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第五章 冬の嵐
168.ママ聖女、急いで料理をする
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私はハムやシルと一緒に急いで食事の準備をする。
急にカゼキ商会が来るとは思わなかった。
しかも、お店を出すための試験も含まれているとは……。
今ある材料でどうにかしないといけないのが現状だ。
これは何かの料理番組だろうかと思ってしまう。
「やっぱりお店で出して売れそうなやつの方が良いのかな?」
材料は朝食に食べられるように買っておいたパンとサラダに使う野菜達。
他には牛乳や卵といった基本的な食材しかない。
「ケチャチキンとかは?」
「んー、お肉が足りないんだよね」
ケチャチキンは外に遠足に行った時にお弁当として作った料理だ。
お肉自体を前日に買っておいたが、今から買いに行く時間はないはず。
「それなら昨日みたいにオムライスの卵はどうかしら?」
オムライスの上だと、たぶんオムレツのことを言っているのだろう。
ただ、それだけだとパッとしない。
「少ないお肉と野菜でどうにかできて……あっ、ハンバーガーはどうかしら?」
「ハンバーガー?」
ハムとシルは首を傾げていた。
確かに今まで作ったことがなかったかな。
「ハンバーグをパンで挟む食べ物だね。お肉を全てミンチにすればどうにかなりそう」
せっかくなら持ち運びができる料理の方が良いだろう。
それにミンチにすれば、お肉の種類や部位は気にならないはず。
量が少なくても気にならないだろう。
私はレナードに声をかけようとしたが、リリとオイーブオイルを作っていたのを忘れていた。
「ミンチを作る時間が……」
「それなら私がやるわよ」
シルは包丁を手に取ると、優しく微笑んだ。
少し浮いているからか、どこか不気味に見えてしまう。
そのままシルにお願いすることにした。
「ハムはサラダの準備をしておくね」
「ハンバーグにも野菜を少し入れたいから、切る野菜は――」
「それならハムでもできるよ!」
ハムはどこからか小さな包丁を取り出した。
ペティナイフよりももう少し小さく、孤児院では見たことないサイズだ。
「それはどうしたの?」
「お礼にもらったの!」
この間風邪の治療をした時のお礼に町の人達からもらったらしい。
「これで先生のお手伝いを頑張ってって言われた!」
どうやら少しでも私の負担を減らすように、考えられてプレゼントされたのだろう。
少し心配になりながらも、私も隣でじゃがいもを切っていく。
「細かくできたわよ」
「シル助か……」
「そんな驚いた顔をして何よ?」
「いや、相変わらずすごいなーって」
シルは空中にも包丁を浮かせて、数本一緒に使っていた。
本当に人間ではないことを思い知らされる。
ただ、時間を短縮するために、今後もシルに手伝ってもらうのも良さそうだ。
私もじゃがいもを切り終えて、大体の準備は終わった。
「あとは調理をするだけね」
今回作るのはハンバーガーセットだ。
じゃがいもをあげて、ホクホクのフライドポテトとハンバーガーに入れるパティが必要になる。
「味付けだけ私がするから、あとはシルが焼けるかな?」
「ハンバーグみたいに作らないの?」
「ハンバーガーのパティはハンバーグよりもシンプルなのよ」
パティはひき肉に塩胡椒や香辛料などの調味料だけを入れて、平らに伸ばしたものだ。
ハンバーグとは異なっているのは、玉ねぎや卵、パン粉などの繋ぎを入れないで作る。
「ハムは何をすればいい?」
「ハムはパンに野菜とシルが焼いたパティを乗せて、ソースをかける作業を任せるね」
「わかった!」
ハムには一番大事な工程をお願いした。
火を使わない作業のため、一番安全ではある。
一度お手本を見せると大体は理解できていた。
「フライドポテトもできたよ!」
「じゃあ、ハムが運ぶね!」
私も揚げたてのフライドポテトをお皿に乗せていく。
皮をつけたままくし形に切ったウェッジカットで作っている。
完成したハンバーガーは想像よりも見た目が良くできていた。
ちなみにせっかくだからと、普通のパンとサラダでオイーブオイルが食べられるように準備はできている。
「みんなご飯ができたよー!」
私の声に子ども達は急いで集まってくる。
キキも案内を終えたのか、カゼキ商会の男性の手を引いて連れてきた。
「私も少しいただいても大丈夫でしょうか?」
男性の言葉に私は首を傾げる。
今回はお店に出す料理をみる意味合いもあるはずだが……。
「くくく、マミ先生勘違いしているな」
「えっ?」
「今日私が孤児院に来たのは、ただ商会と取引ができるようにするためでしたよ」
「じゃあ、今回のは皇太后からの試験ではなかったのですか?」
「はい」
どうやら私はお店に出す料理の試験だと、勝手に勘違いしていたようだ。
自然と肩の力が抜けていき、自然とその場に座り込んでしまった。
「ママ先生お腹空いたよ」
「しぇんしぇい、ごはん食べよ」
そんな私を子ども達は立ち上がらせようとするが、小さい子どもでは無理だろう。
「早くしないと冷めるぞ」
「えっ……まさか」
そう言ってアルヴィンは私を抱えた。
「急に恥ずかしいです」
アルヴィンは特に気にしていないのだろう。
「子ども達が待っているからな」
そのまま私を椅子に座らせた。
カゼキ商会の男性も見ている中での、急な行為に私は恥ずかしくなる。
今頃、赤面しているだろう。
本当にアルヴィンの行動はいつも急だからね。
ただ、そんな私達を見ていたカゼキ商会の男性はどこか嬉しそうにしていた。
急にカゼキ商会が来るとは思わなかった。
しかも、お店を出すための試験も含まれているとは……。
今ある材料でどうにかしないといけないのが現状だ。
これは何かの料理番組だろうかと思ってしまう。
「やっぱりお店で出して売れそうなやつの方が良いのかな?」
材料は朝食に食べられるように買っておいたパンとサラダに使う野菜達。
他には牛乳や卵といった基本的な食材しかない。
「ケチャチキンとかは?」
「んー、お肉が足りないんだよね」
ケチャチキンは外に遠足に行った時にお弁当として作った料理だ。
お肉自体を前日に買っておいたが、今から買いに行く時間はないはず。
「それなら昨日みたいにオムライスの卵はどうかしら?」
オムライスの上だと、たぶんオムレツのことを言っているのだろう。
ただ、それだけだとパッとしない。
「少ないお肉と野菜でどうにかできて……あっ、ハンバーガーはどうかしら?」
「ハンバーガー?」
ハムとシルは首を傾げていた。
確かに今まで作ったことがなかったかな。
「ハンバーグをパンで挟む食べ物だね。お肉を全てミンチにすればどうにかなりそう」
せっかくなら持ち運びができる料理の方が良いだろう。
それにミンチにすれば、お肉の種類や部位は気にならないはず。
量が少なくても気にならないだろう。
私はレナードに声をかけようとしたが、リリとオイーブオイルを作っていたのを忘れていた。
「ミンチを作る時間が……」
「それなら私がやるわよ」
シルは包丁を手に取ると、優しく微笑んだ。
少し浮いているからか、どこか不気味に見えてしまう。
そのままシルにお願いすることにした。
「ハムはサラダの準備をしておくね」
「ハンバーグにも野菜を少し入れたいから、切る野菜は――」
「それならハムでもできるよ!」
ハムはどこからか小さな包丁を取り出した。
ペティナイフよりももう少し小さく、孤児院では見たことないサイズだ。
「それはどうしたの?」
「お礼にもらったの!」
この間風邪の治療をした時のお礼に町の人達からもらったらしい。
「これで先生のお手伝いを頑張ってって言われた!」
どうやら少しでも私の負担を減らすように、考えられてプレゼントされたのだろう。
少し心配になりながらも、私も隣でじゃがいもを切っていく。
「細かくできたわよ」
「シル助か……」
「そんな驚いた顔をして何よ?」
「いや、相変わらずすごいなーって」
シルは空中にも包丁を浮かせて、数本一緒に使っていた。
本当に人間ではないことを思い知らされる。
ただ、時間を短縮するために、今後もシルに手伝ってもらうのも良さそうだ。
私もじゃがいもを切り終えて、大体の準備は終わった。
「あとは調理をするだけね」
今回作るのはハンバーガーセットだ。
じゃがいもをあげて、ホクホクのフライドポテトとハンバーガーに入れるパティが必要になる。
「味付けだけ私がするから、あとはシルが焼けるかな?」
「ハンバーグみたいに作らないの?」
「ハンバーガーのパティはハンバーグよりもシンプルなのよ」
パティはひき肉に塩胡椒や香辛料などの調味料だけを入れて、平らに伸ばしたものだ。
ハンバーグとは異なっているのは、玉ねぎや卵、パン粉などの繋ぎを入れないで作る。
「ハムは何をすればいい?」
「ハムはパンに野菜とシルが焼いたパティを乗せて、ソースをかける作業を任せるね」
「わかった!」
ハムには一番大事な工程をお願いした。
火を使わない作業のため、一番安全ではある。
一度お手本を見せると大体は理解できていた。
「フライドポテトもできたよ!」
「じゃあ、ハムが運ぶね!」
私も揚げたてのフライドポテトをお皿に乗せていく。
皮をつけたままくし形に切ったウェッジカットで作っている。
完成したハンバーガーは想像よりも見た目が良くできていた。
ちなみにせっかくだからと、普通のパンとサラダでオイーブオイルが食べられるように準備はできている。
「みんなご飯ができたよー!」
私の声に子ども達は急いで集まってくる。
キキも案内を終えたのか、カゼキ商会の男性の手を引いて連れてきた。
「私も少しいただいても大丈夫でしょうか?」
男性の言葉に私は首を傾げる。
今回はお店に出す料理をみる意味合いもあるはずだが……。
「くくく、マミ先生勘違いしているな」
「えっ?」
「今日私が孤児院に来たのは、ただ商会と取引ができるようにするためでしたよ」
「じゃあ、今回のは皇太后からの試験ではなかったのですか?」
「はい」
どうやら私はお店に出す料理の試験だと、勝手に勘違いしていたようだ。
自然と肩の力が抜けていき、自然とその場に座り込んでしまった。
「ママ先生お腹空いたよ」
「しぇんしぇい、ごはん食べよ」
そんな私を子ども達は立ち上がらせようとするが、小さい子どもでは無理だろう。
「早くしないと冷めるぞ」
「えっ……まさか」
そう言ってアルヴィンは私を抱えた。
「急に恥ずかしいです」
アルヴィンは特に気にしていないのだろう。
「子ども達が待っているからな」
そのまま私を椅子に座らせた。
カゼキ商会の男性も見ている中での、急な行為に私は恥ずかしくなる。
今頃、赤面しているだろう。
本当にアルヴィンの行動はいつも急だからね。
ただ、そんな私達を見ていたカゼキ商会の男性はどこか嬉しそうにしていた。
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