偽聖女はもふもふちびっこ獣人を守るママ聖女となる

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第五章 冬の嵐

155.偽聖女、定番朝食を作る

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「しぇんぇーい! なにちゅくるの?」

 ちびっこ達のもふもふを堪能すると、急いでご飯を炊いた。

 その間もちびっこ達は台所付近でソワソワしている。

 本当は昼食にご飯を食べるつもりだった。

 だが、せっかく手伝ってくれるなら別のものを作ることにした。

 朝食もまだ食べていないしね。

「レナードさ――」

「はい!」

 呼んだ瞬間にレナードが現れた。

 久しぶりに帰ってきた影響は子ども達だけではなかった。

「マミ先生、俺はいらないんですか?」

「あー、どちらかに手伝って――」

「俺がやる」
「私がやります」

「ひき肉を作ってもらいたいんですけど……」

 過去にひき肉を作ってもらったレナードを呼んだはずだが、アルヴィンまでくっついてくる。

 二人とも普段より距離が近く、若干作業の邪魔に感じてしまう。

「ふふふ、ここは私の出番のようだね?」

「ひき肉って木っ端微塵のやつだろ?」

「さすがに木っ端微塵では……」

 貴族出身の二人は料理ができる人達ではない。

 きっとアルヴィンに任せたら、本当に色んな意味で木っ端微塵になりそうな気がする。

「おーい、マミイモォー!」

 そんなことを話していたら、玄関から声が聞こえてきた。

 きっとあの呼び方する人物は――。

「バカだな」

「ええ、バカですね」

 バッカアが遊びにきたようだ。

 私が孤児院に戻ってきたことを聞いたのだろう。

 そういえば、バッカアも王族の血縁関係があるなら、皇太后とは親戚にあたるかもしれない。

 そう思うと今までただ・・のバカだと思っていたのが申し訳なく……感じないのもある意味すごいね。

「ここは俺が行ってきます」

 ひき肉争いはレナードに軍配が上がったのだろう。

 玄関に向かうアルヴィンの顔が少し悔しそうな表情をしていた。

 本当に孤児院のお兄ちゃんって感じだ。

 ひょっとしたらクロの方が大人っぽいからね。

 レナードがひき肉を作っている間に私は牛乳を温める。

「ハムとリリは牛乳が温まったら、レモンを入れて急いで混ぜてね」

「何を作るの?」

「カッテージチーズだよ」

「かってなちーじゅ?」

「それだと手のかかる子になっちゃうね?」

「ハムはいい子だもん!」
「リリもだもん!」

 どうやら二人は手のかかる子だと、思われたくないのだろう。

「二人にはいつも助けてもらっているよ」

 そう伝えるとニコニコと笑っていた。

「よし、二人ともお願いね! 火傷しないようにね!」

「はーい!」

 ハムとリリにはカッテージチーズを作ってもらうことにした。

 さっきから何を作っているかって?

 日本人ならみんなが好きで定番のおにぎりを作ろうとしている。

 ただ、ツナやおかか、梅干しなどがあるわけではない。

 その代わりに洋風のおにぎりを作ることにしたのだ。

 おにぎりにカッテージチーズやオリーブオイルとかって、思ったよりも相性が良いからね。

 ハムとリリが急いで混ぜている間に、私は薄焼き卵を焼いていく。

 おにぎりの海苔の代わりだ。

「マミ先生、ひき肉できました!」

 レナードもひき肉ができたようだ。

「では、炒めてもらっても良いですか? 色が変わったら味付けしますね」

「レナ姉いいなー」
「いいにゃー」

 ハムとリリには火を使わないように言っているため、炒め作業ができるレナードが羨ましく感じるのだろう。

 二人にもいつか教えないといけないな。

「色が変わりましたよ」

 そんなことを思っている間に、ひき肉に火が通ったようだ。

 簡単に醤油と砂糖で味を整えてそぼろは完成。

「しぇんしぇーい!」

「ボロボロできたよ!」

 カッテージチーズもしっかり分離できたようだ。

「じゃあ、布でぎゅ……絞ってね」

 今度は間違えないように言葉を選んだ。

 今ここでハグなんかしたら、後ろにいるちびっこ達が反応してしまう。

 それに違う人が反応していた。

「マミイモ! 俺も食べるぞ!」

「いや、お前には食べさせん!」

 玄関で言い合いをしていると思ったら、朝食を食べていくかどうかを争っていたようだ。

「よかったら食べて行ってくださいね」

「なっ!?」

 アルヴィンは驚いた顔をしていた。

 ここで帰らせたらその後大変だし、ずっと見られていても困るのはこっちだ。

「ほらほら、マミイモは俺のことが好き――」

「それはないです」

 そこはしっかりと拒否しないとね。

 なぜかアルヴィンも嬉しそうな顔をしていた。

 アルヴィンは本当に様々な表情を見せるようになった。

「マミ先生は俺のことが――」

「はい、みんなおにぎりを作りますよー!」

 ここで変なことを言われても、私のほうが困ってしまう。

 そそくさと具材を持ってテーブルに向かった。

「あなた達、残念ね!」

「くそ!」

「まぁ、俺の方がバッカアよりは好かれているな」

「一番好かれているのは私だけどね?」

「はぁん?」
「なんだって?」

 大人達はまだ台所で言い合いをしているようだ。

───────────────────
【あとがき】

皆さん書影は見てくれましたか?
アルヴィンが想像以上にイケメンなんです!
しかも、書籍の方ではさらにパワーアップしているんですよね笑

来週には発売予定で胃がキリキリします泣
たくさん売れて続刊できることを願うばかりです。

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