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第五章 冬の嵐
169.ママ聖女、ハンバーガーを食べる
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できたばかりのハンバーガーを目の前に、私達は手を合わせる。
ハムをはじめとする食いしん坊の子達は、よだれを垂らしながら我慢して待っていた。
今日はカゼキ商会が来ているから、普段よりも時間が遅くなってしまったから仕方ない。
「手を合わせて」
「あわしぇました!」
「あわせました!」
「いただきます!」
「いたましゅ!」
「いましゅ!」
食事の挨拶を終えると、子ども達は一斉にハンバーガーを掴んで口に入れる。
もちろんそこにアルヴィンも加わっている。
アルヴィンは不意に私をドキドキさせてくるが、こうやって見ると子どもとそこまで変わらない。
私よりも随分身長が高く無邪気な少年。
そんな風に感じてしまう。
「うんみゃー!」
「うまうま!」
ハンバーガーを一口、二口食べると周囲から美味しいという声が聞こえてきた。
私も一口食べてみる。
「ふふふ、懐かしい味がするね」
つい私も頬が緩んでしまう。
「ママ先生、これは何の味?」
キキはハンバーガーのソースが気になっているのだろう。
味つけのソースにもちゃんと孤児院らしさを出している。
「これはオーロラソースって言って、ケチャップとマヨネーズを混ぜているだけなんだ」
日本でよく食べられているオーロラソースは、ケチャップとマヨネーズを同量、もしくはマヨネーズが多めで作られている。
今回ハンバーガーの味付けをどうするか迷った。
ただ、テリヤキ味でも良かったが、醤油と砂糖だけでは物足りなかった。
それに異世界の醤油って大豆で作る醤油より、魚醤にどこか近い。
少しクセがあると言えば良いのかな?
そんな醤油を使うなら、孤児院で馴染みのあるケチャップとマヨネーズで味を整えることにした。
どうやら反応からして成功したみたいだね。
「噂になっていたマヨネーズはここで食べられるんですね」
「ええ、あの時は色々と大変でしたね」
マヨネーズを学園の生徒達が食べて、お腹を壊したことはカゼキ商会の人も知っているようだ。
一時期私達は疑われていたしね。
「まろやかな味にどこか酸味があるのは……?」
「マヨネーズだけだとまろやかな味になるので、少しレモンの果汁を入れてますね」
「細かい調整をしているんですね」
「いや、料理人ではないのでそこまでですよ」
朝早くから食べているため、スッキリとした味わいにできるように少しレモン果汁を入れたのが良かったのかな?
オーロラソースって濃厚なマヨネーズの味わいにケチャップの酸味が足されて、うま味と甘味のバランスがちょうど良い。
ただ、私が作るマヨネーズはとにかく濃厚に出来ている。
この世界の卵はとにかく濃厚だからね。
だからレモン果汁を入れてちょうど良かった。
「リリが作ったオイーブオイルも食べて!」
リリは器に入ったオイーブオイルを前に置いた。
「オイーブオイルはサラダにかけても、パンに直接つけても美味しく召し上がれます」
カゼキ商会の人は少し疑いながらも、パンを一口サイズに千切り、オイーブオイルを浸した。
この世界の油はどこかギトギトして、動物性で少し臭みがあるのが特徴。
そんな印象の強い油を直接パンに浸して食べるのは抵抗があるのだろう。
ゆっくりと口元まで運んでいく。
そんな姿をリリは目を大きく開けて見ていた。
「おいしい?」
「ああ、まるで同じオイルとは思わないですね」
何度もオイーブオイルを付けては、口にパンを入れ込んでいく。
まるでハムやリリが詰め込んで、パンを食べる姿に似ていた。
「私が住んでいたところには、美味しいオイルが多いんですよね」
オリーブオイルやごま油、エゴマ油などの種類も豊富だ。
健康に良い商品はいくつもあったからね。
それにオイーブオイルの凄いところは、石鹸にも使われているところだ。
小さい声で石鹸って言葉も聞こえているから、キキかリリが説明したのだろう。
「料理は楽しんでもらえましたか?」
「とても美味しい料理を準備していただきありがとうございます」
カゼキ商会の人はその場で立ち上がり頭を下げた。
「ぜひとも、カゼキ商会も関わらせていただけると嬉しいです」
「えっ……」
ひょっとしたらカゼキ商会に認められたのかな?
そんなつもりはないと言っていたが、いつのまにか評価されていた。
周囲を見渡すとみんなニコニコした顔をしていた。
よほどハンバーガーが美味しかったのだろう。
色んな人がこんなに笑顔になってくれたら嬉しいな。
病院で働いていたら、辛い顔をしている人ばかりだった。
こういうのも悪くないね。
それに子ども達が自立する手伝いも必要になってくる。
今後も人との関わりは大事になる。
「こちらこそよろしくお願いします」
私は握手をするために手を前に出した。
これで問題なく終われそうだ。
そう思ったが私の手を握ったのはカゼキ商会の人ではなかった。
「よかったな」
手を握ったのはアルヴィンだった。
また突然の行動に私も目が点になる。
「アル兄だけずるいよ!」
「オレも握手する」
「オラも!」
「ハムもがんばった!」
「リリも!」
なぜか次々と子ども達が私に握手を求めてきた。
「ははは、すみません」
「いえいえ、とても賑やかな孤児院で来てよかったです」
そんな子ども達を見て、カゼキ商会の人は優しく微笑んでいた。
ハムをはじめとする食いしん坊の子達は、よだれを垂らしながら我慢して待っていた。
今日はカゼキ商会が来ているから、普段よりも時間が遅くなってしまったから仕方ない。
「手を合わせて」
「あわしぇました!」
「あわせました!」
「いただきます!」
「いたましゅ!」
「いましゅ!」
食事の挨拶を終えると、子ども達は一斉にハンバーガーを掴んで口に入れる。
もちろんそこにアルヴィンも加わっている。
アルヴィンは不意に私をドキドキさせてくるが、こうやって見ると子どもとそこまで変わらない。
私よりも随分身長が高く無邪気な少年。
そんな風に感じてしまう。
「うんみゃー!」
「うまうま!」
ハンバーガーを一口、二口食べると周囲から美味しいという声が聞こえてきた。
私も一口食べてみる。
「ふふふ、懐かしい味がするね」
つい私も頬が緩んでしまう。
「ママ先生、これは何の味?」
キキはハンバーガーのソースが気になっているのだろう。
味つけのソースにもちゃんと孤児院らしさを出している。
「これはオーロラソースって言って、ケチャップとマヨネーズを混ぜているだけなんだ」
日本でよく食べられているオーロラソースは、ケチャップとマヨネーズを同量、もしくはマヨネーズが多めで作られている。
今回ハンバーガーの味付けをどうするか迷った。
ただ、テリヤキ味でも良かったが、醤油と砂糖だけでは物足りなかった。
それに異世界の醤油って大豆で作る醤油より、魚醤にどこか近い。
少しクセがあると言えば良いのかな?
そんな醤油を使うなら、孤児院で馴染みのあるケチャップとマヨネーズで味を整えることにした。
どうやら反応からして成功したみたいだね。
「噂になっていたマヨネーズはここで食べられるんですね」
「ええ、あの時は色々と大変でしたね」
マヨネーズを学園の生徒達が食べて、お腹を壊したことはカゼキ商会の人も知っているようだ。
一時期私達は疑われていたしね。
「まろやかな味にどこか酸味があるのは……?」
「マヨネーズだけだとまろやかな味になるので、少しレモンの果汁を入れてますね」
「細かい調整をしているんですね」
「いや、料理人ではないのでそこまでですよ」
朝早くから食べているため、スッキリとした味わいにできるように少しレモン果汁を入れたのが良かったのかな?
オーロラソースって濃厚なマヨネーズの味わいにケチャップの酸味が足されて、うま味と甘味のバランスがちょうど良い。
ただ、私が作るマヨネーズはとにかく濃厚に出来ている。
この世界の卵はとにかく濃厚だからね。
だからレモン果汁を入れてちょうど良かった。
「リリが作ったオイーブオイルも食べて!」
リリは器に入ったオイーブオイルを前に置いた。
「オイーブオイルはサラダにかけても、パンに直接つけても美味しく召し上がれます」
カゼキ商会の人は少し疑いながらも、パンを一口サイズに千切り、オイーブオイルを浸した。
この世界の油はどこかギトギトして、動物性で少し臭みがあるのが特徴。
そんな印象の強い油を直接パンに浸して食べるのは抵抗があるのだろう。
ゆっくりと口元まで運んでいく。
そんな姿をリリは目を大きく開けて見ていた。
「おいしい?」
「ああ、まるで同じオイルとは思わないですね」
何度もオイーブオイルを付けては、口にパンを入れ込んでいく。
まるでハムやリリが詰め込んで、パンを食べる姿に似ていた。
「私が住んでいたところには、美味しいオイルが多いんですよね」
オリーブオイルやごま油、エゴマ油などの種類も豊富だ。
健康に良い商品はいくつもあったからね。
それにオイーブオイルの凄いところは、石鹸にも使われているところだ。
小さい声で石鹸って言葉も聞こえているから、キキかリリが説明したのだろう。
「料理は楽しんでもらえましたか?」
「とても美味しい料理を準備していただきありがとうございます」
カゼキ商会の人はその場で立ち上がり頭を下げた。
「ぜひとも、カゼキ商会も関わらせていただけると嬉しいです」
「えっ……」
ひょっとしたらカゼキ商会に認められたのかな?
そんなつもりはないと言っていたが、いつのまにか評価されていた。
周囲を見渡すとみんなニコニコした顔をしていた。
よほどハンバーガーが美味しかったのだろう。
色んな人がこんなに笑顔になってくれたら嬉しいな。
病院で働いていたら、辛い顔をしている人ばかりだった。
こういうのも悪くないね。
それに子ども達が自立する手伝いも必要になってくる。
今後も人との関わりは大事になる。
「こちらこそよろしくお願いします」
私は握手をするために手を前に出した。
これで問題なく終われそうだ。
そう思ったが私の手を握ったのはカゼキ商会の人ではなかった。
「よかったな」
手を握ったのはアルヴィンだった。
また突然の行動に私も目が点になる。
「アル兄だけずるいよ!」
「オレも握手する」
「オラも!」
「ハムもがんばった!」
「リリも!」
なぜか次々と子ども達が私に握手を求めてきた。
「ははは、すみません」
「いえいえ、とても賑やかな孤児院で来てよかったです」
そんな子ども達を見て、カゼキ商会の人は優しく微笑んでいた。
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