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第五章 冬の嵐
166.ママ聖女、突然の訪問者に悩む
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「しぇんしぇーい!」
「おきゃくしゃーん!」
翌日、朝食の準備をしていると外が騒がしくなっていた。
子ども達は外で遊んでいるため、誰かが来たことに気づいたのだろう。
それにしてもこんな時間にお客さん?
皇太后であれば、子ども達はばあば先生と呼ぶはずだしね。
「ハム達はそのままサラダの準備していてね」
「食べないから大丈夫だよ?」
「ふふ、誰もハムのこと怪しんでないよ。信じているからね」
「むー!」
ハムの言葉にくすりと笑うと、頬を大きく膨らませていた。
本当はひっそりとつまみ食いをして、注意されようとしたのだろう。
私に信じていると言われてハムはそのままサラダの準備をしていた。
子ども達が前よりイタズラっ子になった気がするのは、成長の証なんだろうか。
それとも長い期間離れていたからかな?
甘えても他の子達に紛れたら、構ってもらえなくなる。
そこでどうやってアピールするかと思ったらイタズラに行き着く子がいたのも事実だ。
子どもらしい考えだけど、ダメなことは怒らないといけないが、なるべくなら怒りたくない。
そういう子に〝信じている〟って言葉をかけると、イタズラをしなくなるのが最近の発見だ。
私は衣服を整えて玄関に向かう。
「すみません、お待たせしました」
「いえいえ、皇太后様の命でこちらに伺いました」
「皇太后様ですか?」
皇太后様が頼んだってことは、昨日言っていた案件だろうか。
「商会の方ですか?」
「はい、私達はカゼキ商会と申します」
稼ぎ商会?
どこかお金を稼ぐことに執着しているような気もするが、聞き間違えたのだろうか。
「もう一度お名前を伺ってもよろしいですか?」
「はい。カゼキ商会です」
どうやら私が聞き間違えていたようだ。
さすがに露骨に商会名をそんな名前にはしないだろう。
「カゼキ商会様ですね」
「はい。よく間違われるので大丈夫ですよ」
きっと聞き間違えていたことがバレてしまったようだ。
顔に出ていたのかな?
「しぇんしぇい、かせぎじゃなかったね?」
いや、近くにいた子ども達が首を傾げていたからだろう。
子ども達には生活するために、お金を稼ぐ必要があることを話したことがあったからね。
「それでカゼキ商会がどのようなご用件で?」
「ああ、これを渡しておこうと思いまして」
カゼキ商会が渡したのは、小さなコインのようなものだった。
そのコインが何か迷っていると、後ろからアルヴィンに声をかけられた。
「それが商会の証明書だ」
「紙ではないですね」
「ああ、紙だと破れてすぐに使えなくなるからな」
証明書っていうぐらいだから紙で持ってくるのかと思った。
そもそも紙自体が高価なのもあり、特別なコインを使っているらしい。
「それにしてもこんな朝からどんな用件だ?」
アルヴィンはどこか警戒をしていた。
商会もどこか関わると厄介な相手なんだろうか。
ちゃんと丁寧に接しておいて良かったと、今頃になって思ってきた。
「皇太后様から朝に伺ってくださいと言われてたので……」
どうやらカゼキ商会もどういう意図があるのかは聞いていなかったようだ。
私は気になったことを確認してみることにした。
「ひょっとしてお店を開く時に商会の手助けとかは必要になりますか?」
一つ頭でチラついたのは、皇太后様が最後に言っていたお店の準備をするという言葉だった。
準備はあちらが全て行うと言っていた。
初めは孤児院に来る理由だと思っていたが、直接商会を朝に呼んだ理由があると思う。
「いえ、特に必要はありませんが、皇太后様からはお食事関係だと聞いてはおります」
その言葉に私は納得した。
これは皇太后様が出した試練ではないのかと。
まずは商会の意図に気づけるのか。
そして商会が納得できるほどの料理が出せるのか。
という意味がある気がした。
特に何もなければ、取引相手に今の孤児院を紹介するくらいだから問題はないだろう。
「朝からひどいことをするもんだな」
アルヴィンも同じことを思ったのだろう。
「では、色々と準備をするのでお待ちいただいてもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ」
そう言って彼は馬車に戻ろうとしていた。
「先生、私があの人の相手をしても良いかな?」
「キキが?」
「うん!」
いくら頭が良いキキでも取引相手に接待のようなことをさせても良いのだろうか。
「おねがいー!」
滅多に頼まないキキが目をキラキラして頼んでくるからね……。
「俺が一緒にいるので大丈夫ですよ」
アルヴィンがいるならきっと大丈夫だろう。
「わかりました。では、アルヴィンさんとキキはカゼキ商会への孤児院案内をよろしくお願いします」
キキ達が案内している間に、朝食の準備を済ませれば問題ないだろう。
私はこの時まで、孤児院が普通の一般的な孤児院とかけ離れていることを知らなかった。
───────────────────
【あとがき】
もうチェックされた方はいるのかな?
各サイトで電子書籍が発売されました!
( ✌︎'ω')✌︎うおおおおおお!
それの影響かアルファポリス内の書籍作品ランキングで、なんと一位を獲得しました!
おめでたああああああい・:*+.\(( °ω° ))/.:+
作者自身もたくさんのお気に入り通知が来て、そこに作品があることに気づきました笑
今後ともこの作品を楽しんでもらえると嬉しいです!
そして来週には別の出版社から新シリーズの発売。
胃が痛いですね……(T ^ T)
「おきゃくしゃーん!」
翌日、朝食の準備をしていると外が騒がしくなっていた。
子ども達は外で遊んでいるため、誰かが来たことに気づいたのだろう。
それにしてもこんな時間にお客さん?
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「ふふ、誰もハムのこと怪しんでないよ。信じているからね」
「むー!」
ハムの言葉にくすりと笑うと、頬を大きく膨らませていた。
本当はひっそりとつまみ食いをして、注意されようとしたのだろう。
私に信じていると言われてハムはそのままサラダの準備をしていた。
子ども達が前よりイタズラっ子になった気がするのは、成長の証なんだろうか。
それとも長い期間離れていたからかな?
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私は衣服を整えて玄関に向かう。
「すみません、お待たせしました」
「いえいえ、皇太后様の命でこちらに伺いました」
「皇太后様ですか?」
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「商会の方ですか?」
「はい、私達はカゼキ商会と申します」
稼ぎ商会?
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「はい。カゼキ商会です」
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「カゼキ商会様ですね」
「はい。よく間違われるので大丈夫ですよ」
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いや、近くにいた子ども達が首を傾げていたからだろう。
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どうやらカゼキ商会もどういう意図があるのかは聞いていなかったようだ。
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その言葉に私は納得した。
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まずは商会の意図に気づけるのか。
そして商会が納得できるほどの料理が出せるのか。
という意味がある気がした。
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アルヴィンも同じことを思ったのだろう。
「では、色々と準備をするのでお待ちいただいてもよろしいですか?」
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「キキが?」
「うん!」
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