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第五章 冬の嵐
163.ママ聖女、モテ期がくる?
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何度も繰り返すと料理人達もふわとろのオムライスが作れるようになった。
「この上の部分もオムレツという料理になるのでおすすめですよ」
「俺らの手にかかれば、これくらい簡単だからな」
「一番卵を無駄にしたのは料理長――」
「お前は無駄口が多い!」
見習い料理人は料理長に怒られていた。
やはりここでも見習い料理人の方が習得は早かった。
歳を重ねると新しいことを覚えるのって時間がかかってくるからね。
子ども達に次々と運んでもらい、やっと料理は完成した。
ハムとリリにもサラダを作ってもらった。
ちびっこ達の元へ向かうと、皇太后はちびっこ達に囲まれて座っていた。
「子ども達がご迷惑をおかけしてすみません」
「いえいえ、いいのよ! 私はみんなのばあばだからね」
「ばあばですか?」
「ばあばしぇんしぇいなの!」
「ばあば先生が貴族のマナーを教えてもらったの!」
まさか皇太后自ら〝ばあば〟と言わせるとは思いもしなかった。
しかも、みんなばあば先生と呼んでいる。
アルヴィンを見ると彼も困った顔をしていた。
この様子だと他の呼び方は拒否したのだろう。
「皇太后様本当に――」
「こうちゃいこうじゃない! ばあばしぇんしぇいだよ!」
私まで子どもに怒られてしまった。
さすがに私はばあば先生とは呼べない。
皇太后様の名前がわからないため、どうすれば良いのか戸惑っていると、レナードが耳元で話しかけてきた。
「ダイアベル皇太后様なので、ダイアベル先生はどうでしょうか?」
「本当に宝石みたいな名前なんですね!」
驚いてそのまま口に出てしまった。
それを聞いていた皇太后はニコリと微笑み、立ち上がってカーテシーをした。
「マミさんはあまり私のことを知らないから、一緒にいて楽しいわ」
えーっと、これは皮肉なんだろうか。
こんなことをお局に言われたら、言い返してしまいそうだが相手は皇太后だ。
それに今までの関係上、彼女の言葉に嫌味を全く感じない。
「すみません。あまり貴族のことを勉強する機会がないので……」
とりあえず謝っておくことにした。
「いえいえ、あの子らが聖女にしか教育の場を与えなかったのがいけないのよ」
確かに私はすぐに孤児院に連れていかれて仕事をしていた。
この世界を学ぶにも時間がなかった。
「それに子ども達からあなたの活躍をたくさん聞いたわ。私からもこの国の代表として、お礼を申し上げます」
深々と皇太后は頭を下げた。
ここまできたら皮肉だったかどうかも忘れてしまう。
私は急いで顔を上げてもらうように伝えた。
「しぇんしぇいはめがみしゃまなんだよ!」
「ええ、私もそう思うわ」
まさか皇太后まで私を女神と言い出した。
ん? これは皮肉なのか?
段々と頭の中が混乱してくる。
「でも女神だとオイラと結婚できないぞ?」
「ママ先生はオレと結婚するだよ?」
どうやら私にはたくさんの夫ができそうだ。
いや、ほのぼのしている場合じゃなかった。
ここには子ども達に対抗心を燃やしている人達がいる。
「マミ先生は俺のだ!」
「マミイモは俺のだぞ!」
あー、アルヴィンとバッカアまで乗ってきた。
ここは大人が止めるべきなんだけどな……。
「いえ、マミ先生は私と結婚するのよ!」
それに対抗するように、レナードが腰に手を回してきた。
レナードを見ると優しそうに微笑んでいた。
ああ、同じ女性なのに今日もかっこいい。
これはきっと私を助けようとしてくれたのだろう。だが、その選択肢は間違いだったようだ。
「あのー、俺も候補に入れてもらってもいいですか?」
まさか見習い料理人まで手を上げてきた。
次々と料理人達も話に入ってきた。
ここまできたらもはや新手の嫌がらせにしか考えられない。
しばらく彼氏のいなかった私にこんなことが起きるはずがないからね。
むしろ恋愛に対しては拗らせていると私も思っている。
人生三度あるモテ期は嫌がらせで消えてしまわないか少し不安だ。
「なら俺も立候補――」
「料理長は奥さんがいるからダメですね」
「男に浮気の一つや二つは――」
「ダメ! 浮気性はキキが許さない!」
「そんなやつにマミ先生はあげないよ? 誰にもあげないけどね」
「オイラも絶対渡さない」
「ママ先生のご飯はハムのものだもん!」
次々と子ども達が私を囲んでいる。
今からご飯だからちゃんと椅子に座らないといけないのに……。
それに私も浮気は許せない。
ちゃんと愛し合える人と幸せになりたい。
ただ、今は子ども達が優先だから結婚は考えられないね。
「貴族なら側室もいけるから、うちの孫は――」
「絶対嫌ですよ! 王族とか無理です!」
「ははは、そういうはっきりしているところが私も好きよ」
皇太后は相変わらず楽しそうに笑っていた。
「そんなことよりもせっかくのオムライスが冷めちゃうわよ」
いつものテーブルにはたくさんの大人達がいるため、隣の人と密着する狭い。
申し訳なく思いながらも、皇太后が楽しそうにしているから問題はない。
「じゃあ、大人達は子どもの卵を切ってくださいね」
わざと大人達の間に子ども達が座っているようにしている。
私は皇太后にナイフを渡して、マネするように切り込みを入れてもらう。
ふわふわな卵から花が咲くように綺麗に開く。
「まぁ! お花が咲いたわ」
どこか少女のような笑みをする皇太后に、オムライスを作って正解だったと改めて感じた。
───────────────────
【あとがき】
書籍版も読んでもらえたかな?
続刊については発売から一週間ほどで勝負が決まると小説界隈で言われているようで、今は胃が痛い生活をしています笑
もし、購入を考えている人は早めに手に取って頂けると嬉しいです(*´꒳`*)
web版はこれからも週一で更新していきますので、よろしくお願いします!
「この上の部分もオムレツという料理になるのでおすすめですよ」
「俺らの手にかかれば、これくらい簡単だからな」
「一番卵を無駄にしたのは料理長――」
「お前は無駄口が多い!」
見習い料理人は料理長に怒られていた。
やはりここでも見習い料理人の方が習得は早かった。
歳を重ねると新しいことを覚えるのって時間がかかってくるからね。
子ども達に次々と運んでもらい、やっと料理は完成した。
ハムとリリにもサラダを作ってもらった。
ちびっこ達の元へ向かうと、皇太后はちびっこ達に囲まれて座っていた。
「子ども達がご迷惑をおかけしてすみません」
「いえいえ、いいのよ! 私はみんなのばあばだからね」
「ばあばですか?」
「ばあばしぇんしぇいなの!」
「ばあば先生が貴族のマナーを教えてもらったの!」
まさか皇太后自ら〝ばあば〟と言わせるとは思いもしなかった。
しかも、みんなばあば先生と呼んでいる。
アルヴィンを見ると彼も困った顔をしていた。
この様子だと他の呼び方は拒否したのだろう。
「皇太后様本当に――」
「こうちゃいこうじゃない! ばあばしぇんしぇいだよ!」
私まで子どもに怒られてしまった。
さすがに私はばあば先生とは呼べない。
皇太后様の名前がわからないため、どうすれば良いのか戸惑っていると、レナードが耳元で話しかけてきた。
「ダイアベル皇太后様なので、ダイアベル先生はどうでしょうか?」
「本当に宝石みたいな名前なんですね!」
驚いてそのまま口に出てしまった。
それを聞いていた皇太后はニコリと微笑み、立ち上がってカーテシーをした。
「マミさんはあまり私のことを知らないから、一緒にいて楽しいわ」
えーっと、これは皮肉なんだろうか。
こんなことをお局に言われたら、言い返してしまいそうだが相手は皇太后だ。
それに今までの関係上、彼女の言葉に嫌味を全く感じない。
「すみません。あまり貴族のことを勉強する機会がないので……」
とりあえず謝っておくことにした。
「いえいえ、あの子らが聖女にしか教育の場を与えなかったのがいけないのよ」
確かに私はすぐに孤児院に連れていかれて仕事をしていた。
この世界を学ぶにも時間がなかった。
「それに子ども達からあなたの活躍をたくさん聞いたわ。私からもこの国の代表として、お礼を申し上げます」
深々と皇太后は頭を下げた。
ここまできたら皮肉だったかどうかも忘れてしまう。
私は急いで顔を上げてもらうように伝えた。
「しぇんしぇいはめがみしゃまなんだよ!」
「ええ、私もそう思うわ」
まさか皇太后まで私を女神と言い出した。
ん? これは皮肉なのか?
段々と頭の中が混乱してくる。
「でも女神だとオイラと結婚できないぞ?」
「ママ先生はオレと結婚するだよ?」
どうやら私にはたくさんの夫ができそうだ。
いや、ほのぼのしている場合じゃなかった。
ここには子ども達に対抗心を燃やしている人達がいる。
「マミ先生は俺のだ!」
「マミイモは俺のだぞ!」
あー、アルヴィンとバッカアまで乗ってきた。
ここは大人が止めるべきなんだけどな……。
「いえ、マミ先生は私と結婚するのよ!」
それに対抗するように、レナードが腰に手を回してきた。
レナードを見ると優しそうに微笑んでいた。
ああ、同じ女性なのに今日もかっこいい。
これはきっと私を助けようとしてくれたのだろう。だが、その選択肢は間違いだったようだ。
「あのー、俺も候補に入れてもらってもいいですか?」
まさか見習い料理人まで手を上げてきた。
次々と料理人達も話に入ってきた。
ここまできたらもはや新手の嫌がらせにしか考えられない。
しばらく彼氏のいなかった私にこんなことが起きるはずがないからね。
むしろ恋愛に対しては拗らせていると私も思っている。
人生三度あるモテ期は嫌がらせで消えてしまわないか少し不安だ。
「なら俺も立候補――」
「料理長は奥さんがいるからダメですね」
「男に浮気の一つや二つは――」
「ダメ! 浮気性はキキが許さない!」
「そんなやつにマミ先生はあげないよ? 誰にもあげないけどね」
「オイラも絶対渡さない」
「ママ先生のご飯はハムのものだもん!」
次々と子ども達が私を囲んでいる。
今からご飯だからちゃんと椅子に座らないといけないのに……。
それに私も浮気は許せない。
ちゃんと愛し合える人と幸せになりたい。
ただ、今は子ども達が優先だから結婚は考えられないね。
「貴族なら側室もいけるから、うちの孫は――」
「絶対嫌ですよ! 王族とか無理です!」
「ははは、そういうはっきりしているところが私も好きよ」
皇太后は相変わらず楽しそうに笑っていた。
「そんなことよりもせっかくのオムライスが冷めちゃうわよ」
いつものテーブルにはたくさんの大人達がいるため、隣の人と密着する狭い。
申し訳なく思いながらも、皇太后が楽しそうにしているから問題はない。
「じゃあ、大人達は子どもの卵を切ってくださいね」
わざと大人達の間に子ども達が座っているようにしている。
私は皇太后にナイフを渡して、マネするように切り込みを入れてもらう。
ふわふわな卵から花が咲くように綺麗に開く。
「まぁ! お花が咲いたわ」
どこか少女のような笑みをする皇太后に、オムライスを作って正解だったと改めて感じた。
───────────────────
【あとがき】
書籍版も読んでもらえたかな?
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