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第五章 冬の嵐
153.偽聖女、自分の顔が怖い
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「んー、起きれない……」
私は布団の中で身動きが取れず、その場で動けないでいた。
「むにゃむにゃ……」
「しぇんしぇい……」
「オコメ……」
それもそのはず、子ども達が私の横や頭元、足元にまでベッタリとくっついて寝ている。
帰ってきて一緒に寝たいと言われたけど、久しぶりの〝ちびっこ丼〟状態で困惑している。
「シルいる?」
私はシルに声をかけると、天井から顔を覗かせた。
「くくく、私も一緒に寝ようかな?」
その姿にシルも笑っている。
冗談でベットの上で寝ようとするが、今はそれどころではない。
「ちょっと子ども達を動かすの手伝ってくれるかしら?」
「それならマミを動かした方が早いよ?」
シルが何かを唱えると、私の体がふわりと浮いた。
どこか夢心地な気分だが、冷静に考えたら怖い。
重力を感じずに体がふわふわしているのだ。
宇宙に行かなくても、シルがいたらそれが体験できてしまう。
「ママ先生だめ!」
「いかないで!」
私がそのままベッドの横に移動しようとしたら、手足をクロとキキが掴んだ。
ひょっとしたら、私がいなくなる夢でも見ているのだろうか。
本当に私は子ども達に好かれているな。
ただ、クロ達が掴んだ影響で魔法がそのまま移ってしまう。
「ん……はぁ!? なんだこれ!」
クロは体の違和感を感じて起きたのだろう。
起きた時に急に浮いていたら、びっくりするのは仕方ない。ただ、クロの尻尾や服を掴んでいる子達も一緒に浮いてしまう。
次々と浮いていくちびっこ達。
「ひゃひゃ!」
「しゅげぇー!」
「たのちいよ!」
結局シルも危ないと思ったのか、浮いた子ども達全員に魔法をかけていた。
これこそが本当に魔法と言える。
子ども達も楽しそうに空中をスイスイと泳いでいる。
「ねぇ、ママ先生……」
そんな中、心配そうな顔をしたハムが近づいてきた。
一生懸命空中を泳いでいるが、中々近くに来れないようだ。
「どうしたの?」
「これだとご飯が食べられないよ?」
「はぁ!?」
ハムの言葉にちびっこ達は振り返る。
確かに浮いていたら、体が不安定で食事は食べにくいだろう。
ただ、ご飯を食べる時まで浮いていることはないからね。
「あっ、この魔法をかけたら一日は浮いているんだった!」
「えっ……!?」
シルの一言で私も困惑してしまう。
まさか今日一日中この状態でいることになるのだろうか。
「うっ……うぇーん、ごばあんだべだいよおおおお」
ついにハムは泣いてしまった。
ハムにとったらご飯は命の次に大事だからね。
ただ、ハムが泣いたことで、ちびっこ達も不安になりそこら中で泣き出してしまった。
まるで育児場で母親が中々迎えに来ない時の状態に近いだろう。
「おい、大丈夫か?」
あまりの鳴き声に心配して、寝起きのアルヴィンが部屋にやってきた。
髪の毛がぴょこぴょこと寝癖になっている。
きっと今起きたばかりなんだろう。
ただ、そんなアルヴィンもこの光景を見て固まっている。
「それは何という魔法なんだ? 俺も飛びたい!」
アルヴィンも浮いていることに興味津々のようだ。
浮いているちびっこを掴むと、アルヴィンも一緒に浮かんでいる。
経験のないことに、アルヴィンは子ども達よりもキラキラした目で楽しんでいた。
ああ、アルヴィンも結構子どもっぽいことを忘れていた。
「シルどうにかなら……」
「くくく、みんな面白いわね」
シルを見ると楽しそうに笑っていた。
あの顔はイタズラをしている時のシルだ。
きっと魔法を解除できるのに、嘘をついて遊んでいたのだろう。
シルって幽霊みたいだからか、思ったよりもイタズラっ子な性格をしている。
「シル、今すぐに下ろしなさい」
「えー、みんな楽し――」
「今すぐに下ろしなさい」
そんなシルに怒ったような顔で私は近づく。
あまりにも私の顔が怖かったのだろう。
すぐに怯えて、子ども達をベッドの上に下ろした。
「昨日も危ないイタズラはダメだって言ったよね?」
「うっ……」
昨日は物に隠れてずっと私を脅かしていたからね。
びっくりしすぎて、本当に心臓が飛び出るかと思ったくらいだ。
今まで一人で元の家を守っていたし、私の代わりに孤児院を守っていた。
シルもどこか寂しい思いをしていたのだろう。
ただ、やり過ぎは良くないからね。
「イタズラをするなら、みんなが元気になるイタズラをしなさいよ」
私の言葉にシルも少しずつ笑顔になっていく。
「うん!」
なんやかんやでシルも子どもだったんだな。
それにしても、幽霊が怯えるほどの顔ができる私ってどれだけ怖いのだろうか。
怖くてしばらく自分の顔を確認できないような気がした。
───────────────────
【あとがき】
新作を書いたのでよかったらよろしくお願いします!
今男性向けホットランキングにいます。
★タイトル
超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました。
珍しくちゃんとしたファンタジーかも?
ちゃんとしたがイマイチわかりませんが笑
あとはラノベ小説家のデビューが決まりました。
別の小説になるので宣伝はできませんが報告です。
詳しい話は近況報告や他の小説投稿サイトで確認をお願いします。
私は布団の中で身動きが取れず、その場で動けないでいた。
「むにゃむにゃ……」
「しぇんしぇい……」
「オコメ……」
それもそのはず、子ども達が私の横や頭元、足元にまでベッタリとくっついて寝ている。
帰ってきて一緒に寝たいと言われたけど、久しぶりの〝ちびっこ丼〟状態で困惑している。
「シルいる?」
私はシルに声をかけると、天井から顔を覗かせた。
「くくく、私も一緒に寝ようかな?」
その姿にシルも笑っている。
冗談でベットの上で寝ようとするが、今はそれどころではない。
「ちょっと子ども達を動かすの手伝ってくれるかしら?」
「それならマミを動かした方が早いよ?」
シルが何かを唱えると、私の体がふわりと浮いた。
どこか夢心地な気分だが、冷静に考えたら怖い。
重力を感じずに体がふわふわしているのだ。
宇宙に行かなくても、シルがいたらそれが体験できてしまう。
「ママ先生だめ!」
「いかないで!」
私がそのままベッドの横に移動しようとしたら、手足をクロとキキが掴んだ。
ひょっとしたら、私がいなくなる夢でも見ているのだろうか。
本当に私は子ども達に好かれているな。
ただ、クロ達が掴んだ影響で魔法がそのまま移ってしまう。
「ん……はぁ!? なんだこれ!」
クロは体の違和感を感じて起きたのだろう。
起きた時に急に浮いていたら、びっくりするのは仕方ない。ただ、クロの尻尾や服を掴んでいる子達も一緒に浮いてしまう。
次々と浮いていくちびっこ達。
「ひゃひゃ!」
「しゅげぇー!」
「たのちいよ!」
結局シルも危ないと思ったのか、浮いた子ども達全員に魔法をかけていた。
これこそが本当に魔法と言える。
子ども達も楽しそうに空中をスイスイと泳いでいる。
「ねぇ、ママ先生……」
そんな中、心配そうな顔をしたハムが近づいてきた。
一生懸命空中を泳いでいるが、中々近くに来れないようだ。
「どうしたの?」
「これだとご飯が食べられないよ?」
「はぁ!?」
ハムの言葉にちびっこ達は振り返る。
確かに浮いていたら、体が不安定で食事は食べにくいだろう。
ただ、ご飯を食べる時まで浮いていることはないからね。
「あっ、この魔法をかけたら一日は浮いているんだった!」
「えっ……!?」
シルの一言で私も困惑してしまう。
まさか今日一日中この状態でいることになるのだろうか。
「うっ……うぇーん、ごばあんだべだいよおおおお」
ついにハムは泣いてしまった。
ハムにとったらご飯は命の次に大事だからね。
ただ、ハムが泣いたことで、ちびっこ達も不安になりそこら中で泣き出してしまった。
まるで育児場で母親が中々迎えに来ない時の状態に近いだろう。
「おい、大丈夫か?」
あまりの鳴き声に心配して、寝起きのアルヴィンが部屋にやってきた。
髪の毛がぴょこぴょこと寝癖になっている。
きっと今起きたばかりなんだろう。
ただ、そんなアルヴィンもこの光景を見て固まっている。
「それは何という魔法なんだ? 俺も飛びたい!」
アルヴィンも浮いていることに興味津々のようだ。
浮いているちびっこを掴むと、アルヴィンも一緒に浮かんでいる。
経験のないことに、アルヴィンは子ども達よりもキラキラした目で楽しんでいた。
ああ、アルヴィンも結構子どもっぽいことを忘れていた。
「シルどうにかなら……」
「くくく、みんな面白いわね」
シルを見ると楽しそうに笑っていた。
あの顔はイタズラをしている時のシルだ。
きっと魔法を解除できるのに、嘘をついて遊んでいたのだろう。
シルって幽霊みたいだからか、思ったよりもイタズラっ子な性格をしている。
「シル、今すぐに下ろしなさい」
「えー、みんな楽し――」
「今すぐに下ろしなさい」
そんなシルに怒ったような顔で私は近づく。
あまりにも私の顔が怖かったのだろう。
すぐに怯えて、子ども達をベッドの上に下ろした。
「昨日も危ないイタズラはダメだって言ったよね?」
「うっ……」
昨日は物に隠れてずっと私を脅かしていたからね。
びっくりしすぎて、本当に心臓が飛び出るかと思ったくらいだ。
今まで一人で元の家を守っていたし、私の代わりに孤児院を守っていた。
シルもどこか寂しい思いをしていたのだろう。
ただ、やり過ぎは良くないからね。
「イタズラをするなら、みんなが元気になるイタズラをしなさいよ」
私の言葉にシルも少しずつ笑顔になっていく。
「うん!」
なんやかんやでシルも子どもだったんだな。
それにしても、幽霊が怯えるほどの顔ができる私ってどれだけ怖いのだろうか。
怖くてしばらく自分の顔を確認できないような気がした。
───────────────────
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