嵐
閑話.ばあば先生、カゼキ商会との密談
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「皇太后様、カゼキ商会の方がいらっしゃいました」
「ありがとう」
私は本を閉じて応接室に向かう。
その足取りは前とは比べものにならないほど軽やかだ。
こんなに私の人生があの出来事で変わるとは思ってもいなかった。
「おまたせしました」
「いえ、すぐに参ったところなので問題ありません」
カゼキ商会の商人団長は嬉しそうな顔で微笑んでいた。
きっと良いことがあったのだろう。
「それで孤児院はどうだったかしら?」
「率直にお伝えすると、しっかりしたところで管理した方が良いかと思います。ロジャース公爵家だけでは少し心許ないかと思います」
商人団長の言っていたことに私は静かに頷く。
決してロジャース公爵家が悪いわけではない。
ただ、孤児院から生み出される利益が莫大になりそうなところが問題だった。
その発端になっているのが、聖女召喚に巻き込まれた本庄真美だ。
彼女が孤児院の価値をガラリと変えた。
「なぜそう思ったのか聞いても良いかしら?」
「はい。まず一つ目ですが、孤児院にいる子ども達の教育レベルの高さです」
私にとっては可愛らしい子ども達にしか見えなかったが、商人団長と何かあったのだろうか。
「私は孤児院にいるキキという少女に孤児院を案内されました」
「ああ、キキちゃんは可愛いわね」
キツネのような耳がぴょこっと出ており、周囲のことをよく気にしている子だ。
私の言葉に商人団長は驚いた顔をしていた。
「どうかしたかしら?」
「いえ、まずそのキキという少女ですが、商会で働いている管理者並に知識があると感じました」
「えっ!?」
キキはまだ5歳にもなっておらず、この世界に存在を認められていない。
そんなキキが褒められて、私も嬉しくなってしまった。
急いでドレスを直して、再び椅子に腰掛ける。
「孤児院では衛生管理というものがしっかりしていました」
「ああ、マミさんがしっかり指導しているものね」
「その少女はなぜ体調を崩すのか、石鹸を使うことでどんな効果があるのか説明してくれました」
「それだけではないわよね?」
「まずそのほとんどが商人団長である私の知らない話で、さらに石鹸の作り方まで細かく知っていました」
きっとマミさんが子ども達にしっかり教えていたのだろう。
「他にもその原材料になっているオイーブオイルですが、私の常識を覆すほどの油で驚きました」
「そうよね! 私も一口食べた時は驚いて、少しいただきましたわ」
オイーブオイルは孤児院で使っている油だ。
もちろん動物の脂から作ったものも使っていると聞いたが、味は格段に美味しくさっぱりしている。
脂って品質によっては動物の臭みが残っているからね。
「しかも、そのオイーブオイルを作っているのがそれまた小さな子で……」
「あー、確かリリだったかしらね?」
「あっ……はい。皇太后様は孤児院に詳しいんですね?」
私は優しく微笑んで、これ以上探りを入れられないようにする。
皇太后がただの孤児院に関わりすぎてはいけないからね。
孤児院は町の中に一つは大体存在する。
領地の貴族が孤児院を運営しているが、どこも扱いがいい加減になっているのが当たり前だ。
その中で私が関わりすぎたら、その貴族ばかりを王族が優遇していると思われてしまう。
今回でいえばロジャース公爵家を優遇することになる。
それが問題になるため、カゼキ商会に今回孤児院に行ってもらったのだ。
私だってあそこにいる子ども達の凄さには気づいているからね。
ええ、とても可愛くて健気で元気な子ばかりだったわ。
貴族の子ども達とは比べ物にならないほどだ。
でも、私じゃどうにもならないからね。
優秀な子ども達に活躍できる場を与えられるように、裏で手を貸すことしかできない。
使えない貴族達に国を任せるより、孤児院にいる優秀な子達に国を引っ張ってもらいたいくらい。
ただ、獣人なのが問題なのよね。
獣人は貴族達から嫌悪感を抱く対象ではあるし、獣人国ともそこまで関係が良くないからね。
「それで孤児院は商会でも庇護下にできそうかしら?」
「ええ、様々なところを見ても利益は出せるかと思います」
「では資金はこちらで出すのでカゼキ商会は商売の準備に協力してください」
私の言葉に商人団長は驚いた顔をしていた。
「つい先日まで私も病のせいで、ベッドに臥せていたわ。もう死ぬ寸前を助けてもらったのよ」
「あー、そういうことですね」
カゼキ商会はすぐにその時の報酬だと気づいたようだ。
「では私達カゼキ商会がお手伝いさせていただきます」
「お願いしますわ」
死にそうな私を助けてくれたマミさんに、これで少しは恩返しができたかしらね。
カゼキ商会はこの国で一番の商会と言われている。
そんな商会の庇護下に入れば、さらにあの子達が活躍できるだろう。
ロジャース公爵家が運営する孤児院で、さらにこの国一番の商会が背後にいる。
それだけでも貴族達は、恐れ多くて手を出すことができないだろう。
あと問題になるのはバカな息子と孫だけだ。
この間孫もお世話になったばかりだから、今は何もしてこないだろう。
一番怖いのはマミ先生の優秀さに気づき、政略結婚をさせないかの心配ぐらいね。
早くロジャース公爵家の三男と婚約してしまえばいいのに……。
私はその後も商人団長から話を聞いて、嬉しくなった。
またお忍びで孤児院に遊びに行きたいわね。
───────────────────
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カゼキ商会の商人団長は嬉しそうな顔で微笑んでいた。
きっと良いことがあったのだろう。
「それで孤児院はどうだったかしら?」
「率直にお伝えすると、しっかりしたところで管理した方が良いかと思います。ロジャース公爵家だけでは少し心許ないかと思います」
商人団長の言っていたことに私は静かに頷く。
決してロジャース公爵家が悪いわけではない。
ただ、孤児院から生み出される利益が莫大になりそうなところが問題だった。
その発端になっているのが、聖女召喚に巻き込まれた本庄真美だ。
彼女が孤児院の価値をガラリと変えた。
「なぜそう思ったのか聞いても良いかしら?」
「はい。まず一つ目ですが、孤児院にいる子ども達の教育レベルの高さです」
私にとっては可愛らしい子ども達にしか見えなかったが、商人団長と何かあったのだろうか。
「私は孤児院にいるキキという少女に孤児院を案内されました」
「ああ、キキちゃんは可愛いわね」
キツネのような耳がぴょこっと出ており、周囲のことをよく気にしている子だ。
私の言葉に商人団長は驚いた顔をしていた。
「どうかしたかしら?」
「いえ、まずそのキキという少女ですが、商会で働いている管理者並に知識があると感じました」
「えっ!?」
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そんなキキが褒められて、私も嬉しくなってしまった。
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きっとマミさんが子ども達にしっかり教えていたのだろう。
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今回でいえばロジャース公爵家を優遇することになる。
それが問題になるため、カゼキ商会に今回孤児院に行ってもらったのだ。
私だってあそこにいる子ども達の凄さには気づいているからね。
ええ、とても可愛くて健気で元気な子ばかりだったわ。
貴族の子ども達とは比べ物にならないほどだ。
でも、私じゃどうにもならないからね。
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ただ、獣人なのが問題なのよね。
獣人は貴族達から嫌悪感を抱く対象ではあるし、獣人国ともそこまで関係が良くないからね。
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カゼキ商会はすぐにその時の報酬だと気づいたようだ。
「では私達カゼキ商会がお手伝いさせていただきます」
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カゼキ商会はこの国で一番の商会と言われている。
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