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第五章 冬の嵐
160.偽聖女、餌付けの才能
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「やっぱり似合いますね」
「そうですか? ありがとうございます」
私はそのまま試着した服で孤児院に帰ることになった。
宣伝のためにと服屋の女性からたくさんプレゼントをもらった。
それにこの間、風邪が流行した時に子どもの治療をしていたらしい。
子どもの服ももらえて、私もついつい嬉しくてニコニコしてしまう。
「あら、マミさん変わった格好をしているわね!」
帰り道に声をかけてきたのは野菜屋の女性だ。
やはりズボンを履いていたら、変わった格好だと思われるようだ。
「こっちの方が動きやすいんですけどね」
「あら、そうなの? 私も着てみようかしらね。マミさんとなら怖くないわ」
「中々初めてやることは挑戦しづらいですからね」
私も知らない格好をするのは怖いからね。
さすがにギャルの格好は誰かと一緒でもできないだろう。
制服コスプレなら……いや、年齢的に厳しいか。
「それもあるけど、男性って女性のような格好を好むじゃない?」
「そうなの?」
私はレナードを見ると頷いていた。
レナードがいつもズボンを履いているのは騎士だからだ。
プライベートでは、私のようにワンピースを着ていた気がする。
「マミさんを見ると男性に媚びないというのか、自分のために生きている感じがして憧れるの」
「それは私もそう思います。女性だからって引け目を感じないというのか、騎士の私より凛々しいです」
「さすがにそれはないですよ! レナードさんの方が綺麗でカッコよくて好きですよ」
きっと服屋の女性がズボンをプレゼントしてくれたのは、こういう意図があったのだろう。
今のこの世界の女性は弱い立場にある。
それを変えるきっかけにして欲しいのだろう。
私は野菜を買って、受け取ると孤児院に向かって歩き出した。
「本当にマミさんって無自覚なのかしら……」
「さすがに私もドキッとしました」
「レナードさんも頑張ってね! そういえば、さっき豪華な馬車が孤児院の方に向かって行ったわよ」
「情報助かります!」
レナードは何か話していたのだろう。
振り返ると勢いよく走ってきた。
「マミ先生失礼します」
「うえっ!? ええええええ!」
気づいた時には私はレナードに抱えられていた。
突然の出来事に驚いているし、レナードは大量の服も持っているのに、軽々しく私を抱えている。
いくら女性だとわかっていても、あまりの力持ちにドキッとしてしまう。
「孤児院に貴族だと思われる馬車が向かったらしいです」
レナードの言葉に違う意味でドキドキした。
変な胸騒ぎに変わっていく。
幸い孤児院にアルヴィンとバッカアがいるから問題ないだろう。
いや、今朝のこともあるからどこか不安に感じてきた。
私の足の速さでは遅いため、そのままレナードに運んでもらうことにした。
孤児院に着くと数台の馬車が止まっていた。
そのうちの一つが綺麗な装飾がしてあり、明らかに貴族だとわかる見た目をしている。
「なぜ王族が……」
レナードの言葉に私はさらに鼓動が早くなる。
王族って王様達が来た可能性があるってことだ。
私はレナードに下ろしてもらい、すぐに駆け寄る。
「みんな大丈夫!?」
孤児院の庭ではアルヴィンやバッカアを含めて、子ども達が敬礼をしていた。
明らかにいつもの違う雰囲気に私も一緒に敬礼をしようとするが、すぐに止められた。
「マミさん数日ぶりね」
「皇太后様!?」
そこにいたのは風邪の治療をしていた皇太后様だった。
いつか孤児院に遊びに行きたいとは聞いていたが、まさかこんなに早く来るとは思っていなかった。
「やっぱりマミさんのご飯が恋しくなってね」
ご飯が恋しい?
あれ?
私って皇太后様まで餌付けをしていたのか?
後ろの馬車からは、ゾロゾロと皇太后の屋敷に勤めている料理人が出てきた。
「よかったら私の屋敷に勤める料理人達にもレシピを教えてもらえないかしら?」
あまりにも唐突なことに頭が働かない。
それに料理人が一般の人に教えてもらうなんて嫌だろう。
それに女性の私に教えてもらうって、この世界の男性なら嫌なはず……。
それなのにどこかあっさりとした顔をしている。
あれれ?
私ってあなた達の胃袋も掴んでしまったのだろうか。
「少し情報を整理させていただく時間をもらってもよろしいですか?」
「わかったわ! その間に私はあなたが言っていたもふもふセラピーをしているわ」
「えっ?」
もふもふセラピーとは獣人のちびっこ達と遊ぶことだ。
ちびっこたちも絶対皇太后に驚いて……いなかった。
「おねえしゃんが遊んでくれるの?」
「ピカピカしてほうしぇきみたいだね!」
ちびっこ達の言葉に皇太后は震えていた。
あっ、これは大丈夫なやつかもしれない。
表情がとろんとろんに溶けきっている。
「宝石は見たことあるのかしら?」
「んーん、でもしぇんしぇいがきれいな人は、ほうしぇきみたいだって!」
宝石のように輝ける人になるのよって言っていたやつのことね。
子ども達の中では、宝石はキラキラしている人ってなっているのだろう。
「マミさん、あなたはしばらく悩んでいていいのよ! 私はちょっと子ども達と遊んでくるわね!」
そう言って皇太后はちびっこ達に囲まれていた。
あの人って、本当に皇太后なのかしら……?
───────────────────
【あとがき】
今頃書籍が出荷されているころかな?
早くて明日、明後日ぐらいから書店に並ぶかと思います。
ぜひ、書籍もよろしくお願いいたします!
あっ、きっと明日ぐらいからレンタルに切り替わりますので、無印を読むのは今のうちです!
思ったよりも作品の雰囲気が変わってますからね笑
「そうですか? ありがとうございます」
私はそのまま試着した服で孤児院に帰ることになった。
宣伝のためにと服屋の女性からたくさんプレゼントをもらった。
それにこの間、風邪が流行した時に子どもの治療をしていたらしい。
子どもの服ももらえて、私もついつい嬉しくてニコニコしてしまう。
「あら、マミさん変わった格好をしているわね!」
帰り道に声をかけてきたのは野菜屋の女性だ。
やはりズボンを履いていたら、変わった格好だと思われるようだ。
「こっちの方が動きやすいんですけどね」
「あら、そうなの? 私も着てみようかしらね。マミさんとなら怖くないわ」
「中々初めてやることは挑戦しづらいですからね」
私も知らない格好をするのは怖いからね。
さすがにギャルの格好は誰かと一緒でもできないだろう。
制服コスプレなら……いや、年齢的に厳しいか。
「それもあるけど、男性って女性のような格好を好むじゃない?」
「そうなの?」
私はレナードを見ると頷いていた。
レナードがいつもズボンを履いているのは騎士だからだ。
プライベートでは、私のようにワンピースを着ていた気がする。
「マミさんを見ると男性に媚びないというのか、自分のために生きている感じがして憧れるの」
「それは私もそう思います。女性だからって引け目を感じないというのか、騎士の私より凛々しいです」
「さすがにそれはないですよ! レナードさんの方が綺麗でカッコよくて好きですよ」
きっと服屋の女性がズボンをプレゼントしてくれたのは、こういう意図があったのだろう。
今のこの世界の女性は弱い立場にある。
それを変えるきっかけにして欲しいのだろう。
私は野菜を買って、受け取ると孤児院に向かって歩き出した。
「本当にマミさんって無自覚なのかしら……」
「さすがに私もドキッとしました」
「レナードさんも頑張ってね! そういえば、さっき豪華な馬車が孤児院の方に向かって行ったわよ」
「情報助かります!」
レナードは何か話していたのだろう。
振り返ると勢いよく走ってきた。
「マミ先生失礼します」
「うえっ!? ええええええ!」
気づいた時には私はレナードに抱えられていた。
突然の出来事に驚いているし、レナードは大量の服も持っているのに、軽々しく私を抱えている。
いくら女性だとわかっていても、あまりの力持ちにドキッとしてしまう。
「孤児院に貴族だと思われる馬車が向かったらしいです」
レナードの言葉に違う意味でドキドキした。
変な胸騒ぎに変わっていく。
幸い孤児院にアルヴィンとバッカアがいるから問題ないだろう。
いや、今朝のこともあるからどこか不安に感じてきた。
私の足の速さでは遅いため、そのままレナードに運んでもらうことにした。
孤児院に着くと数台の馬車が止まっていた。
そのうちの一つが綺麗な装飾がしてあり、明らかに貴族だとわかる見た目をしている。
「なぜ王族が……」
レナードの言葉に私はさらに鼓動が早くなる。
王族って王様達が来た可能性があるってことだ。
私はレナードに下ろしてもらい、すぐに駆け寄る。
「みんな大丈夫!?」
孤児院の庭ではアルヴィンやバッカアを含めて、子ども達が敬礼をしていた。
明らかにいつもの違う雰囲気に私も一緒に敬礼をしようとするが、すぐに止められた。
「マミさん数日ぶりね」
「皇太后様!?」
そこにいたのは風邪の治療をしていた皇太后様だった。
いつか孤児院に遊びに行きたいとは聞いていたが、まさかこんなに早く来るとは思っていなかった。
「やっぱりマミさんのご飯が恋しくなってね」
ご飯が恋しい?
あれ?
私って皇太后様まで餌付けをしていたのか?
後ろの馬車からは、ゾロゾロと皇太后の屋敷に勤めている料理人が出てきた。
「よかったら私の屋敷に勤める料理人達にもレシピを教えてもらえないかしら?」
あまりにも唐突なことに頭が働かない。
それに料理人が一般の人に教えてもらうなんて嫌だろう。
それに女性の私に教えてもらうって、この世界の男性なら嫌なはず……。
それなのにどこかあっさりとした顔をしている。
あれれ?
私ってあなた達の胃袋も掴んでしまったのだろうか。
「少し情報を整理させていただく時間をもらってもよろしいですか?」
「わかったわ! その間に私はあなたが言っていたもふもふセラピーをしているわ」
「えっ?」
もふもふセラピーとは獣人のちびっこ達と遊ぶことだ。
ちびっこたちも絶対皇太后に驚いて……いなかった。
「おねえしゃんが遊んでくれるの?」
「ピカピカしてほうしぇきみたいだね!」
ちびっこ達の言葉に皇太后は震えていた。
あっ、これは大丈夫なやつかもしれない。
表情がとろんとろんに溶けきっている。
「宝石は見たことあるのかしら?」
「んーん、でもしぇんしぇいがきれいな人は、ほうしぇきみたいだって!」
宝石のように輝ける人になるのよって言っていたやつのことね。
子ども達の中では、宝石はキラキラしている人ってなっているのだろう。
「マミさん、あなたはしばらく悩んでいていいのよ! 私はちょっと子ども達と遊んでくるわね!」
そう言って皇太后はちびっこ達に囲まれていた。
あの人って、本当に皇太后なのかしら……?
───────────────────
【あとがき】
今頃書籍が出荷されているころかな?
早くて明日、明後日ぐらいから書店に並ぶかと思います。
ぜひ、書籍もよろしくお願いいたします!
あっ、きっと明日ぐらいからレンタルに切り替わりますので、無印を読むのは今のうちです!
思ったよりも作品の雰囲気が変わってますからね笑
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